きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

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1998年にリリースされた中島みゆきのヒット曲「糸」をモチーフに、菅田将暉小松菜奈演じる平成元年に生まれた男女の18年間を生活者からの視点から見た平成史とともに描いていく、瀬々敬久監督作品。平成元年生まれの高橋漣と園田葵。北海道で育ち、13歳の時に出会った2人は初めての恋をするが、葵は母親に連れられて北海道を去ってしまう。8年後、21歳になった漣は、友人の結婚式のため訪れた東京で葵との再会を果たす。しかし、漣は北海道でチーズ職人、葵は東京、沖縄へと自分の世界を広げ、2人は別の人生を歩み始めていた。さらに10年の時が流れた平成最後の年、2人は運命の糸によってふたたびめぐり会うこととなる。漣役の菅田、葵役の小松のほか、斎藤工榮倉奈々山本美月倍賞美津子成田凌二階堂ふみ高杉真宙らが顔をそろえる。
(映画.comより)

当初の公開予定は4月。
GWを見据えての封切りだったわけですが、こちらもやはりコロナの影響により、4ヵ月越しでの公開となりました。
8月12日には先行上映も行われたりとその辺りからも本作公開への期待を伺わせるものがありました。
ところで本作はご存知の様に中島みゆきの名曲・『糸』をモチーフにした作品なのですが、この曲元々何のタイアップがついていたか覚えてる人はどれくらいいるのでしょうか?
98年の野島伸司脚本によるドラマ『聖者の行進』です。
実際に起こった障害者虐待事件を元にしたドラマでかなり筆跡に尽くしがたい様な内容で、現在ではあたり語られる事もありません。
で、このドラマを見ていた世代としてはいまだに『糸』を聴くとこのドラマを思い出して軽くトラウマだったりもします。

しかし、曲にもちろん罪はないですし、中島みゆきさんの『糸』の本来の題材は人と人の結び付く糸が一枚の布を生み出していく言わば人と人の結び付きを歌っているわけです。

それを踏まえてのこの作品。
平成元年に生を受けた二人の男女が中学生の時、初恋として結び付くも引き離され、そして平成という時代をそれぞれが生き、再び結び付くという壮大なラブストーリーです。

なんて考えてみるとこの設置に既視感あるな、と。
『弥生、三月-君を愛した30年-』なんてまさにそうでしたね。
もっともあちらは昭和の末期を起点とした30年間を描いておりましたし、洋の東西問わずこのパターン自体はよくある設置です。
尚、『弥生、三月』に出ていた成田凌さんが本作にも出ているのは偶然なのか、はたまた?

で、この『糸』という映画の描く平成史というのが物語の中でどの様に活きてくるのかが個人的には注目していた点ですが、同時多発テロリーマンショック東日本大震災という平成史における重大事件を時系列毎に配し、彼らの物語であると同時に平成を生きた我々の物語という視点でもズシンと響いてくる。
ラブストーリーに加える社会派的な側面にかなり重きを置いている事を感じました。
もっともバブル崩壊阪神・淡路大震災、金融破綻等の平成前半期の大きなニュースはまだまだあるわけですが、更に広げると尺的にも収まりきらないんでしょうね。

それから菅田将暉小松菜奈主演とは言うものの二人が絡むシーンは全体的には少なめです。
この二人と言えば『溺れるナイフ』が良かったという印象がありますが、二人の共演というよりはそれぞれ別々の人生を歩みながらも着実に二つの糸が結ばれていくその過程を楽しむ点が見所だと言えそうです。
そしてそれぞれの物語に登場してくるキャストが豪華なんですよ。
菅田将暉サイドに登場するのは榮倉奈々成田凌二階堂ふみ松重豊、永島敏行、田中美佐子等々。
一方、小松菜奈サイドには斎藤工山本美月高杉真宙等の面々。
榮倉奈々さんに至っては12年振りの『余命一ヶ月の花嫁』の展開になりますし、斎藤工さんの青年実業家はかなり板についてます。
そしてそんな皆さんもまた、物語における蓮と葵にとっての重要な糸の役割を果たしています。
そして賠償美津子さん演じる子供食堂のおばあちゃんが重要な鍵を握っており、本作における重要なテーマを発したりもします。
そのメッセージは是非直接見て受け取って頂きたい。

それから個人的に印象深いシーンがありまして、それは「食べる女小松菜奈」です。
詳細な内容には触れませんが、葵がシンガポール日本食の食堂で食べるカツ丼。
これまでの悲しみからたまらず涙を流しながらカツ丼を食べるのですが、決しておいしくはありません。
その味を想像するとこの時の心情は如何なるものかと訴えかけてくる様な名シーンです。
女優さんが食べるシーンにおいて言えば『モテキ』の麻生久美子さんが食べる牛丼以来の心捕まれる場面でしたね。
ちなみに私、本作鑑賞後はカツ丼を食べました(笑)
僕が食べたカツ丼はおいしかったですww

さて、そろそろまとめます。
僕のこれまでの人生・決して人に誇れるものはありません。
恩師の先生・それぞれの時期につるんだ旧友・今も交流のある友人・ラジオDJをやると決めた時熱心に指導して下さったかつての師匠・割とガチで俺のダメなところを指摘してくれた前の彼女・バイト先で出会った様々な方々に今の仕事でご一緒する同業の皆様、ガキの頃からなんだかんだで仲の良い兄貴と兄貴一家・俺を生み育ててくれた両親。
そんなひとつひとつの糸が今の俺を編んでくれている事に感謝!
後は終生共に糸を紡いでくれるパートナーを探すのみですな(笑)

なんて考えましたが、そうこれは皆さん一人一人の物語でもあるのです。
是非劇場でご覧下さい!