きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

弥生、三月-君を愛した30年-

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ドラマ「家政婦のミタ」「女王の教室」など数多くのヒットドラマを手がけた脚本家・遊川和彦のオリジナル脚本による第2回監督作品。波瑠と成田凌演じる2人の男女の出会いからの30年間を3月の出来事だけで紡いでいく恋愛ドラマ。1986年3月1日、運命的な出会いを果たした弥生と太郎は、互いに惹かれ合いながらも、親友であるサクラを病気で亡くしたことから思いを伝えることができずにいた。2人は、それぞれ結婚し、家庭を持ち、別々の人生を歩んでいった。しかし、離婚や災害、配偶者の死など、厳しい現実を前に子どもの頃から抱いていた夢の数々はもろくも絶たれてしまう。人生のどん底を味わう中、30年の時を超えて、今は亡き友人サクラからのメッセージが届く。弥生役を波瑠、太郎役を成田が演じるほか、杉咲花が親友のサクラに扮した。
(映画.comより)
4月も終わりになりそうではありますが、『弥生、三月』の映画レビューでございます。
この作品、当初は見る予定はありませんでした。
遊川さんが嫌いなわけではもちろんありませんが、やはりドラマ畑の人というイメージと前作の『恋妻家宮本』が正直自分的にはハマらなかったんですよね。
それにあまりに泣きをウリにしてる映画っていうのも…なんて斜に構えていたわけですよ。
でも結果的に言うとこれが案外…と言ったら失礼ですが、今の状況の中で見るピュアな感度ラブストーリーが僕の琴線に触れちゃいまして。
食わず嫌いはよくないなと思った次第です。

まず、本作ですが、1986年から物語はスタートします。
そしてその後の三十年を波留・成田凌という二人がそれぞれの人生経験の積み重ねる中で高校時代の亡き親友・さくらの想い等もオーバーラップさせながら、二人の愛を紡いでいくというもの。
波留さんと成田凌さんがそれぞれの人物の高校生時代から現在までを演じ、その時その時に見合った雰囲気を出した演技をみせるのですが、それが何とも絶妙なんですよね。
成田凌さんに関しては最近『スマホを落としただけなのに』の作品レビューでサイケな殺人鬼の怪演を大絶賛しましたが、本作では打って変わって底抜けに明るい、でも素朴な雰囲気を醸し出す好青年と全く対極なんですよね。
波留さんに関しては高校生時代から絵に描いた様な優等生。芯が通ったしっかり者といった役柄でしたが、それが見事に波留さんに合っていたなと思います。
そして親友のサクラを杉咲花さんが演じます。
彼女の存在が本作の鍵を握るわけですが、とにかく華奢。
だけど如何にも病弱で弱々しいかと言えばそうではなく、年頃の女の子らしくおしゃれも好きだし、冗談も言う病気に対して悲観的過ぎる事もなく、程よい明るさがあるんですよね。
でも、だからこそ彼女の死に感情移入してしまうわけですが。

で、本作なんですが、ただの感動ラブストーリーに終始させないその作りが印象的です。
昭和末期から平成の30年間を切り取ったその描写が非常によく撮れていたなと感じました。
そして舞台が東北という事もあるので勿論東日本大震災の描写だってあるわけです。
『Fukushima50』との比較も出来ますが、あちらが震災発生後の現場の緊迫感を伝えるものであるならば、本作はその震災下における市井の人達の光景を写し出しています。
そこの部分なんかはかなり撮影にも力が入っていたのではないでしょうか。

全体を通して言えば確かに派手さはないけど、でも確実に静かな余韻を残してくれる。
そんな作品でした。

落ち着いてからで勿論構いません。
ご覧下さい。