きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

仮面病棟

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現役医師で作家の知念実希人によるベストセラー小説を、坂口健太郎永野芽郁の共演で映画化。ピエロの仮面をかぶる凶悪犯に占拠され、鉄格子で閉ざされた空間となった病院を舞台に、残された医師らによる決死の脱出劇が繰り広げられる。先輩医師から頼まれて一夜限りの当直をすることになった速水だったが、その夜、ピエロの仮面をつけた凶悪犯が病院に立てこもり、速水らは病院に閉じ込められてしまう。犯人に銃で撃たれて傷を負った女子大生の瞳を治療した速水は、瞳とともに脱出を試みるが、かたくなに通報を拒む院長や、院長とともに何かを隠している様子の看護師、さらには身元不明の入院患者や隠された最新鋭の手術室など、次々と不可解な事態に直面する。映画単独初主演となる坂口が速水に扮し、ヒロインとなる瞳を永野が演じる。監督は「任侠学園」「屍人荘の殺人」の木村ひさし。
(映画.comより)

このところ、サイケな作品が続いてますが、今回もやはりと言いますか病院を舞台にしたサスペンス『仮面病棟』です。
病院とサスペンスの相性は抜群に良いわけですが、本作はどの様なトリックが仕掛けられ、楽しませてくれるのか期待しながらの鑑賞。
メガホンを取ったのはこのブログでも取り扱った『任侠学園』や『屍人荘の殺人』でお馴染みの木村ひさし監督。
元々『TRICK』等テレビ畑の人でコアな映画ファンからは厳しい評価が寄せられがちな監督ですが、僕は割と監督の相性は良い様でして、『任侠学園』にしろ『屍人荘の殺人』にしろ楽しませて頂きました。
病院舞台というと割とベタな設定ではありますが、謎解き要素を如何にうまく見せていくかが手腕の見せ所だと思うんですね。

ところが、いざストーリーが始まると突っ込みドコロが満載で「おいおい」なんて不安な気持ちを抱えながらの鑑賞になるんですよ。
でもこれが、後半にかけてキレイに畳み困れていく。
つまりこの一連の「おいおい」ポイントは壮大な伏線なんですね。
確かにスマートには見えないかもしれませんが、後半に全てが繋がり、スッキリさせてくれる。
サスペンスとしての盛り上がりはかなり演出してくれてます。
前回お話しした『スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼』では風呂敷を広げるだけ広げておいて畳み方がお粗末だなんて生意気にも指摘させて頂きました。
一方での『仮面病棟』は風呂敷に広げ方が綺麗には見えないが、畳み方が非常に秀逸なんですよね。
この映画、色んな方のレビューを見たりすると比較的高評価なのですが、サスペンスとしての見せ方の上手さが功を奏しているのかなと思います。
同じサスペンスの『屍人荘の殺人』と比較しても格段に上手いなという印象です。
更に言えば深夜の病院というダークさで言えばこの上ない舞台設定の活かし方も良かったです。
病院舞台のサスペンスの比較対象として記憶に新しいところで言えば昨年扱った『十二人の死にたい子供たち』を挙げますが、僕はあの作品で廃病院という舞台でありながら、廃墟特有の不気味さが描かれていないと指摘しました。
まぁ、それは廃墟好きな僕の個人的な意見ではありましたが。
で、この『仮面病棟』って廃病院ではなく、入院患者も医師も看護師もいる現役の病院なんですね。
にも関わらずミステリー作品特有の良い塩梅での不気味さ(ここ大事!)が上手く作り出されているなと感じました。
それから恐怖の対象であるピエロですね。
『IT』におけるペニー・ワイズとか昨年大ヒットした『JOKER』でもそうでしたが、ポップなイメージのピエロがシチュエーションひとつで不気味な存在へと変わるのは数々の映像作品が証明しているのですが、日本のものとなると元々ピエロとの親和性が低いのかチープになりがちなんですよね。
しかし、本作に関して言えばその点はクリアしてました。
先日扱ったガチなホラー映画『犬鳴村』よりある意味怖さの面では超えてたかもしれません。

それから単にサスペンス映画としてのエンタメ性にのみとどまらず医療問題へ一石を投じる社会的な側面がありましたね。
高嶋政伸演じる院長が核となっていく部分ですが、それまでの流れが良かったからこの社会派パートへのストーリー展開も良かったなと思います。
そして本作は何と言ってもラストへの展開がお見事でした!
よくある宣伝の常套句に「予測不能な展開」なんてのがありますが、大概犯人バレバレだったりラストがグダグダが悪い意味で予測不能だったりするものですが、この『仮面病棟』に関して言えば意外性のあるストーリー展開で引き込まれていきます。
そこは是非見て頂きたいですね。

坂口健太郎永野芽郁のバディぶりも良かったですね。
医師と患者がバディとなり、事件解決に動くサスペンスというのも新鮮でしたね。
確かに突っ込みドコロはありますよ。
医者が患者に安易に病院の資料を見せるくだりとか重症を負った永野芽郁演じる瞳が手術後すぐにピンピンと動き回るとかね。(この辺が前述の「おいおい」ポイントです・笑)
ただ、そこを「ご都合主義じゃねぇか!」と言わせない他の部分が良かったので見逃しましょう(何目線だ)
ちなみにこの二人、以前は『俺物語!』で共演してましたね。
青春恋愛映画でしたが、割と好きです。
作風が全く違うので比較するのも一興かもしれませんね。

話しを『仮面病棟』に戻しますが、木村ひさし監督との相性は今回も良かった様です。
尚、今回はこれまでの木村監督作品で見られたコメディパートもなく、ひたすらシリアスに終始している辺りも好印象でした。