きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

フォルトゥナの瞳

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他人の死が見えてしまうという不思議な力を持ってしまった青年が、最愛の女性の「死」に立ち向かう姿を描いた百田尚樹の同名小説を、神木隆之介有村架純の共演、「僕等がいた」「ぼくは明日、昨日のきみとデートする」の三木孝浩監督のメガホンで映画化。幼少期に飛行機事故で家族を失い、友人も恋人もなく仕事にのみ生きてきた木山慎一郎。しかし、慎一郎が「死を目前にした人間が透けて見える能力」=「フォルトゥナの瞳」を持っていることに気づいてしまったことから、生活が一変。なぜこのような力を持ってしまったのかを自問自答する苦悩の日々が続く。そんな日々の中で慎一郎は桐生葵という女性に出会い、互いに惹かれあった2人は幸せな日々を過ごす。慎一郎の孤独な人生に彩りを与えてくれた葵という存在。しかし、葵の身体が突然透け始めてしまう。慎一郎役を神木、葵役を有村がそれぞれ演じるほか、時任三郎斉藤由貴北村有起哉、志尊淳、DAIGO、松井愛莉らが脇を固める。
(映画.comより)

いわゆる恋愛映画というジャンルになる作品でしょうか。
しかし、同時に特殊能力系のSF要素の強い作品、一時藤原竜也がよくやってた様なタイプの作風でしょうか。
で、驚いたのが百田尚樹原作なんですね。
永遠の0』や『海賊とよばれた男』でお馴染みです。
まぁ、僕が無知なだけなんですが、百田尚樹さんて戦前~戦後を舞台にした男の一代記的な作品が多いじゃないですか。
現代を舞台にしたSF /恋愛モノというのは意外でした。
また、三木監督ですよね~。
僕等がいた』、『ぼくは明日、昨日の君とデートする』等々数々の恋愛映画で実績を作ってこられた監督です。
本作だってきっと期待を裏切る事はない。
そんな思いでこの映画を見てきました。

さて、どんな作品だったのでしょう。

フォルトゥナの瞳、これは死を目前にした人が透けて見えるという特殊能力です。
「こんな能力、間違ってもいらない」なんて僕は思ったのですが、それで終わらせては話しになりませんからね、続けます(笑)
ここで取り沙汰されるのはその特殊な能力を身につけてしまったが為に翻弄されてしまう男の姿です。
つまらない人生を送っていた一人の青年が、やがて一人の女性と出会い、恋に落ちる。
しかし、ある日彼女の手が透けて見える様になる。
つまり彼女の死が近づいている事を意味します。
彼は一体どの様な行動を示すのか?

で、この神木隆之介演じる木山慎一郎という青年なのですが、人に優しい好青年であるというのがポイントです。
携帯が壊れたのを機に携帯ショップへ行く。
そこに居たのが、有村架純演じる桐生葵。
その時、彼女の手が透けて見える事で彼女を助けだそうとします。 
この段階で二人はまだ付き合っていません。
あくまで携帯ショップの客と従業員。
葵に一目惚れしたというのもありますが、彼女を助ける為、木山は奔走します。
そして、彼が仕事上で世話になっている社長にも危機が訪れ、社長を守ろうとします。
と、こんな流れを見ていたら特殊能力を持ったが為に人の危機を救うヒーロー要素の強い映画だなと感じました。

そして、それによっての代償として自らの生命への危機が迫る事になる。
自らの身を第一に考えるか自らの命を賭して他人を救うのか。
彼自身の葛藤が非常にリアルに描かれていきます。
そして、彼が選んだ答えは…?

それが後半の展開になるのですが、なかなかの見せ場です!
しかも、その過程では変質者の様な扱いを受け、警察に追われたりもする。
それに命を救ったとしても、誰に感謝されるわけでもない。
それでも彼が出した答えには胸がすくわれます。
彼女の葵ちゃんを助けたい。
しかし、それだけではない。
寿命を全うせず、不慮の死を迎える人達を救う。
作風こそ違えど、百田尚樹原作の『永遠の0』での「自己犠牲」の崇高な精神がここでも継承されている事を感じました。

そしてさすがにここはネタバレさせるわけにはいきませんが、ラストの意外な展開と伏線回収は実に見事でした!
「こうきたかぁ!」と思わずうなっちゃいました!

ただ、惜しむらくは死を扱い、感動を呼び込むと謳った作品にしては、泣くまでのエモーショナルな感情は呼び寄せられませんでした。
作品内のテンポは良かったし、恋愛映画で鳴らしてきた三木孝浩監督ならではの効果的な演出等々見ていて飽きさせない作りにはなっていました。
しかし、本来最大の感情シーンと呼べる辺りでもかなりあっさりしてたし、そこがどうしても弱かった。
作品自体は良かったけど、そこがもったいなかったなぁ。
すいませんねぇ、過剰な演出だったら「お涙頂戴だ」「感動ポルノ」だとケチをつけ、逆にあっさりしてたら、「俺を泣かせろ!」だの。
あまのじゃくで面倒くさい客だなぁ、俺(笑)

後、木山のご意見番的存在として出てくる医者は何であんな偉そうなんだ問題とこの医者は何故足が不自由なんだ問題が解決しないまま、映画が終わってしまった事への不満はありますが、まぁそれはいいです。
他にも志尊淳演じる整備会社の同僚があっさり改心し過ぎ問題、有村架純演じる葵ちゃんが顧客データを元に木山に会いに行ってるけどそれ、やばくね?問題等々。
でも、そんな野暮な疑問を払拭させてくれる様な良作ではありました。