きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

グリンチ

f:id:shimatte60:20181224142659j:plain

「怪盗グルー」シリーズや「ミニオンズ」など、数々の人気アニメを生み出すアニメーションスタジオのイルミネーション・エンターテインメントが、2000年にジム・キャリー主演で実写映画化もされたドクター・スースの名作絵本に登場するアメリカの国民的キャラクター「グリンチ」を、新たにアニメ映画化。幼い頃はつぶらな瞳が愛らしかったが、成長してすっかりひねくれてしまったグリンチ。洞窟の中で暮らす彼は、愛犬マックスの献身的な愛にもぶっきらぼうに対応し、山麓の村人たちに意地悪ばかりして楽しんでいた。いつも不機嫌で孤独なグリンチは、村人たちが大好きな「クリスマス」を盗んでしまおうと思いつくが……。オリジナル英語版ではベネディクト・カンバーバッチ、日本語吹替え版では大泉洋グリンチの声を担当。
(映画.comより)

イルミネーション・エンターテイメントの作品が大好きなワタクシ。
『怪盗グルー』シリーズはもちろん、『ペット』更に『SING/シング』については自分の生涯でトップクラスに感動した作品でもあります。
そんな私にとってはこのイルミネーション最新作『グリンチ』もかなりの期待作でした。
さて、そんな『グリンチ』は私の目にどの様に写ったのでしょうか。

実は私もこの映画が公開されるまで知らなかったのですが、このグリンチというキャラクター、アメリカではかなり長い歴史を持ち愛されるキャラクター。
しかし、ここ日本では殆どが私の様に知らない人が多いのが事実。
この辺りにアメリカと日本ではグリンチに対する思い入れに雲泥の差があるという事がこの映画を取り巻く前提として抑えておきたいところでしょう。
実際、それが興行面でも大きく反映されている様です。

本編が始まる前に上映されるのが、イルミネーションの人気者・ご存じミニオンを主役に配す『ミニオンのミニミニ脱走』があります。
昨年の人気作『怪盗グルーのミニオン大脱走』のスピンオフの様な内容。
刑務所から脱走する時点でミニという次元の話しじゃねぇだろ?とも言いたくなりますが(笑)、相変わらずな可愛くもブラックユーモアに溢れたミニオンワールドが展開され、思わずニヤリ。
尺的にもちょうど良い短編です。

そしてミニオンズに温めてもらってから本編がスタートします。

まず、本作はこれまでのイルミネーション作の違いとして、絵本が原作になっているだけあって、まるで読み聞かせでもする様にナレーションが挿入されます。
グリンチとはどんなヤツでどんな生い立ちを歩んできたのか等々。
ストーリーも実にシンプルで展開も王道。
何かの事情によって53年間孤独に生きてきたグリンチが幸せに過ごす人達を妬み、僻み、クリスマスをむちゃくちゃにしてやろうとする。
基本的には彼がひっそりと暮らす彼の家と人々が住む村が舞台。
ひねくれもののグリンチときれいに対称を成す、ピュアな女の子シンディ・ルーが出会い、彼の心境にも変化が生まれるというのが大まかな流れです。

それにしてもこのグリンチというキャラクターを題材に選んだイルミネーションは良い仕事してるなと思います。
イルミネーションらしさに満ち溢れてるじゃないですか。
ひと昔前のディズニーの様な非の打ち所のない優等生ではなく、一般的な社会からはぐれたアウトロー
それでいて憎めないし、何なら情も入ってしまう。
その辺り、元々は泥棒だったグルーに近いですよね。
それにクリスマスを盗むという荒唐無稽な発想は月を盗もうとした怪盗グルーのそれに通じるところがあり、ニヤリとさせられます。
ただ、グルーには手下にミニオンズが居るし、三人の娘に彼を好いてくれる妻もいる。
グリンチの場合は53年間、山の上に篭りっきり。
孤独を絵に描いた様な生活を送るのですが、そんな彼の唯一の理解者が相棒である犬のマックスです。
このマックスってホントいいヤツなんですよね。
ひねくれ者のグリンチの事が好きなんだなとよくわかる。
クリスマスを盗みに行こうとソリに跨がったグリンチ
そしてそのソリをトナカイよろしく先頭で引っ張るマックス。
ところで『ペット』の犬の名前もマックスだったよなぁ。
あのマックスとは関係あるのかな?

グリンチの魅力をアニメーションで表現するという狙いはクリアしていたのではないかと思います。
毛並みや雪の質感、クリスマスに華やぐ村の人々の躍動感やきらびやかな装飾等々細かいところの描写はさすがはイルミネーション。
ハイレベルであったと思いますし、グリンチが生み出すユニークで斬新なんだけどどこか滑稽でまぬけな発明品には思わず笑いを誘われます。
全体を通してストーリーのテンポも良かったですし、クリスマスは過ぎてしまいましたが、冬休みにファミリーで見る映画の候補としては申し分ない作品だとは思います。

ただ、これまでのイルミネーション作品と比べてしまうとどうしても物足りなさがついて回るのも事実。
問題は脚本なんですね。
まず、クリスマスを憎むあまりそのクリスマスを盗もうとしたグリンチ
どうもその動機付けが弱い気がするんですよ。
孤独な境遇で育ってきたというのはわかるのですが、それが故に人々が幸せに過ごすクリスマスをむちゃくちゃにしようというのがどうしても短絡的に見えて仕方ないです。
例えば、村人達から迫害され、徹底的にいじめられ、そのトラウマがルサンチマンとなり、グリンチの行動を駆り立てたというならわかるんですけどね。
後、グリンチが改心した後についてもスッキリしないんですよね。
確かにグリンチの家の前には「出てけ!」等のイタズラをした立て札等は目にしました。
しかし、村に下りてからは誰もグリンチが歩いていても気にもとめないし、シンディの家のパーティーに行っても温かく迎え入れてくれる。
村人は何て優しいんだと思う反面、ここにひと波乱盛り込んだ方が話しとしては面白くなるのではないかとは思いました。
あくまで、子供向けの絵本がベースにあるわけですから、それを忠実にというのもわかります。
しかし、もう少し脚本に手を加えてでもひと波乱欲しかったというのが個人的な印象です。
更に言えばシンディ・ルーのシングルマザーにしろ髭のビリクルバウムにしろ、キャラクターは良いのに、心理的描写等いちいち掘り下げ不足な感が否めません。
その辺、『SING/シング』は良かったんだけどなぁ。

ちなみに僕は吹き替え版で見てきましたが、最後に吹き替え版の大泉洋さんについて触れておきましょう。
ひねくれたアウトローグリンチとイメージがばっちりはまっていて良かったです。
イルミネーションの他作品で言えば『SING/シング』のネズミ・マイクを大泉さんの声で聴きたいと思いました。あ、決して山寺さんのマイクを否定しているわけではありませんよ…。