きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

SUNNY 強い気持ち・強い愛

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2011年に製作され、日本でもヒットした韓国映画「サニー 永遠の仲間たち」を篠原涼子広瀬すずの主演、「モテキ」「バクマン。」の大根仁監督でリメイクした青春音楽映画。90年代、青春の真っ只中にあった女子高生グループ「サニー」。楽しかったあの頃から、20年以上という歳月を経て、メンバーの6人はそれぞれが問題を抱える大人の女性になっていた。「サニー」の元メンバーで専業主婦の奈美は、かつての親友・芹香と久しぶりに再会する。しかし、芹香の体はすでに末期がんに冒されていた。「死ぬ前にもう一度だけみんなに会いたい」という芹香の願いを実現するため、彼女たちの時間がふたたび動き出す。現在の奈美役を篠原、高校時代の奈美役を広瀬が演じるほか、板谷由夏小池栄子ともさかりえ渡辺直美らが顔をそろえる。90年代の音楽シーンを牽引し
た大ヒットメーカー、小室哲哉が音楽を担当。
(映画.comより)

先週の『マンマ・ミーア! ヒア・ウィー・ゴー』に続いて心震わす感動作と出会いました、
それが本作『SUNNY 強い気持ち・強い愛』です。
実はお恥ずかしながら韓国版は末見。
つまり予備知識ゼロで本作を鑑賞したわけです。

思えば来年で平成が終わります。
小室哲哉引退、安室奈美恵引退といういわば平成という時代のエポックメイキングな人達が姿を消すのです。
そんな今の時期にこの映画が公開されたのは大変意義深い事であると思います。
平成の30年という時の歩み。
バブル崩壊に始まり「失われた⚪年」という言葉はよく耳にしたものです。
しかし、平成ひとけたの90年代。
あの頃の若者とりわけ女子高生は元気でした。
コギャルと呼ばれ連日メディアに取り上げられ、ポケベル、ルーズソックス、たまごっち、アムラーチョベリグ、MK5等の流行や流行語を数多く生み出したものです。
まぁ、一方では援助交際ブルセラといった性風俗が乱れた暗黒の時代でもあるんですけどね…。

しかし、明らかに自己主張が強く個性は強かった。
世のあらゆるムーブメントは女子高生に向けたものであったし、事実時代を作ったのは確かです。

しかし、そんな彼女達も歳を取り、今やアラフォーです。
本作はアラフォーになった彼女達がかつての勢いはどこへやら。
厳しい現実の荒波と戦いながら、かつての仲間の為に心をひとつにしてゆく群像劇でした。

過去のシーンにおいてのコギャル達はとにかく逞しい!
何でこんなにパワーがあるんだと思う程輝いてる。
はっきり言ってその姿を見るだけでも元気がもらえます!
そして淡路島から東京の女子高へ転校してきた広瀬すず演じる奈美。
彼女の面白いのははじめからあか抜けていたわけではないんですね。
方言丸出しでお洒落には無頓着。
同級生が着るラルフローレンのカーディガンに憧れておばあちゃんが着てた毛玉いっぱいのカーディガンを着て学校へ行く程です。
しかし、周囲の仲間達のプロデュースによりコギャルファッションに変貌していく。
マイ・フェア・レディ』な話しでもあるんです。

そしてそんな彼女の目線を軸に友情ストーリーにライバルグループとの対立、そしてラブストーリーといった物語が展開されていきます。

そこで流れる90年代J-POPの数々に胸が熱くなります。
正直に言えば大根仁監督の前作『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』における民生楽曲の扱いはひどかったです。
ぶつ切りぶつ切りで「何となく民生の曲集めてみました」的な編集で民生へのリスペクトを感じないものでした。
しかし、本作での90年代J-POPの使い方は実に絶妙でミュージカル仕立てにした『LA. LA. LA LOVE SONG 』しかり『そばかす』の使い方しかり、『これが私の生きる道』の曲のイメージとリンクする様なシーンでの挿入しかり楽曲に対する愛を感じました。
音楽監督小室哲哉だったからというプレッシャーもあったのかもしれません。
特に印象深かったのは安室奈美恵の『Don’t wanna cry』と『SWEET 19 BLUES 』の二曲。
前者は安室ちゃんの数あるヒットの中でも比較的明るくノリの良い曲ですよね。
現にこの映画でも学校帰りに楽しそうにカラオケをするシーンで流れます。
でもそこがめちゃくちゃ切なくなるんですよ。
二度と帰ってこない青春そのものを物語っている様で感傷に浸ってしまう。
そして『SWEET 19 BLUES 』に至っては自分の青春期の実らなかった恋を思い出すし、その人の事を考えてしまう。
現在の篠原涼子と過去の広瀬すず
二人の奈美という女性がクロスオーバーする演出は涙ながらに見る事が出来ません。

と、ここまで過去シーンを中心にお話ししてきましたが、現在パートにも言及しておきましょう。
篠原涼子を中心としたサニーのメンバーですが、個人的にはともさかりえの演技が印象的でした。
転落人生を絵にかいた様な人生を送ってきた孤独な女性。
過去がキラキラしてた分、より現在の悲壮さが際立っています。
薄幸の女性がここまで板につくとはあの頃思いもしなかった。
そう、90年代はバリバリのアイドルでしたからね。

ところでサニーのメンバーがコンテストで踊る曲が当時のコギャル文化とは対極にあったオザケン小沢健二というのは違うのでは?という声がありましたが、僕はこれでよかったと思います。
サニーのメンバーはコギャルではあっても不良ではありません。
実は芯が強く誰よりも仲間思いでぶれない面々です。
そういう彼女達の琴線に触れた音楽が実はオザケンだったていうと個性が際立っているし、なかなかセンスを感じさせてくれ、好印象でもあります。

大根監督、グッジョブ!
更に細かい所の90年代ディテールにもニヤリ!
一歩街へ出れば90年代アイテムがそこかしこに溢れてるし、数少ない男子が登場するシーンでは「あ~、俺もそういえばあんな格好してたな~」なんて懐かしくなる。
90年代に青春を過ごしたそこのアナタ、オススメですよ!

ちなみにここでの90年代とは95年~98年頃。
当時の私は高校生~20歳くらいにかけての時期です。
この映画で流れるJ-POPの短冊形シングルをレンタルしてはMDに入れ、人気アーティストのアルバムが出ればフラゲで購入。
CDTV』や『HEY!HEY! HEY! 』の様な音楽番組をチェックするという習慣がありました。
ごっつええ感じ』や『電波少年』、『マジカル頭脳パワー』といったバラエティー番組に興じ、エア・マックスを買った(狩ったではない・笑 このギャグわかるのアラフォー以上か・笑)
スラムダンク』や『幽遊白書』が流行る中、ギャグ漫画派の私は『稲中卓球部』にハマってた。
暇さえあればキーホルダー型のミニテトリスで遊びゲーセンに入荷したたまごっちをゲットする為に散財してしまったり。
阪神淡路大震災地下鉄サリン事件酒鬼薔薇聖斗等々暗いニュースは多かったけど、カルチャーの面ではこれでもかと充実していた90年代。

さぁ、アラフォーの皆さん、しばしあの頃にかえってみませんか?
あ、コギャルとは無縁の非リア生活を送ってたアナタ、(って俺だよ!)
エヴァ』の綾波レイに恋してた当時10代のキミ!
そんな方が見ても大丈夫!
時間は誰にでも平等に流れます。
当時を過ごした人であればきっとあの時代の空気感は感じるでしょう。
そして「昔は良かった」なんて懐古するだけでなく、今をそしてこれからを生きていくのにそっと背中を押してくれる様な映画です。