きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

探偵はBARにいる3

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札幌ススキノを舞台に事件を解決に導くハードボイルドなバディシリーズ3作目。監督はこれまでの橋本一から吉田照幸(『あまちゃん』、『疾風ロンド』)に交代。そして脚本は過去作同様に古沢良太。ヒロイン・マリ役を北川景子が演じる他、前田敦子、志尊淳、リリー・フランキーなど充実した初参加陣に加え、田口トモロヲ松重豊安藤玉恵などのレギュラー脇役陣も存在感を発揮しています。


さて、過去二作同様劇場鑑賞してきたワタクシ。すっかりこのシリーズのファンと言っても過言ではありません。


北の繁華街、札幌・ススキノのネオン街。
ニッカウイスキーの巨大ネオンとタイトルバック、そしておなじみのテーマ曲が流れると「お~、きたきた!」といやがおうにも気分が盛り上がります!

そんな本作ですが、冒頭で広がる北の大雪原の光景に目を奪われます。
はちみつぱいという絶妙な選曲と共に雪原を走る一台のトラック。
北国の雪景色と共に一気に作品の世界へ誘ってくれます。
しかし、そんな光景の中、戦慄が走ります。
雪景色を舞台に殺人事件が起こるのです。


ところ変わってススキノのとあるキャバクラ。遂に本作の主人公・探偵と助手の河野が登場。
どうやらここでも何やら事件が。
と言ってもここでの事件は実にくだらないです。
キャバクラのお姉ちゃんのオッパイを揉んだのは誰か探偵は持ち前の推理力をもってあっさりと事件は解決します。

くだらない、実にくだらないです!
でもそこがたまりません!
なぜならそれがこの作品の世界観でもあるからです。
シリーズ初見の人でもすぐに作品へ投入する事が出来る。
実にわかりやすい構図ゆえに作品としての掴みはバツグンです!

そして本作が始まると次々に登場してくる個性豊かな面々。
印象的なキャストをピックアップしていきますとまずこの人ほどうさんくさくまずお近づきになりたくないくせ者を演じさせたら右に出る者はいないのでは?と思わせる悪役のリリー・フランキー
これまで数々の映画でのっぴきならない厄介者を演じてきましたが、今作ほどリリーさんのキャラクターに合致する役もないのではと思わせる演技力は素晴らしかったです!
ダーティー面においてはピカイチなリリーさん。
この人は良い人を演じたらメチャクチャいい人だし悪役を演じたら徹底したワルになるんですよね。
決して本業じゃないのにね(笑)

志尊淳くんのアクションも見ごたえありました!
志尊くんと言えば『帝一の國』とか現在公開中の『覆面系ノイズ』の様などちらかと言えば女子受けするアンニュイなイケメンイメージが強いのですが、元々は戦隊モノ出身ですもんね、アクションうまいわけだ!
古巣東映だけに彼のうまい使い方を心得ていたのでしょうかね。

そして何と言ってもヒロイン・マリ役を演じた北川景子さん。
本作を端的に現すなら北川景子劇場とでも言うべきかとにかくそれだけ存在感が際立ってました。
本シリーズのヒロインの特徴というと悲劇的もっと言えば破滅へ向かうヒロインという印象でして一作目の小雪さん、二作目の尾野真千子さんといずれも魅力的なのですが、最終的には復讐そして悲劇~破滅へと転じていきます。
今作の北川景子さんも同様でしてススキノの街を当てもなくさまよっていた薄幸の女性~モデル事務所の敏腕経営者そして破滅へと突き進んでいきます。
しかし、破滅という共通性はあるものの自ら死を選んだ一作目のヒロイン、破滅へ向かうも大泉洋演じる探偵によって踏みとどまった二作目のヒロインに比するとこの三作目のマリはあるところでは尤も悲劇性に富んだヒロインといえます。
その辺りはネタバレになるので控えますが、この波乱万丈に満ちた女性を演じる北川景子がとにかく美しくも繊細で儚い。
そんな北川景子さんを見るだけでも価値のある内容だと思います。

また、札幌市長も登場したり北海道日本ハムファイターズ栗山秀樹監督も登場したりと地域一体での映画つくりに共鳴します。
いいですね、ご当地映画って。


しかし、その一方やはり気になる部分というのはありまして手放しでこの映画を称賛出来ないのも確かです。

本シリーズの特徴といえばハードボイルドとか男くさいとか色々ありますが、突き詰めていけば「エロ・グロ・ナンセンス」なんです。
適度にエロくて程よいグロさがあってバカバカしい程のナンセンスさ。

ナンセンスなコメディとしての部分は悪くなかったです。
そこはコメディを得意としてきた監督を起用した良い部分が活かされたと思います。

しかし、エロさやグロさがまるっとそぎおとされてしまったんですよね。
というのもこれまではPG-12指定、つまり小学生以下のお子さんは必ず保護者同伴が義務づけられていたわけです。
ところが本作はPG-12の指定を外した…という事は幅広い層に見てもらう為にハードな描写を削らざるを得なかったという事情があります。
確かに門戸を広げたい気持ちはよくわかります。
しかし、そもそもこの作品の主要な客層は大人メインでしょ?
しかも割とディープな志向の強い人が多そうなイメージなのですが…。
徹底して「エロ・グロ・ナンセンス」にこだわってコアな層に支持される唯一無二な作風をつくり上げた方がよっぽど理にかなってると思うんですよ。

確かに見やすくはなってるけど従来からのファンには物足りないんじゃないでしょうか?


と一ファンから苦言を呈してみました。
次作は原点回帰の探偵ワールドを期待してますよ!