きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ビリギャル

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名古屋の女子高に通う高校二年生のさやか(有村架純)。
髪は金髪パーマでピアスを開けファッションと友人らとの夜遊びこそが彼女の世界。
エスカレーター式で大学までは進学出来る私立校ながらこのままでは内部進学すら出来ないという学力。
そんな彼女を案じた母親(吉田羊)はさやかに塾へ通う様勧める。
普段のギャルファッションのまま入塾面接を受けに行き、講師の坪田(伊藤淳史)と出会う。


実話を元にした感動作で2015年春~初夏にかけて大ヒット!有村架純の代表作ともなり、不動の地位を確立しました。
私は2015年5月にTOHO シネマズ二条で鑑賞し、あまりの名作だったのでしばらく余韻に浸っておりました。今や懐かしい話しです。

本作は言うまでもなく落ちこぼれの女子高生が偏差値を40以上上げて慶応大学へ合格するというサクセスストーリーです。
つまり結果は初めから分かってるのであって要はそこに至るまでのプロセスを如何にドラマチックに見せるかが重要です。
しかし、そこはバッチリで演出もストーリーの運びも実によく出来ていたと思います。
何と言っても登場人物が非常に魅力的でこの作品を大いに盛り上げていました。

まず、本作の主人公のさやか。それまで清純派のイメージが強かった有村架純によるギャルというのも
新鮮でしたし、それがまた見事にハマってました。
もしかしたら元ギャルだったのでは?なんて思わせる程の名演技。受験モード全開になると遊びも辞め、ネイルも辞め黒髪で清楚な姿に変わるのですが、見た目真面目そうなのに口調はギャルというギャップ萌えポイントもあります。
そもそもこのさやかちゃん。元々は内気で引っ込み思案、友達も居ない女の子なんですよね。
中学に入って初めて友達が出来、ギャル化していくという生い立ちの為か根っからの不良でもないんですよ。
髪を染める、ピアスを開ける、隠れてタバコを吸うくらい…母親や兄弟、友達への接し方を見るとかなり良い子だったりします。


そんなさやかを見守る予備校講師・坪田先生。チビノリダーで幼少期を過ごし電車男で青春期を送った伊藤淳史さんも30代。人を指導する役柄もピッタリハマるお年なわけですが、この先生の人物像が何とも魅力的。
生徒達と同じ目線に立ち、勉強嫌いな生徒へ生徒が好きな漫画やゲームに置き換えてわかりやすく指南するという指導方法を取り入れるのは生徒の心を掴めるでしょうし、何より勉強への理解度も高まると思います。
そして何よりも生徒を否定しない。
相手を受け入れ、その上で正論を提示する。
生徒のモチベーションを高め生徒の可能性を引き出す上で非常に効果的な指導方法だと思います。
この映画は教育に携わる人や部下を抱える管理職や経営者が見ても非常に参考になる作品だと思います。

小四レベルの学力で「聖徳太子」を「せいとくたこ」と読むヘキサゴン的な解答をしていたさやかが高校二年から勉強を始めて慶応に合格する程受験勉強は甘くありません。
事実、途中挫折しそうなシーンもあります。しかし、並々ならぬ努力を重ねさやかは慶応大学合格という大きな目標を達成します。
あれほど遊び歩いてたさやかがプロレタリア文学を語り、ニュースで問題となってるブラック企業への関心を深めていくなどの描写は彼女の成長を写す印象なシーンです。
努力というフィルターを通してさやかの成長が見られる一方、努力を続けるも実らなかったというシビアな描写も見られます。

父親(田中哲司)の若き日の夢はプロ野球選手になる事でした。
しかし、果たせなかった今、息子であるさやかの弟に託します。
父親の期待に応える様に弟は野球の練習に打ち込みます。
しかし、やがて限界が訪れます。
どれだけ練習を重ねても結果が出せない、上達しない。
やがて弟は野球を辞めます。
野球を辞めた弟はヤンキーのパシリをしたりと目に見えて堕落していくのですが、ここでは父親の心境をクローズアップします。
自分の私財のほとんどを息子の野球につぎ込み、付きっきりで指導をします。
しかし、反面ではさやかと妹の面倒を全て妻に任せっきりにし依怙贔屓を通り越した接し方で息子を指導してきました。
しかし、息子の心の声を汲み取ってやる事が出来なかったのです。
その結果、息子は野球を嫌う様になりました。
これは予備校の坪田と指導者としての比較という面で見ても印象深い描写だなと思いました。
かたや生徒の心を汲み生徒の可能性を引き出していく名講師・坪田。
一方の父親は自分の願望のみを息子に押し付け、スパルタ指導をするだけして息子の思いに耳を傾けようとしませんでした。
野球以外の面できちんと息子に向き合わなかったのです。
ましてやこの父親、自分の三人の子供に極端な格差をつけるという親としてあるまじき人物でもあります。
どちらが指導者として適格かは言うまでもないでしょう。

主人公・さやかのサクセスストーリーをメインにしてるのでそこにフォーカスされがちですが、指導者のあり方・支える家族の姿・目標を達成する為の努力等などあらゆる視点で見る事によって色々な発見が出来る良作です。こういう映画こそ全国の公民館や学校の映画鑑賞会などで見るべき作品だと思います。(実際やってるトコロ多そうですが)
エンドロールではサンボマスターの主題歌に合わせて登場人物たちが口パクしてます。
そこでの有村架純ちゃんがメチャクチャ可愛いのでそこも必見ですよ(笑)