きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

シング/SING

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舞台は擬人化された動物たちが暮らす街。経営難の劇場を再建したい支配人のコアラ、バスター・ムーンはある秘策を立てた。それは町中の歌自慢達を集めたのど自慢大会を開く事だった。
町中にくすぶっていた歌好きな動物達が集まり、本選出場と賞金を掛けたコンテストが開催される。


『怪盗グルー』シリーズやスピンオフの『ミニオンズ』、『ペット』など数々のヒット作を生み出したユニバーサル・スタジオの子会社・イルミネーションエンターテイメント。一見『ズートピア』の様な舞台設定の中に「歌」という要素を打ち出し世界中で大ヒット。日本でも50億円を超える興行収入を上げ、今年春の興行を大いに盛り上げました!

今年、日本で公開された作品の中でもダントツに好きな作品ですね。
字幕/吹替ともに鑑賞し、DVD も合わせて10回以上は見ておりますが、個人的には吹替派ですね。(字幕も良いですよ、スカヨハの歌声にしびれるしね!)
したがってここでは吹替版を元にお話しさせて頂きます。

音楽と映画の親和性は高いなんて事は今更言うまでもありません。
しかし、古今東西のポップチューンのヒット曲のみで構成される作品というのはそうそうないのでは?と思います。(日本だと2011年の『モテキ!』がありますけどね)
その選曲もテイラー・スウィフトケイティ・ペリーの様な近年のヒット曲からクイーンやビートルズエルトン・ジョンといったポップス/ロッククラシックはたまた日本からはきゃりーぱみゅぱみゅの『にんじゃりばんばん』と実にバラエティに富んでいます。
そしてそれらの楽曲を歌うキャラクターもピッタリだし、非常に効果的な場面で演出的に使われてたりもするので「ここでこの曲使うか~、う~ん、やるなぁ」なんていちいち感心されちゃいます。

キャスティングも見事でコアラのバスター・ムーンを内村光良、ブタのグンターをトレンディエンジェルの斎藤司、グンターの相方のロジータ坂本真綾ヤマアラシのアッシュを長澤まさみ、ゴリラのジョニーをスキマスイッチの大橋卓也、象のミーナはMISIA、ネズミのマイクを山寺宏一他、宮野真守大地真央などなど俳優、芸人、声優、ミュージシャンと多様な人選。
ドラマや映画出演も豊富な内村さんや斎藤さんの芸人組、長澤まさみさんや大地真央さんの女優組、そして本職声優の皆さんは言うに及ばず。注目は演技初挑戦の大橋さんやMISIAさんでしたが、もちろん歌がお上手なのは言うまでもありません。(そりゃプロですからこんな言い方が失礼です)
ただ、演技はどうなんだと言うとこれがいいんですよ!
ゴリラのジョニーの見た目と境遇は超肉食、だけど内面は繊細な草食男子という性格と大橋さんの声質がピッタリだったし、歌う時は超パワフル反面普段の性格は内気で上がり症という象のミーナのキャラクターとMISIAさんの声がバッチリハマってました!
余談ですが、以前MISIAさんのライブを見に行った事がありますが、MCの時のMISIAさんってメッチャ可愛い声なんですよね。

ストーリーとしては理想と現状のギャップに悩む主要キャラクター達が歌を通しての自己表現をして、ステップアップをしていく過程を描いています。
最近取り上げた『チア☆ダン』とか『ミックス』にも通じる持たざる者の成長ストーリー的な内容に近いのですが、本作の登場人物(と言うか動物ね)達は実は「持つ者」なんです。音楽院出身のジャズマン・マイク、彼氏(作中で元カレになる)とバンドを組むアッシュ、家事と子育てに追われる中、唯一の生き甲斐を歌に委ねるロジータ、ホントはやりたくない悪行を紛らわす為に歌を唄うジョニー、天才的な歌唱力を持ちながらも人前に立つと緊張して唄えなくなるミーナ。
皆、唄のセンスは持ちながらもそれを活かす環境がない、或いは才能を認められない面々です。
それはムーンも同じ。
劇場に懸ける想いや熱さを抱えながらも自分の理想とは程遠い現実に苦悩しています。
そんな面々が集まってはじめて自分達の理想像を手にしていくのが本作です。
自分の才能とそれを活かす環境に遭遇出来るかという適材適所の問題は人生においても切実ですよね。
自他共に満足出来る環境で自分のスキルを活かせている人なんて実社会においてもごく一部だと思います。

現実の生活に戸惑いを隠せないキャラクター達の抱える問題がひとつに結び付き生まれるステージでのライブパフォーマンス。
これまでの過程を見てきたからこそ胸が熱くなるんでしょう!
全ての音楽が好きな人、夢を追ってる人、理想と現実のギャップに悩んでる人そんな人達の後押しをしてくれる様な素晴らしい映画だと思います!