きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

三度目の殺人

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そして父になる』、『海街Diary』、『海よりもまだ深く』といったハートフルな作品を作り続けてきた是枝裕和監督。
先月公開された最新作はこれまでの監督のイメージから一新。法廷を舞台としたサスペンス作品となっておりおす。

勝つ事にこだわりを持ち続ける弁護士の重盛(福山雅治)は殺人の前科を持つ男・三隅(役所広司)の弁護を担当する事に。解雇された工場の社長を殺害し、死刑を免れないとされる三隅。しかし、犯行動機に釈然としない重盛は三隅との面会を重ねるもますます真相がつかめなくなる。


福山雅治役所広司の他、広瀬すず斉藤由貴、吉田網太郎等の豪華キャスト陣によりひとつの事件と殺人犯の真実に迫っていく。

そんなキャスト陣の演技は素晴らしいです。
特に印象的なのは三隅を演じた役所広司
さすがは大ベテランであり、日本を代表する俳優でもあるのでうまいのは当たり前なのですが、今作の三隅です。
役所さん=徳川家康というくらい『関ヶ原』が記憶に新しすぎるのですが、そんな中でこの三隅というのは殺人事件の被告。
一見めちゃくちゃ腰が低く、真面目そうな男性なんですよ。
しかし、それがよりリアリティを与えている様なイメージです。
私の持論なのですが、凶悪事件の殺人犯に典型的な悪人面は少ないと捕らえているのですが、どうでしょう?
私の持論はともかく上記イメージに当てはめた場合、実はこういう人がいわゆる凶悪犯として拘置所に収監されているのであろうと想像を掻き立てられる上では限りなくイメージに近いタイプという印象です。

また、今作で光ったキャスト陣では広瀬すずですね。
ここ近作ではすっかり天真爛漫で明るい女子高生イメージが強いのですが、元々『海街Diary 』だともっと素朴な少女の役でしたもんね。
そんな『海街』以来の是枝作品ですが、本作では足に障害のある被害者の娘役として出演しておりました。
前回『少女』での本田翼について触れましたが、タイプこそ違うものの広瀬すずの陰のある女子高生像はここ最近の広瀬すずの中でもかなり印象強い演技で新たな一面を見せたかと思います。

また、ミステリー作品としてはかなり異色で最後の最後まで真相が明らかにされません。
あくまで鑑賞した人にその結末の想像を委ねるというつくりの為、モヤモヤする事でしょう。
しかし、各自の想像力を働かせて顛末を作り上げるのもよし、また友人やカップルと鑑賞した場合はその後、食事でもしながら語り合うには良い映画でしょう。

しかし、しかしです。あくまでこの映画を楽しめた人限定という話しになって参ります。


この作品実は見る人をかなり選んでしまいます。

基本的に作中に登場する舞台となるのは弁護士事務所と法廷、重盛と三隅が接見する留置所です。
その他の場所が出ない事はないのですが、極めて少なくだいたいが上記の三ヶ所くらいです。
会話劇という事もあり、重盛と三隅の接見でのやり取りからその心理合戦でもあったりするので舞台設定としても必要最低限にという監督のこだわりかもしれません。
ただ、絵的には非常に味気ないんですよ。
登場人物のカメラアングル等の細かい部分での演出はよく出来てるとは思うのですが、基本テンポも淡々としてるので飽きやすい。

なおかつ法律用語もよく飛び交うので気軽には見れないし、内容も重いので鑑賞する人を意識した作りが欲しかったですね。
予告編でもよく目にした雪景色の中でのシーンも意味不明だったな。
三隅と被害者の娘との関係性や距離感を表すシーンとして用いられてたのですが、何故重盛もそこにいるのか理解に苦しみました。

この作品は確かに作品としての世界観とか内容面での一定の評価は出来ると思います。
しかし、映像的な描写が物足りないのと独自性を強めた事によってともすれば監督の自己満足と思われかねない部分が多くついていけなかったというのが正直な印象です。
映画は難解なもの=深みのある作品というわけではありません。
ましてや300館以上で公開される大作である以上ライト層の共感性も得る様なエンタメ要素はほしいですね。
一部の意識高い系の人が満足する雰囲気映画なら60館くらいの小規模上映で十分ですよ。

まぁ色々と言いたい事を言わせて頂きましたが…。

斉藤由貴昔好きだったのにな~。

何か今年って公開中の映画のキャストのスキャンダル多くない?

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