きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

君の膵臓をたべたい

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『君の膵臓をたべたい』
一見するとグロテスクでサイケなホラー映画を想起させる様なタイトル。
住野よる原作のベストセラー小説を映像化したこの作品が今夏最大の感動大作なのだから題名だけで判断してはやけどしちゃいます(何のこっちゃ・笑)

まず誤解されがちではありますが、本作は恋愛映画ではありません。
膵臓を患った少女・山内桜良(浜辺美波)とクラスで目立たない地味な少年・[僕](北村匠海)を中心に二人の間での友情、或いは生と死へのテーマが題材となった作品となっております。

前半では[僕]と桜良の出会いから二人の距離感に焦点を当てたストーリーでややもすると退屈になりかねません。
しかし原作にはない現在パートが設けられ高校教師となった現在の[僕](小栗旬)が生徒当時の心境や情景等を伝える事により、鑑賞する我々を物語の世界に引き込んでいく役割を果たしていきます。

周辺の登場人物の心理的機微も作中では重要な意味を持ち、[僕]と桜良の関係にも少なからずの影響を与えます。
とりわけ桜良の元カレであり、[僕]に嫉妬の念を向けるクラス長の存在は大きく激しい雨の中でのシーンは鬼気迫るものがあります。

その後も[僕]と桜良の友情以上恋愛感情未満の関係を桜良の病気も織り交ぜつつ展開させ桜良の一時退院後に桜を見に行く約束を交わしますが、そこで悲劇が起こります…。

そこからは怒涛の涙腺崩壊街道をばく進する事になっちゃいます(笑)
後は皆さんの目でご覧の上、目から大量の涙をお流し下さい。

さて、ここでキミスイのポイントをいくつか紹介します。


⚪ 主人公[僕]とヒロイン・桜良の心理描写

  クラス一の人気者で美人の桜良と根暗で誰にも心を開かない[僕]。
本来であれば同じクラス内でも接点を持つ事はそうそうないハズの二人。
しかし桜良が隠していた膵臓の病気を知った事により…。そしてそれ以前から[僕]に人として興味を抱いていた桜良。
[僕]に接近しようと[僕]と同じ図書委員になり、心を近づけようとする桜良に一向に心を開かない[僕]
しかし次第に距離を近付けていく二人の描写は本作の軸とも言えます。桜良の死後、[僕]が絞り出す様に言った「場違いなのはわかってます。…泣いてもいいですか?」二人の関係はこのセリフに集約されているかの様です。

⚪ 周辺の人物描写

[僕]と桜良を取り巻く登場人物は桜良の親友で[僕]を嫌う恭子(現在パートでは北川景子)、[僕]と桜良の同級生で[僕]にことあるごとにガムを勧めるガムくん、前述のクラス委員長です。
非常に個性豊かな登場人物ですが、いずれも作中において重要な役割を果たします。またガムくんは現在パートで意外な形で現れるし、現在の[僕]が語りかける生徒もまた過去の[僕]とリンクさせる存在として後半に活きてくるシーンが用意されています。

⚪ ヒロイン・桜良の死

本作は膵臓に病を持つ少女の話しです。しかし多くの人が抱くであろう闘病の末に迎えるであろう悲劇。しかし、本作においてはその想像は大きく覆されます。
前半に伏線は張られているものの二人の何気ない会話からそこに発展させる事になろうとは予想も出来ない展開でした。
本作においては死そのものより(そもそも死ぬシーンすら登場しない)その後の展開や桜良が残したメッセージ等が主題となっていると思います。

続いて気になったポイントを挙げておきます。

⚪ 主人公の名前は?

本作のパンフレットには主人公の少年を[僕]と表記しています。
ここでもそれに従い[僕]と表記してきました。
しかし、作中でガムくんが「シガ」と呼ぶシーンもあり、名前は判明しています。
作中は気にならないものの、パンフレットでの表記にはやはり違和感を感じてしまいました。原作がそうなのか或いは作品に含みを持たせる為なのかはわかりませんが、モヤッとしてしまいます。

⚪ 12年間、心を開けなかった[僕]と恭子

桜良は[僕]に亡くなる前、恭子と仲良くなる事をしきりに勧めます。
自分を恭子に見立てて「僕と友達になって下さい」と言わせて練習までします。(実際にそういう事されたらうっとおしいかも・笑)
[僕]と恭子が共感出来る関係になりえて、尚且自分が死んでも悲しみを乗り越えるきっかけになるかもと判断した上での願いだったかもしれません。
しかし[僕]が恭子に伝えたのは12年後。恭子の結婚式当日、桜良の生前のメッセージを見て泣き崩れる花嫁姿の恭子にようやく伝える事になります。

結果的に晴れて(?)友達になる二人だが、12年もかかってしまったのは残念な点でもありました。
桜良は遺言の様に[僕]に伝えた以上、[僕]もすぐに行動に移して欲しかったです。
そこで桜良の意に沿った形が取れていれば結婚式の出欠に苦渋の選択をする事もなかったし、大の大人が「僕と友達になって下さい。」なんて恥ずかしい言葉を言う事もなかったし、何より桜良への良い弔いでもあるのですが…。

以上、この夏泣きに泣いたキミスイの良い点、悪い点含めてお伝えしました。
ちなみに北川景子さんの花嫁姿を見た婚約者役の上地雄輔さん。
   DKG(DAIGOくん、ごめん)と思ったそうです。
その婚約者、JIJ(実は意外な人物)ですよ。
まだ見てない方はICD(急いでチェックだ!)←しつこい