きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

劇場版美少女戦士セーラームーン Eternal 前編

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1990年代に社会現象を巻き起こしたテレビアニメ「美少女戦士セーラームーン」の25年ぶりとなる劇場版で、原作コミックの第4期にあたる「デッド・ムーン編」を映画化した前後編2部作の前編。原作者・武内直子総監修のもと、「美少女戦士セーラームーン Crystal」の第3期「デス・バスターズ編」に続いて今千秋が監督を務め、「美少女戦士セーラームーン」「美少女戦士セーラームーンR」のキャラクターデザイン・作画監督を手がけた只野和子がキャラクターデザインを担当。今世紀最大の皆既日食で街がお祭りムードに包まれる中、月野うさぎちびうさは、ゴールデンクリスタルの封印を解く“乙女”を探すペガサス・エリオスから助けを求められる。時を同じくして、デッド・ムーンサーカスと名乗る謎のサーカス団が街に出現。彼らの狙いは、悪夢の化身レムレスをばらまいて“幻の銀水晶”を手に入れ、月と地球、さらには宇宙をも支配することだった。エリオスから“乙女”と呼ばれ、自らを必要としてくれる彼に淡い恋心を抱くちびうさだったが……。
(映画.comより)

25年振りに帰ってきたセーラームーンです。
何を隠そうこのワタクシ・大のセーラームーン好きでしてとりわけ中学時代なんかはアニメもよく見ていましたしグッズも集めていました。
今でもセーラームーンの湯呑みがありますよ(笑)

なので今回の劇場版は是非見たいと思い、期待を胸にMOVIX日吉津へと行って参りました!
プリキュアと違い、客層は30~40代前半くらいの女性が中心。
まさにセーラームーンを見て育ったセーラームーン世代でしょう。
そして自分も含め男性客も。
女児をターゲットにしたアニメでしたが、男子にも人気があったセーラームーンならではでしたね。
また、物販でのグッズも充実してるんですよ!
セーラームーンファンなら欲しくなる事間違いなしでは?
ちなみに自分はグッズは買いませんでしたが、パンフレットは入手致しました!

さて、久しぶりのセーラームーンです。
25年ぶりとあって気持ちが一気に90年代に引き戻されていくんですよね。
ギャグパートでの変顔であったりとか変わらない安心感もあり。
そしてセーラー戦士達との再会には胸が熱くなりましたね!
さながら同窓会気分とでも言うのかな。
俺自身も中学生時分に戻ったかの様でした。

さて、セーラームーンと言えば何と言っても戦隊ヒーローよろしく集団でのバトルシーンが見所だと思いますが、本作ではそれぞれのキャラクターの見せ場がしっかりと用意されており、マーズことレイちゃん推しの私もかなりの満足感がありました!
三石さんのうさぎちゃんも久しぶりに楽しませて頂きました!
ミサトさんでもなくハンコックでもなくのび太ママでもないうさぎちゃんですね。

ゲスト声優としてキャスティングされていたのが、渡辺直美さんと菜々緒さんです。
年齢的にまさにセーラームーン世代のお二人ですが、これがかなりハマっておりまして、よくある声優の芸能人起用のアレではなくてセーラームーンへの愛溢れる演技が伝わってきました!

そして何と言ってもラストに向かっていく展開が圧巻でして、各セーラー戦士のエピソードを広げてからの月野うさぎ/セーラームーンのハイライトへ!
そして気分が最も高揚した辺りで前編が終了!
ももクロちゃんの主題歌がまた、この高揚感を煽ってくれまして、何とも気持ち良く鑑賞致しました!

で、これで終わりじゃないんですよね。
後編の予告がそのまま流れるんですが、気分を高揚させそれをももクロちゃんの主題歌が気持ち良く煽り、更に予告編でヒートアップ!
本編・主題歌そして予告の3コンボがここまで高ぶらせてくれる作品もそうそうないぞ!
強いて言えば『ちはやふる』以来かな?
控えめに言って最高でした!

2月11日の後編への期待が止まりません!

それにしても映画ランキングの順位は淋しいなぁ…。
男女問わず昔セーラームーン見た人なら間違いなくハマる作りなんだけどな…。

ともかく後編が楽しみです!

おとなの事情 スマホをのぞいたら

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世界18カ国でリメイクされたイタリアのコメディ映画「おとなの事情」の日本版。ある出来事をきっかけに結びつき、年に1度集まっている3組の夫婦と1人の独身男性。今年も楽しい時間を過ごすはずだったが、1人の参加者の発言をきっかけに、それぞれのスマホに届く全てのメールと電話を全員に公開するゲームをすることに。後ろめたいことは何もないと言いながらも、実は全員が絶対に知られたくない秘密を抱えており、自分のスマホが鳴らないことを祈っていた。スマホに着信があるたびにパーティは修羅場と化し、事態は予測不能な方向へと転がっていく。独身男性を東山紀之、50代のセレブ夫婦を鈴木保奈美益岡徹、40代の倦怠期夫婦を常盤貴子田口浩正、30代の新婚夫婦を木南晴夏淵上泰史が演じる。「バースデイプレゼント」の光野道夫が監督を務め、「世界から猫が消えたなら」の岡田惠和が脚本を担当。
(映画.comより)

今や日常生活に欠かす事の出来ないスマホ
スマホひとつで通話・メール・LINEはもちろんインターネットに音楽更には映画も見れる便利なツールです。
しかし、そんなスマホには各自個人情報等の諸々が詰まっており、当然他人に知られたくない事だってあるわけです。
しかし、そんなスマホを見せ合う事で生まれる悲喜劇が本作最大の見所です。
それではその昔付き合ってた彼女に携帯を見られぶちギレた事で喧嘩に発展そのまま別れてしまったこのワタクシが本作についてお話しして参ります。

イタリア映画が元ネタであり、それをそのまま日本の東京を舞台に置き換えた作品。
いわゆる旬の若手ではなく実力派の俳優陣を配してスマホを取り巻くスリリング劇を展開していきます。
近年スマホを扱った作品と言えば『スマホを落としただけなのに』のシリーズ二作がありますが、こちらはタイトル通りスマホを落とした事による想像を絶する恐怖を全面的に押し出しています。
一方、こちらは誰もが抱える秘密を暴いていく恐ろしさを我々に見せてくれます。
それは不倫であったり・妻に見せない夫と娘だけが共有する秘密であったりはたまた…?
このスマホを巡る心理戦とも言える駆け引きがたまらなくスリリングで見ている我々はただ固唾を飲んで見守るだけ。
そしてこの生み出された緊張感の中、時折覗かせるコミカルな描写に笑いを誘われます。
一見コメディなんだけどその実謎を仕掛けていくサスペンス要素も強かったりとこういう映画は嫌いではありません。
また、こういった作品て如何に伏線の張り方がスマートであるかが肝ではありますが、そこにもぬかりはない。
何気ない会話が後に非常に重要な意味を持ったりするのでそこにも意識を向けて頂きたいところ。

そして何と言っても序盤こそ和やかにしていたメンバー達の緊張感からギクシャクし出しそして修羅場へと化していくまでの過程はまさに人間の本質を表している様で恐ろしいです。

ただ、強いて言えば離婚にまで発展しそうな事態が頻出しているのに話し合いで綺麗にまとめようとする辺りはやや強引なきらいが否めないですかね。
事態の深刻さとその後の解決までのプロセスが乖離しているなと。

今回は映画ではありましたが、舞台演劇向きかなというのも感じましたね。
このパーティーではひとつのテーブルを囲み参加しているメンバーがこのスマホデスゲーム(と言うべきかな?)に参加しています。
つまりは会話劇が中心なんですね。
場面転換もそこまで大きな動きも見られず、観客は終始彼らの会話や動きを注視するのみです。
徹頭徹尾そのやり取りのスリリングさを楽しむという流れになるので映画よりむしろ舞台で映える作品かなと思いました。
もっとも僕は本家のイタリア版を見ていないのでそちらではどの様になっていたかの比較が出来ないのですが。
でもだからと言ってこの映画が悪いわけではない。
読めない展開は十分楽しませて頂きました。
近年のLGBTの問題にも触れていたりと濃い内容ではありました。
そしてやはり実力派キャストの面々による演技がこの作品を徹底して盛り上げてくれてました。
そして僕は思いました…。

どんなに気になっても決して他人のスマホなんて見るもんじゃないなと。

スマホは便利…だけど怖いそんな事を思いながら劇場を後にしました。

ソウルフル・ワールド

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ディズニー&ピクサーによる長編アニメーション。「インサイド・ヘッド」「カールおじさんの空飛ぶ家」を手がけ、ピクサー・アニメーション・スタジオのチーフ・クリエイティブ・オフィサーも務めるピート・ドクター監督が、人間が生まれる前の「ソウル(魂)」たちの世界を舞台に描くファンタジーアドベンチャー。ニューヨークに暮らし、ジャズミュージシャンを夢見ながら音楽教師をしているジョー・ガードナーは、ついに憧れのジャズクラブで演奏するチャンスを手にする。しかし、その直後に運悪くマンホールに落下してしまい、そこから「ソウル(魂)」たちの世界に迷い込んでしまう。そこはソウルたちが人間として現世に生まれる前にどんな性格や興味を持つかを決める場所だった。ソウルの姿になってしまったジョーは、22番と呼ばれるソウルと出会うが、22番は人間の世界が大嫌いで、何の興味も見つけられず、何百年もソウルの姿のままだった。生きる目的を見つけられない22番と、夢をかなえるために元の世界に戻りたいジョー。正反対の2人の出会いが冒険の始まりとなるが……。Disney+で2020年12月25日から配信。当初は劇場公開予定だったが、2020年の新型コロナウイルス感染拡大により劇場公開を断念し、Disney+での独占配信に切り替えられた。日本語吹き替え声優は浜野健太、川栄李奈
(映画.comより)

まずはこの作品。
不本意ながらピクサー映画では初めて劇場公開されない長編映画となってしまいました。
全世界はもちろん、日本でも大変人気の高いピクサー作品ですから興行的なヒットもかなり期待出来た事でしょう。
コロナを恨むしかないのですが、しかし公開延期という選択をせず、配信へシフトした事情としては各種賞レースに間に合わせたかったとも言われています。
さて、私事ですが、この『ソウルフル・ワールド』配信に合わせDisney+の登録をしました。
『ムーラン』の時も考えたのですが、結局その時は見送り本作配信に合わせて登録した次第です。
月額790円でDisney作品が見放題。
ピクサーもマーベルもスターウォーズも対象となりますので映画ファン・ディズニーファンは強く登録をすすめます!
更にこの『ソウルフル・ワールド』だってリピートも出来るわけですからね。
これまで配信に対して遅れをとっていた私もこのDisney+のお陰で退屈しない年末年始を過ごす事が出来ました。

さて、ピクサー作品が大好きな私。
当初劇場公開が予定されていた本作の予告を見た時からかなり高い期待を抱き、そして鑑賞致しました。
何より本作の監督はピート・ドクター監督。
ピクサーの黎明期から手腕を発揮し、独創性の高い作品で唯一無二の世界観を築いてきました。
とりわけ近年で言えば2015年の『インサイド・ヘッド』では喜び・怒り・悲しみ等の感情を具現化し、人間の心理世界を舞台にするという革新的な表現で我々を驚かせ、2018年の『リメンバー・ミー』は監督流の死後の世界を実体化させ、話題を呼んだのも記憶に新しいところです。

そして本作では更にこれまでの想像を遥かに超越した作品世界。
それは生命誕生前の世界です。
人間が生を受ける前をクリエイティブな思考で形成し、それをひとつのストーリーへと落とし込んでいく。
聡明な人の発想の凄さというのを僕はあの『インサイド・ヘッド』でまざまざと見せつけられただただ驚愕させられたのですが、本作でもやはりこの人の超越した才能に圧倒されてしまいました!
惜しむらくはこれを劇場で体験出来なかった事ですが、重ねてコロナを恨むばかりです。

まず本作で特徴的なのは黒人が主人公なんですよね。
有色人種としては『リメンバー・ミー』もそうでしたが、これは近年のディズニー作品でもよく見られる流れ。
グローバルな世界を象徴する傾向ではありますが、ピクサー作品では意外にも初めて。
更に中年男性が主人公というのも初なんですね。
恋人も妻もなく安定した職にも就かず母親からは将来を不安視される…なんてまるで俺じゃねぇか!
なんて見てましたが、正にそれ。
だけどジャズミュージシャンとしての夢を抱き憧れのライブハウスでのステージに向けて励んでいるそれが彼の状況。
折しもこの「夢」がキーワードになる作品がこの『ソウルフル・ワールド』と同日に全国の映画館で公開となりました!
それが『えんとつ町のプペル』ですね。
キングコング西野亮廣が伝えたかったのは夢を追うという事にどこか卑屈になってしまうこの時代。
高らかに夢を語ってもいいじゃないかという夢讃歌とも言える内容でした。
一方、この『ソウルフル・ワールド』もやはり夢叶わずくすぶり続ける中年男・ジョーまたは周囲の人々の姿からこの夢に対してのテーマが表出していきます。
獣医になりたかった男性は床屋になる。
音楽を辞めようとしていたジョーの生徒がふとした一言で再び音楽に取り組もうとする。
そしてジョー当人はと言えばある夢を実現させる。
だけどその後に見る景色とその先の日々にどこかしら虚しさを感じてしまう。
そこで奇しくもジャズに造詣の深いタモリさんのある言葉を思い出しました。
夢を追うヤツって今が楽しくないから将来に理想の自分を描いた夢というものを見いだそうとする。
だけど夢という概念がなく、日々楽しく生きてるヤツってのは気付けばすごい事をやってのけてんだよな。
という趣旨のタモリさんらしい発言。
元々芸能界に入る気などさらさらなくサラリーマンをしていたタモリさんがミュージシャンの山下洋輔さんが宿泊していたホテルの一室に飛び込み歌舞伎の物真似を披露し、笑いをかっさらいそれが後の運命の扉を開く事になる。
そして赤塚不二夫という強力なサポーターの後押しでほとんど下積みなくテレビで活躍し、その後の国民的バラエティー番組の司会へ。
夢を抱かず一夜にして成功を掴み取ったタモリさんだからこそ言える発言かもしれません。
そしてタモリさんは人生を楽しめる人=ジャズの人という独自の定義も示されていました。

そしてこの『ソウルフル・ワールド』はまさに楽しめる=ジャズのタモリイズムを感じる描写が随所に見られるんですよ。
それはひょんな事からジョーと行動を共にする22番と呼ばれる魂がジョーの身体に入り込み、何気ない人間としての暮らしを謳歌するんですよね。
それまで気難しそうな歴史上の偉人の魂となっていた22番にとってはピザ一枚食べるのも子供用のキャンディーをくわえるのも町の人々と会話をするのも全て刺激的。
そして生まれるワードが「JAZZってる!」なんですよね。
JAZZの音楽的ルーツって元々は奴隷として連行される黒人がその悲しみを癒す為に唄った事から始まります。
しかし、それが後にサックス・ピアノ・ウッドベース・ドラムと楽器隊が加わりバンド演奏され人々の感情に訴えかける音楽へと変化していきました。
何百年に渡り抑制されていた「楽しむ」という感情を手に入れた22番が発したこのパワーワード
JAZZの歴史と22番のこれまでの過程とがリンクしていると感じたのは僕だけでしょうか。
個人的に22番がこのジョーの身体に入り床屋で独自の人生哲学を語るシーンが印象的でしたね。
22番が過去に入っていた人。
アルキメデスリンカーンマリー・アントワネット等々。
そんな偉人達に憑いてた(でいいのかな?)わけだからそりゃ理知的だわな。
22番が床屋さんにカットしてもらいながら独自の哲学を饒舌に展開。
カット待ちの客の誰もが熱心に耳を傾けていました。
で、このシーン。
いつもは音楽の話ししかしないジョーが床屋さんのこれまでの生い立ちの話しを引き出してるんですよね。
これは肉体こそジョーだけど頭脳が22番だから音楽しか話せないくすぶり続けるミュージシャンから話し上手で聞き出し上手まるでトーク番組の一流司会者の様になっているんですが、我々実生活に生きる人にも言えますよね。
考え方や意識を変えるだけで人は変われるという事です。

そしてこの映画における最大のメッセージ。
それは人の運命は実は生まれる前から決定づけられているのかもしれない。
だけどそれを切り開いていくのは自分次第という事。
更に言えば人間の幸福なんて所詮は相対的な評価に過ぎず、最後は本人がどう判断するかって事なんですよね。
コニーは自分の夢の実現を前になかなか次のステージへ踏み出せず彼が意としない音楽の非常勤講師をしていました。
彼の母親は安定しているのが一番という思考で厚生年金と社会保険のつく講師としての正規雇用を良しとしミュージシャンの道に難色を示していました。
これは日本における我々世代と親世代の価値観にも正に通じる部分ですよね。
安定と不安定。
現実的な思考と夢に生きる思考
前者はまさにこれまでの時代において至上とされていた価値観なのですが、後者の生き方がこれからの時代重視されると言われています。
よく言う風の時代の価値観ですよね。
その価値観を肯定するつくりとなった本作と『えんとつ町のプペル』が同日に世に放たれたというのは後に振り返った時に強い意義を持つ様な気がします。

えんとつ町のプペル

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お笑いコンビ「キングコング」の西野亮廣のプロデュースにより、イラスト、着色、デザインなど総勢33人のクリエイターによる分業体制、クラウドファンディングを使い資金を募って制作されたベストセラー絵本「えんとつ町のプペル」をアニメ映画化。煙突だらけの「えんとつ町」。そこかしこから煙が上がるその町は黒い煙に覆われ、住人たちは青い空や星が輝く夜空を知らずに生活していた。ハロウィンの夜、この町に生きる親を亡くした少年ルビッチの前にゴミ人間プペルが現れる。原作の西野が脚本、製作総指揮を務める。監督は伊藤計劃原作の「ハーモニー」で演出を務めた廣田裕介。アニメーション制作は「海獣の子供」「鉄コン筋クリート」などで高い評価を受けるSTUDIO4℃
(映画.comより)

2020年最後の話題作と言っても過言ではないのが本作でした。
お笑いコンビ・キングコング西野亮廣さんの大ヒット絵本である『えんとつ町のプペル』。
さて、その西野亮廣さんというとどんなイメージですか?
キングコングの突っ込みとして若くして大ブレイク。
人気番組『はねるのトビラ』等で人気を博した後、現在は本作に代表される絵本の執筆をはじめとしたクリエイティブな活動をし、更には今では当たり前となっているクラウドファンディングを広めた方でもあります。

実は批判を覚悟で言えばお笑い芸人としての西野さんの印象が薄くキングコングの漫才を笑って見た記憶が僕にはなくて。
『はねトビ』もインパルスやドランクドラゴンを軸に見ていました、ごめんなさい。
そして西野さんが絵本を手掛けられた後もよくあるお笑い芸人が本業以外のパフォーマンスをしている程度にしか見ていませんでした。

しかし、YouTube等を通じて西野さんの思いやこれまでのアクションを知った時に感じたのは如何に自分は表面的な浅い部分でしか物事を見ていなかったかを気付かされてしまいましたね。
西野さんご自身この8年間、理解を得られない世間と戦い、しかし信念を曲げずに貫き多くの人達を動かしてきたのか。
それを知らない人に言いたい。
今からでも遅くはない。
YouTube西野亮廣のスゴさがわかる動画をタダで見る事が出来るから是非ご覧頂きたい!
そしてそれらを見た後は本作の鑑賞を強くオススメします!

さて、今回は前置きがかなり熱くなりましたが、本作についてお話しさせて頂きます。
まずアニメーションなのでビジュアル的な面から伝えるととにかくスクリーンで見る映像が素晴らしい!
とりわけこの作品の場合、星の見えない闇夜の中の町が舞台になるわけですが、明と暗のバランスが絶妙なんですよね。
空のない町、漆黒の闇に包まれた空間から漂う絶望的なムードを漂わせる一方、町全体はネオンが煌々としていて明るい。
そこに生きる人々だって暗闇の中ではあるものの、それを当たり前のものとして日常の生活を送っている。
この辺の調整って難しいと思うんですよ。
明る過ぎても空のない閉塞感が伝わりずらくなるし、暗過ぎてもただ重いだけになる。
人間の性質だって一見明るく見えても心の内面に淀みがあるその様を伝えるのが本作の肝になっている部分があるんですね。
町の様子と人々の心境をシンクロさせる為の色使いとして絶妙なんですよね。
鉄コン筋クリート』・『海獣の子供』等で高い評価を得てきたSTUDIO4℃の手腕が遺憾なく発揮されてるなと感じました。

次にキャスト陣。
主人公の少年・ルビッチを芦田愛菜、ゴミ人間のプペルを窪田正孝その他豪華キャストが集結している事でも話題の本作ですが、まずは芦田愛菜さん。
天才子役からすっかり実力派女優へと変貌を遂げた彼女が本作で挑んだのはえんとつ掃除の仕事をするひとりぼっちの少年・ルビッチです。
空の存在を主張し続けた父は嘘つき呼ばわりされ、町中の人から嫌われ、そして息子・ルビッチも異端児扱いされ友達も居ない。
そんな孤独な少年の声が芦田愛菜さんにはピッタリとハマり、プロの声優顔負けの演技をされてました。
もっとも芦田愛菜さんはイルミネーションスタジオの『怪盗グルー』シリーズでも声優はされていますが、グルーでのそれとはまた違う良さがありましたね。
で、驚いたのがプペル役の窪田正孝さんですね。
はじめに本作のキャストを知ってたから窪田さんと理解した上で鑑賞していたものの、事前情報なしで見たら驚きかもしれません。
どこか情けないんだけど一方で純粋でまっすぐなそんなプペルを普段の窪田さんとはかけ離れた演技を見せ驚かせてくれました。
その他、小池栄子さんや宮根誠司さん、國村隼さん、藤森慎吾さん等がキャストとして名を連ねていますが、國村隼さんはすぐに「あっ、國村さんだ!」なんてすぐにわかりましたね。
でもそれがナチュラルでありながら言葉に含蓄があるし説得力がある。
なくてはならない存在でしたね。
また藤森さんもいつもの藤森さんテイスト全開でしたね!
ノリが軽くて口まで軽いちょっと困ったヤツなんですけど憎めないんですよ。
チャラ男でブレイクしていた時の様なチャラいけど嫌いになれない感が藤森さんのキャラクターと合ってましたよね。

さて、最後に本作最大のテーマについて。
それは夢をあざ笑うヤツと夢を追うヤツのひたむきさでしょうか。
件のYouTubeチャンネルにて西野さんがおっしゃってました。
とかく今の時代って夢を追う人を馬鹿にして夢を追う事に負い目を感じる人がいるって。
本作におけるルビッチの星を見るという事に対し、人々は嘲笑し、蔑み罵声を浴びせてました。
そしてそれは父もまた人々から嘘つき呼ばわりされ、迫害されながら亡くなっていきました。

作品は違いますが、『ONE PIECE』の一巻でルフィが海賊王になると宣言した時、村人は馬鹿にしながらルフィを笑い者にしました。

ルビッチやルフィの様に夢を語るだけで馬鹿にされるのが悲しいかな今の世の中ですよね。
「地に足をつけなさい」「世の中そんなに甘くはない」「お前みたいなヤツがなれるわけない」。
ラジオDJになろうと思った時、人に言えなかったんだよね。
だって「お前喋り上手くねぇじゃん!」て言われそうだったから(笑)
実際その時の俺ってただ音楽が好きだからって理由だけだったしね。
だから俺はトーク力磨いて何とか人に聞かせるくらいのトークスキルは身についたかなとは思っているけど。

なんて僕の話しはこの辺で。
そう、僕も昔は自分の夢を語る事に抵抗がありました。
でもね、夢を持てば必然と努力するし自分自身成長していきますよ。
だけどそんな姿を認めず嘲笑する層が一定数いるのは事実です。
西野さんは今の道を選択した時、理解しない人から「芸人が何をやってるんだ」とか「芸人なら本業のお笑いで人を笑わせろ」とか言われた様です。
そんな西野さんがルビッチの姿に自らを重ねて作り上げたストーリーですから僕みたいな人間に刺さらないわけがありません。

劇場内では人目を憚らず僕も涙と共に鑑賞しました。
そして誰一人席を立たないエンドロール後、館内から拍手が聞こえてきました。
映画を見てもなかなかこういう光景には出会いません!
つまりそれ程僕と同じ回に本作を見た人の琴線に触れたという事でしょう。

約束のネバーランド

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テレビアニメ化もされた「週刊少年ジャンプ」連載の人気コミック「約束のネバーランド」を実写映画化。自然の中に建てられた楽園のような孤児院「グレイス=フィールドハウス」。そこで暮らす子どもたちは、母親代わりの優しいイザベラを「ママ」と呼んで慕い、いつか里親に引き取られる日を待ちわびている。年長者のエマ、レイ、ノーマンも、外の世界で待つ幸せな暮らしを信じていた。ある日、里親が見つかり孤児院を去ることになったコニーを見送ったエマとノーマンは、彼女が大切にしていた人形を忘れて行ったことに気づく。コニーに人形を届けるため、近づくことを固く禁じられていた「門」へ向かった2人は、そこで無残にも命を奪われ、食料として出荷されるコニーの姿を目撃する。彼らが楽園だと信じていた孤児院は、実は「鬼に献上する食用児を育てる農園」で、ママは「最上級の食用児を育てる飼育監」だったのだ。全てが偽りだったと気づいたエマたちは、孤児全員を引き連れた無謀ともいえる脱獄計画に乗り出す。エマを「君の膵臓をたべたい」の浜辺美波、レイを「万引き家族」の城桧吏、ノーマンを「仮面ライダージオウ」の板垣李光人がそれぞれ演じる。「僕だけがいない街」の監督・平川雄一朗と脚本家・後藤法子が再タッグを組んだ。
(映画.comより)

2020年のエンタメ界は『鬼滅の刃』に終始したと言っても過言ではないですが、一方でこの『約束のネバーランド』も注目を集めました。
週刊少年ジャンプ」連載でアニメも大ヒット!
更に鬼が登場するなんて辺りも共通点が多いですが、『約束のネバーランド』は実写での映画化です。
しかし、思い出して頂きたい。
これまでどれほどの人気漫画が実写を試み、問題作となってきたか。
各々の作品こそ挙げませんが、興行的にも内容的にも失敗した作品は枚挙にいとまがありません。
この『約束のネバーランド』のポスターにも「禁断の映画化」なんて謳われている辺り製作するにあたって如何にチャレンジングな試みであるのか伺えます。

ちなみに私、さもこの『約束のネバーランド』を知ってるかの様に語りましたが、原作にもアニメにも触れていないといういつもの様に予備知識ゼロで鑑賞した次第でございます。

そんな僕の目から見た映画評となる事をはじめにお伝えしておきます。

さて、この『約束のネバーランド』という作品。
ジャンルで言えばダーク・ホラー・ファンタジーといったところ。
ファンタジックな舞台だけど怪奇的で全体的には暗めの世界観。
そして舞台となっているのは何処の国?
なんて気になりましたが、どうやら北欧の様ですね。
だから登場人物も全て西洋風のネーミング。
それを北川景子浜辺美波といった東洋・日本の俳優陣がキャストとして名を連ねストーリーを展開するわけですから、まずそこの設定に違和感なく没頭出来るかが本作を見る上でひとつの壁になるかもしれませんね。
数年前にあった『鋼の錬金術師』の様な東洋人のコスプレに終始しないかどうかがやはり本作を製作する上での手腕が問われる部分かもしれません。

しかし、それが人気俳優陣の演技により見事に違和感を払拭してくれます。
とりわけ主演の浜辺美波さんに関してはエマという少女が浜辺さんの実年齢よりかなり若いのでその辺りを気にしながら見ておりませんが、浜辺さんの演技力が見事にその課題をクリアーしている。
だからこそこちらも問題なくストーリーを追えるんですよね。
確かにはじめに金髪姿の浜辺美波ちゃんを見た時は「むむっ」なんて身構えていたのは事実なんですけどね…。
北川景子さんの優しいママとしての包容力と裏の顔においての不気味さの演じ分けも魅了されましたね!
最近の北川景子さんの作品だと昨年12月に評した『ドクター・デスの遺産 BLACK FILE』という作品がありました。
あの映画では綾野剛さんとバディ関係を築くクールビューティーな女刑事という役柄でしたが、同作とまた違った印象を与えてくれます。

そしてこのところ、映画の出演機会が増えている渡辺直美さん。
『新解釈 三國志』でもそうでしたが、ここぞというところで彼女が登場するインパクトはなかなかのもの。
今の日本映画界にはなくてはならない存在かもしれません。
そして男性陣に目を移すとレイ役の城桧吏さん。
鬼を退治するのが『鬼滅の刃』なら鬼と取引するのがこの『約束のネバーランド』。
この取引然り脱出の為の頭脳戦をする上で要になるのがこのレイなのですが、キレ者っぷりを遺憾なく発揮し、この脱出劇を大いに盛り上げてくれてました。
一方、ノーマンを演じたのは板垣李光人さん。
失礼ながら初めて名前を知りましたが、『仮面ライダージオウ』の方なんですね。
最近では舞台での活躍が多いそうですが、中性的な佇まいや日本人離れした風貌が西洋人のそれを醸し出しており、作品の世界観にもマッチしておりました。
そして本作で使われるCGやVFX等の技術はなかなか手が混んでおります。
鬼という抽象的な存在の具現化を見事に違和感なく成功させておりました。
このテの作品でとりわけ難しいとされる部分だとは思いますが、『約ネバ』の実写化においてファンが特に意識するであろうポイントかと思いますが、一定の評価は出来るのではないでしょうか。

そして後半の展開はかなりスピード感があり、ドラマティックな流れともなっていたので、原作を知らない僕としてはかなり楽しませて頂きました!
個人的には予告編でも目にしていたレイが火を放つシーン以降かな。
この放火シーンにおいてはトリックがあるのですが、その仕掛けを見せるくだりなんかは奇しくもちょうど一年前にやはり浜辺美波さん主演の『屍人荘の殺人』におけるおざなりな印象をふと思い出してしまいまして、あれに比べたら…ねぇ~なんてやめときましょか。

と原作末読の僕は割と楽しんで見る事が出来ましたが、もしかしたらコアなファンから見るとまた違う印象なのかもしれませんね。

まずは鑑賞する事をオススメします!

ワンダーウーマン 1984

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DCコミックスが生んだ女性ヒーロー、ワンダーウーマンの誕生と活躍を描き、全世界で大ヒットを記録したアクションエンタテインメント「ワンダーウーマン」の続編。スミソニアン博物館で働く考古学者のダイアナには、幼い頃から厳しい戦闘訓練を受け、ヒーロー界最強とも言われるスーパーパワーを秘めた戦士ワンダーウーマンという、もうひとつの顔があった。1984年、人々の欲望をかなえると声高にうたう実業家マックスの巨大な陰謀と、正体不明の敵チーターの出現により、最強といわれるワンダーウーマンが絶体絶命の危機に陥る。前作でもメガホンをとったパティ・ジェンキンス監督のもと、主人公ダイアナ=ワンダーウーマンを演じるガル・ギャドットが続投し、前作でダイアナと惹かれあった、クリス・パイン演じるスティーブも再び登場する。
(映画.comより)

久しぶりの大規模公開のアメコミ映画です!
MCU映画を劇場で鑑賞したのが2019年7月の『スパイダーマン ファーフロムホーム』で、DC作品は昨年3月の『ハーレイクインの華麗なる覚醒』以来。
ほんの少し前なら毎月の様にアメコミ映画は公開されていましたが、やはりこれもコロナの影響ですね。
もっともこの『ワンダーウーマン』にしたって10月に予定されていましたが、12月に延期。
しかし日本での公開は12月25日から一週間前倒して12月18日公開となったのはファンとしては嬉しいものでした。

そして久しぶりのアメコミ映画をしかと満喫してきたワタクシですが、やはりこのテの映画は劇場で見なければと改めて感じた次第。
まずは3年振りの続編となったこの『ワンダーウーマン』。
2017年の一作目更にその後にDCEUのヒーロー達が集結した『ジャスティス・リーグ』でも存在感を放っていたワンダーウーマン(ダイアナ)。
ガル・ギャドットの当たり役であり出世作でもありますが、今回もあの美しさと強さは健在。
思えば前作では第一次世界大戦下を舞台に人間の世界を知らない彼女が天然ぶりを発揮させながらも、戦う姿が非常にカッコ良かったのですが、あれから時は経ち、1984年に生きる彼女からは天然さは抜け、すっかり都市に生きるデキる女へと変貌しておりました。
そしてそんな彼女に憧れを抱く女性の登場と彼女に近づく実業家がこの映画を盛り上げていくわけです。
そしてその中でテーマとなっていくのが人間の欲望。
人それぞれではありますが、欲には様々なものがあります。
お金持ちになりたい・有名になりたい・異性にもてたい・出世したい・賢くなりたい等々。
その欲を巧みに操り世界を混乱へと招いていく本作のヴィランの恐ろしさ。
とりわけアメリカ大統領へ近づき、大統領の欲をコントロールするシーン等は戦慄をおぼえます。
そしてそんな彼もまた欲のコントロールを誤り破滅へと導かれていくわけですが、そここそが見ている我々に問題を突きつけてくる場面と言えるでしょう。
ことほどさように現代はとかく欲に餓えた社会でもあり、SNSでのフォロワー数の獲得等に見られる承認欲求へも通じるものがありますよね。
とりわけダイアナの同僚女性においてのそれがかなり人間の本質を突いてるなと感じまして、元々は職場内でも目立たない存在。
そんな彼女が仕事も出来、コミュ力の高いダイアナに憧れるのは無理もない話し。
だけど彼女は町ではホームレスを介抱したりと優しい性格でもあるのです。
しかし、彼女が美貌や力を手中にしてからはとにかく野望の塊の様に豹変し、少し前までのホームレスへの優しさはどこへやら?
「全人類最強の存在へ上り詰めてやる!」とまで臆面なく口にするわけですから。
これは彼女の存在を我々非力な人間そのもののメタファーとして登場させ、メッセージを投げ掛けているという事ですよね。

それから面白いのが、ダイアナの恋人・スティーブ(クリス・パイン)の再登場ですね。
前作を知ってたらまさか彼が登場するなんてという驚きがありました。
そして面白いのが前作では女戦士だけが暮らす島から20世紀初頭のアメリカの都市へやってきたダイアナ。
文明的な物に触れ、天然っぽさを出して笑いを誘ってくれた彼女に色々と教えてくれたのがスティーブでした。
今度はスティーブが自分がかつて生きていた時代を越え、1984年へやって来たもんだから戸惑うばかり。
ダイアナは彼にその時代の習慣を教えたりファッションのコーディネートをしたりと前作と逆の立場になっていたのが印象的でした。
そしてこの二人が共闘していくのですが、やはり前作を見ているとアツくなりますね!

さて、この予告編でも気になっていたのが、ゴールドのスーツ。
昔見た『聖闘士星矢』感が男の子的なワクテカ感を煽ってくれるのですが、このスーツ果たして何なの?というのが本作を見る上で気になってたし、『ワンダーウーマン』前作からのファンはやはり私の様な心境になると思うんですよ。
ところが、ここぞという決めシーンにドラマチックに登場するでもなくはじめからダイアナの部屋にあるんですよね。
あのスーツを手に入れる経緯も気になるし、予告編へ本作のポスターでも大々的に出てるからめちゃくちゃスペシャル感のあるヤツだと思うじゃないですか。
案外そうでもなくて、それどころか結構雑に扱われてて逆に笑っちゃいましたけどね。

なんて具合に大味な面とか突っ込み所は確かにありますが、150分の長さも感じない痛快な内容でした。
それから私しきりに前作の話しを出したところからもお分かりかと思いますが、本作鑑賞においては前作を見る事を強くオススメします!
前作末鑑賞で楽しめなくもないですが、より楽しめる事必至かと思いますので。

劇場短編 仮面ライダーセイバー 不死鳥の剣士と破滅の本 劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME

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令和仮面ライダーシリーズの2作目として2020年9月から放送の「仮面ライダーセイバー」の短編劇場版。主人公の神山飛羽真/仮面ライダーセイバーをはじめ、聖剣を抜くことで変身するライダーたちの戦いを描く。聖剣に選ばれた剣士たち「ソードオブロゴス」の前に圧倒的な力をもつバハト/仮面ライダーファルシオンが現れる。封印されていたはずの破滅の本がバハトによって解放され、本からあふれた闇によって現実世界とワンダーワールドが飲み込まれていく。終焉に向かう運命を前に、飛羽真はソードオブロゴスの仲間たちとともに、バハトとの決戦に挑む。敵役となるバハト/仮面ライダーファルシオンは、「仮面ライダーアマゾンズ」の鷹山仁/仮面ライダーアマゾンアルファ役で知られる谷口賢志。「劇場版 仮面ライダーゼロワン REAL×TIME」と2本立て上映。
(映画.comより)

この時期恒例の『仮面ライダー』の劇場版。
僕は二年振りの鑑賞となります。
テレビシリーズを見ない僕にとってはこの冬の劇場版を見る事によって最新の仮面ライダー事情を勉強させて頂くわけですが、今回は短編作との二本立てなんですね。
この感覚がどこか僕の子供時代の東映まんが祭り的な懐かしさを感じましたね。
僕が見に行ったのは12月21日。
子供達が冬休みに入る直前の平日でしたが、客層は皆大人。
とりわけイケメン目当ての主婦が中心かな?と思いきや、仮面ライダーと共に育ったであろう男性が中心の客層。
そんな中での鑑賞だったのでキッズ対象映画ではありながら、かなりハードルは低めのライダータイムでございました。

さて、そんな仮面ライダーの劇場版ではありますが、現在放送中の『仮面ライダーセイバー』の短編はそこそこに『仮面ライダーゼロワン』の単独映画を比較的長めに作られておりまして、そちらを中心に話しをしていきます。

俳優・伊藤英明や山崎紘奈等をゲストに迎えた本作。
この二人を中心に据えたオリジナルストーリー。
どうやらこれはTVシリーズの後日談となっている様です。
ところで以前『仮面ライダー』劇場版の比較対象として僕はMCUやDCEUのいわゆるアメコミ映画を挙げました。
勧善懲悪なヒーロー物しかしその中に見ている人へ向けたメッセージやテーマが織り込まれており、子供向けとして片付けるにはあまりにも惜しいものがあると。
奇しくもこの劇場版鑑賞の前日、『ワンダーウーマン 1984』を見ており、その感情を乗せながら映画を楽しんで参りました。 
そしてやはりこの劇場版ですが、深いテーマを感じさせてくれました。
ではそのテーマとは何か?

それはズバリ、「AI等に見られるテクノロジーと人間の向き合い方」と言ったところ。
更に詳しく言えば「進化したそれは人間に幸福をもたらすのか?」という点でしょう。
2020年はAIと人間社会への影響を取り上げた映画で『AI崩壊』という作品がありました。
人類がこの先AIに頼りっぱなしの社会を選択した時もたらされるであろう悲劇を取り上げ衝撃を与えたのは記憶に新しいところです。

仮面ライダーゼロワン』においてはこのAI、ヒューマギアをストーリー全体で展開させ、人間社会へ与える影響ひいては人間を幸せに導くのかを投げ掛けてきます。
これはどうやらTVシリーズから一貫して描かれている点との事で近年のAIがクローズアップされる時代に即した仮面ライダーシリーズとしての新基軸として見るべきかもしれません。
今回ゲストとして登場した伊藤英明演じるエスという男の行動への動機こそ恋人を思ってという人道的な物ではあるもののその後の手段から展開・帰結に至るまで徹頭徹尾テクノロジーと隣接していきます。
そして同時に旧来からある例えば新興宗教的な洗脳と集団心理の恐ろしさがヴィランであるこのエスから生み出されていくこの展開。
重ね重ねではありますが、下手なアメコミより凝った作りをしていち映画ファンとしてもかなり見ごたえを感じましたね!

更にヒーロー活劇としての面白さももちろん健在でして、SFX・VFXもふんだんに盛り込まれ、同時にSEにも趣向が凝らされており、圧倒的なアクションシーンに思わず身を乗り出したくなります。

ただ、一方では登場人物の行動理由や動機付けが弱かったり説明不足やご都合主義等が悪目立ちしてしまった感は否めません。
更に言えば無理矢理なお笑い描写はちょっと冷めてしまったかなぁ。
今回はアキラ100%が出てるんですが、お馴染みのあのネタに結びつけるくだりが作画との相性も感じられなかったし、違和感ありまくりでした。
ただ、アキラ100%さんのネタに入るまでの演技は良かったですよ!
最初アキラ100%さんとわからなかったし。
今後、俳優としての活動を軸にしても良いのではないですか?
ちょうど劇中では俳優としても活躍してる児嶋さんが良い演技をされてただけによりそう思いましたけどね。

さて、そろそろまとめに入りますが、テクノロジーについての問題提起と可能性の示唆。
新たな技術との共存は既存の価値観の変容或いは破壊を余儀なくされる事でしょう。
そしてそれは折しもコロナ禍における現在の倫理観との結び付きも感じられるテーマでもあります。
ヒーロー活劇である仮面ライダーがこういった問題提起をするなんて正直映画を見るまでは考えもしませんでした。
見た後に我々は一連の問題を見つめ直すきっかけに
なるのではないでしょうか。

伝統ある仮面ライダーシリーズの最新の技術と一流のスタッフが100%でぶつけた作品です。

是非劇場でご覧下さい。
安心して下さい、HIGHになります。