きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル

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1995年製作の大ヒット作「ジュマンジ」の続編で、「ワイルド・スピード」シリーズのドウェイン・ジョンソンが主演を務めたアドベンチャーアクション。高校の地下室で居残りをさせられていた4人の生徒たちは、「ジュマンジ」というソフトが入った古いテレビゲーム機を発見する。早速そのゲームで遊ぼうとする4人だったが、キャラクターを選択した途端にゲームの中に吸い込まれ、各キャラクターのアバターとなって危険なジャングルの中に放り込まれてしまう。マッチョな冒険家やぽっちゃりオヤジなど本来の姿とかけ離れた姿に変身した彼らは、ゲームをクリアして現実世界に戻るため、それぞれ与えられたスキルを使って難攻不落のステージに挑む。共演に「スクール・オブ・ロック」のジャック・ブラック、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズのカレン・ギラン。「バッド・ティーチャー」のジェイク・カスダンがメガホンをとった。
(映画・com より)


日本ではともかく全世界で大ヒットとなっている『ジュマンジ/ウェルカム・トゥ・ジャングル』。
元々の原作絵本ではボードゲームが舞台になっている様ですが、90年代に製作された映画では時代に合わせ、なおかつ映像的な奥行きを見せる為テレビゲームになりました。
そして20数年振りに作られた続編である本作。
いや~、笑った笑った。
アホやな~というのが率直な感想です。

本作の主たる登場人物は4人。
まずは男子から見ていきましょう。
勉強はそこそこ出来るけどコミュ障でひ弱なオタク君。
アメフトをやっており体格も良く女の子にも不自由しないリア充君。
ちなみにこの二人は元々幼馴染みなんですが、今はそのキャラクターの関係性からリア充君はオタク君をパシリにしたりとパワーバランスがはっきりしています。
続いて女子です。
SNS大好きでスマホが手離せないイマドキ女子。
真面目なんだけど理屈っぽくてついつい余計な事を口にして先生からも疎ましがられてしまう女の子。

普段交わる事のない彼らが居残りをさせられたのをきっかけにゲームの世界にトリップしてしまうという大冒険に身を投じてしまうのです。

そしてこのゲームの世界では現実とは対局のキャラクターになってしまうのが何とも面白い!
まずオタク君はフェロモンたっぷりなマッチョマンに(ドウェイン・ジョンソンに様変わり!)
現実世界ではオタク君を下に見てたアメフト野郎は身長も低く戦力的にも大きく劣る兄ちゃんに。
KY少女はお色気たっぷりなセクシーギャルに。
オチ担当とも言えるイマドキ女子はメタボな中年オヤジになってしまうんです。
アメフト野郎なんてゲーム世界ではオタク君の助手的ポジションに甘んじてしまいますからね。
パワーバランスの逆転現象が発生しちゃうんです。

入れ替わりの妙なんて言えば古くは『転校生』新しくは『君の名は。』で目にしてきましたので今更語るまでもないのですが、日常のキャラクターから脱して違うキャラクターに変わる、しかし中身だけ一緒が故に生み出されていくギャップがいちいちおかしいのです。

メタボオヤジが「私のスマホどこ~?」なんて動揺したりおしっこの仕方にうろたえたりするなんてのはベタながらもやっぱりおかしいし、敵キャラを色気で翻弄すべく慣れないポーズで誘惑するセクシーギャル(中身は非モテ女子)のぎこちなさは思わず声に出して笑ってしまいました。
しかも彼女にセクシーポーズをレクチャーするのがメタボオヤジってところがねぇ(笑)

と、この様に人の見た目とその中身というビジュアルイメージに訴求しつつ笑いに転化させるニクいやり方に悔しいけれどヤられてしまいました(笑)


ストーリー展開の面で言うと真っ先にイメージしたのがズバリ劇場版の『ドラえもん』です。
最新作『のび太の宝島』でもそうですがドラえもんの映画って日常とその隔離された世界での共闘、そしてそれを経た上での成長を主にした作品が多いですよね。
また、日常世界においてはのび太ジャイアンスネ夫、しずかちゃんという仲間内でもパワーバランスが発生するのですが、日常を離れた空間では普段いじめられてるのび太が圧倒的に強かったり日常におけるパワーバランス或いは序列を崩すディテールがよく見てとれます。
この『ジュマンジ』では舞台設定的には『のび太の大魔境』のイメージに近いのですが、本来ののび太ポジションが英雄的にかっこ良くなるという描かれ方としては『のび太の宇宙開拓史』が近いかなと感じました。

また、作品の性質は対局ではありますが、『IT ’それ’が見えたら終わり』に登場した少年・少女たちのイメージも彷彿とさせました。
あの作品では殺人ピエロという恐怖の対象と対峙するうちに育まれた彼らの自立心といった成長面が印象に残りました。
本作で言えばこの4人の高校生たちがゲームの世界に入り込みゲームをクリアするまでの共闘が確実に彼らを強くし、本作の前半と後半では明らかに人としても逞しくなっておりました。
それはオタク君と喪女ちゃんの二人なんかは特にでしたね。

さて、本作は前述の様に元々は90年代に製作された映画の続編です。
それに付随してか90年代と現代を結ぶあるキーパーソンが登場します。
その人物が発する90年代ワードと今の高校生が使う言葉の融合が絶妙でした。
チョベリグ~」と「マジ卍~」の夢の競演実現ですよ!

ちなみにマジ卍は早くも古くなりつつあるとか?
流行のサイクルは早いですなぁ。

ボス・ベイビー

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外見はかわいらしい赤ちゃんだけど中身はおっさんな「ボス・ベイビー」が巻き起こす騒動を描き、全米大ヒットを記録したアニメーション映画。「怪盗グルー」シリーズのユニバーサル・スタジオと「シュレック」のドリームワークス・アニメーションが初タッグを組み、マーラ・フレイジーの絵本「あかちゃん社長がやってきた」をもとに、「マダガスカル」シリーズのトム・マクグラスが監督を務めた。パパとママと暮らす7歳の少年ティムの家に、黒いスーツに黒いネクタイを締めた赤ちゃん「ボス・ベイビー」がやって来た。ティムの弟だというその赤ちゃんは、まるで大人のように話すことができ、口が悪くて人使いも荒い。実は彼には、ある秘密の任務があり……。アレック・ボールドウィンボス・ベイビーの声を演じるほか、スティーブ・ブシェーミトビー・マグワイアといった人気俳優が声の出演。日本語吹き替え版ではボス・ベイビーの声をムロツヨシ、兄ティムの声を芳根京子がそれぞれ演じる。
(映画・com より)


喋る赤ちゃん、しかも中身はオッサン!…なんて言ったらまるで『テッド』のテディベアを赤ん坊に置き換えただけ?と思ってしまいそうですが、はっきり言いましょう。
『テッド』、『パディントン』更には『ペット』といった作品が好きな御仁ならきっと満足な作品になるでしょう。

ディズニー、ピクサー、イルミネーションといった日本でも大人気のアニメーション制作会社。
それらに比するとやや地味な感が否めないのがドリームワークスです。
しかし過去には『シュレック』、『カンフーパンダ』等のヒット作も生み出しており、本作はこれらの作品を上回るかの如く現在大ヒット中です。
正直初週で『リメンバーミー』や『ドラえもん』を抑えて初登場一位になったのには驚きました。
何ならここ近年のドリームワークス作品の傾向からコケ予想すらしてたくらいですから。(ごめんなさい)

しかし実際に鑑賞してみてわかりました。
こりゃ、面白い!!

冒頭では冒険心旺盛なティムの空想世界が登場するのですが、ここは正直しんどかった。
何しろ直近で『リメンバーミー』を見ていた事もあってその画の粗さについていけなかったんですよね。
しかしこれが逆説的にはインパクトを生み出し、このあとの展開における効果的な演出としてカートゥーンムービー的な見せ方をしているという事に気付くのには時間がかかりませんでした。

そしてボスベイビーが登場して以降は一気に引き込まれていきました。
そもそもこのボスベイビーが生み出されるまでの描写がなかなかブラックテイストで面白い。
赤ちゃんがベルトコンベアーに載せられ流れ作業でベビーパウダーが塗られ梱包されるわけですから。
いわば赤ちゃんという名の商品なんですよ。
そしてそこの地点で人間界に産み落とされるか或いは経営向きと判断され赤ちゃんだけで運営するベイビー株式会社に配属されるか赤ちゃんの進路は二つにひとつ!
結果的にこのボスベイビーは経営向きの為、ベイビー株式会社の中間管理職となるわけです。

そして本作に登場するボスベイビーはゴリゴリの合理主義者であり出世の為なら手段をいとわないという文字通りの社畜
そして部下を集めて会議を開くのですが、この部下の面々が赤ちゃんそのものだったりするのでそこにまた笑いが生まれます。

ストーリー自体は至ってシンプル。
海外アニメ王道の展開なので子供にとっては『ミニオンズ』の様なスラップスティックコメディに触れる様な視点で大いに楽しむ事が出来るでしょう。

一方、大人は大人で違う視点で楽しめるハズです。
まず何と言ってもボスベイビーやベイビー株式会社での光景を通して社畜あるあるの様な物が多分に含まれているし、過去の名作映画のパロディーやエルヴィス・プレスリーコメディリリーフとして据える等の遊び心に目がいきがちだし何なら子供には少々過激な下ネタだってあります。
更にはヴァーチャルな世界なのに妙にリアリティを持たせた今の大人達の子供時代を思わせるほのかなレトロ感が見られます。
例えばボスベイビー達が会議で言語を発している証拠を得る為にティムが使ったカセットテープ。
ICレコーダーとかならともかく今どきカセットテープですよ(笑)
しかし、これにも意味がありましてそれはラストシーンへと結び付けていく為でもあります。
と同時にそれに気付ける人はどれだけいるのでしょうか?

また、本作に登場する道具の数々がユニークです。
ボスベイビーが会議で使うのはテディベア型のプロジェクターであったりベイビー株式会社にワープする為に使うのはあの赤ちゃん道具の代表格・おしゃぶりです。
一方、ティムが使う魔法使い型の目覚まし時計はインパクトがあります。
しかもこの目覚まし時計、決められた定型句を発するだけかと思ったらしっかり会話機能までついてますからね、思わず欲しくなっちゃいますよ(笑)

この様に本作はとにかく笑えるし、遊び心もたっぷりな上、類いまれなる創造力でもって心象に訴えかけるので飽きる事なく鑑賞出来るのは間違いありません。

そしてラストでは思わずウルっときました。
例えて言うなら『ドラえもん』の6巻の最終話と言っておきましょう。
なんてこれがわかった人、通ですな(笑)

家族や兄弟を思う時、そこに生まれるのは愛です。
この愛という普遍的なテーマをティムやボスベイビーはどの様に受け入れるのでしょうか?
それはあなたの目で是非劇場にてご鑑賞ください。

リメンバー・ミー

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トイ・ストーリー3」でアカデミー賞を受賞したリー・アンクリッチ監督が、陽気でカラフルな「死者たちの世界」を舞台に描いたピクサー・アニメーションの長編作品。日本におけるお盆の風習にあたるメキシコの祝日「死者の日」を題材に、音楽を禁じられたギター少年ミゲルの冒険や家族との強い絆を、数々の謎と音楽を散りばめながら描いた。物語の鍵を握る劇中歌「リメンバー・ミー」の作詞・作曲を、「アナと雪の女王」の「レット・イット・ゴー ありのままで」を手がけたクリステン・アンダーソン=ロペス&ロバート・ロペスが担当。第90回アカデミー賞では長編アニメーション賞および主題歌賞を受賞した。天才的なギターの才能を持つ少年ミゲルはミュージシャンを夢見ているが、過去の悲しい出来事が原因で、彼の一族には音楽禁止の掟が定められていた。ある日ミゲルは、憧れの伝説的ミュージシャン、デラクルスの霊廟に飾られていたギターを手にしたことをきっかけに、まるでテーマパークのように楽しく美しい「死者の国」へと迷いこんでしまう。ミゲルはそこで出会った陽気で孤独なガイコツのヘクターに協力してもらい、元の世界へ戻る方法を探るが……。
(映画・comより)


ドラえもん』や『ボスベイビー』と凌ぎを削りながらもなかなか首位に立てなかった本作。
しかし、最新の映画ランキングにおいて遂に三週目にして一位を獲得しました!
こういうランキングアクション個人的には好きです。

まず本作は『アナ雪』の短編が同時上映されますが、これが短編の域を超えた上映時間なので「あれ、今日アナ雪見に来たんだっけ?」と錯覚する程。
基本オラフがメインなのですが、アナやエルザの登場シーンもたっぷりなのできっと『アナ雪』ファンなら満足するのではないでしょうか?

…と『アナ雪』の話しはその辺にして本編の『リメンバーミー』についてです。
正直、この映画には楽しみな反面不安要素もあったんですよ。
死者の国を舞台にするというのが年末に見たあの映画に通じるなと思いまして(実際あの映画を見た時も予告編を目にしましたが)
更にメキシコの風俗・文化を取り扱うという視点も現在公開中の『ブラックパンサー』におけるアフリカンな風習を取り入れた描写と被るし、更に音楽を押し出すあたりに関しては「グレショーを越える音楽映画なんて今年は出ねぇだろ!」という私の斜に構えた視点もありまして最近見た映画のあれやこれやを詰め込んでる感とか共通点が多すぎたのがいまひとつこの映画の期待値を下げていた要因でもありました。

しかし…しかしですよ、さすがはディズニー・ピクサー
そんな私の不安感を一気に払拭させてくれる素晴らしい作品でしたよ!

そもそもですが、この作品。
映画のプロット自体には特別目新しさはないんですよ。
至ってシンプルな話しだし、ディズニー・ピクサー作品を見てたらよくありがちな展開でもあります。

しかし何がここまで胸を打つのかというと作品が持つ普遍的なメッセージなんですよね。
家族の存在とか愛なんて言うとともすれば陳腐になりがちなのですが、本作ではそれが祖先にまで辿り着いていきます。
そしてこの祖先に遭遇する事によって現在の家族へ導くルーツそのものを抽出させていく。
そこから家族というものへの帰属性に含みを持たせてくれるのです。

続いて死というものの扱い方について。
生命の長短に関わらず人間は誰しも死にます。
仏教、キリスト教等様々な宗教においても人間の生死に関する考え方には違いがありますね。
ここ日本での風習を言えばお盆が良い例ですが、お盆を迎えるとご先祖様の魂が現世に戻ってくると言われます。
本作におけるメキシコでもそれに近い考え方がある様でその日を迎えると先祖が戻るという死者の日があります。
しかし本作におけるそれは誰しもが現世に帰れるわけではなくある審査が行われます。
その条件とは子孫が今も祭壇に写真を飾られているかどうか。
もしその審査が通らなければ当然死者の日に戻る事が出来ないのみならず現世の人の記憶から全て消えてしまったらこの死者の国でも存在が消えてしまう。
つまりは第二の死が待っているのです。
この第二の死を扱うシーンが非常に衝撃的です。
漫画『ONE PIECE 』でこんなセリフがありますよね?
「人はいつ死ぬと思う…?
心臓を銃で撃ち抜かれた時……違う。
猛毒のキノコスープを飲んだ時……違う!!!
人に忘れられた時さ…!!!」

ヒルルクという医者が発した『ONE PIECE 』内屈指の名言だと思いますがまさしくそれなんですよ!

しかし残酷にも人の記憶からも消えてしまう人がいる。
そんな悲哀を本作では実に冷酷にかつ刹那的に描かれており、見る人の胸に訴える描写となっております。

一方、本作での死者の国の捉え方は実に肯定的で前述のあの映画…というか『DESTINY 鎌倉物語』同様「こんな世界があるのなら案外死ぬのも悪くない」なんて思わせる明るさがありそこが非常に印象的でした。

ところで去年から良い映画には良い音楽という視覚にも聴覚にもカタルシスを生み出してくれる作品が続いてますね。
本作の音楽もまたどれを取っても聴かせてくれる素晴らしいものばかりです。

家族そして血縁というものを考える意味でも家族で鑑賞する事をオススメします。

ちはやふる-結び-

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末次由紀の大ヒットコミックを広瀬すず主演で実写映画化した「ちはやふる 上の句」「ちはやふる 下の句」の続編。瑞沢高校競技かるた部の1年生・綾瀬千早がクイーン・若宮詩暢と壮絶な戦いを繰り広げた全国大会から2年が経った。3年生になった千早たちは個性派揃いの新入生たちに振り回されながらも、高校生活最後の全国大会に向けて動き出す。一方、藤岡東高校に通う新は全国大会で千早たちと戦うため、かるた部創設に奔走していた。そんな中、瑞沢かるた部で思いがけないトラブルが起こる。広瀬すず野村周平新田真剣佑ら前作のキャストやスタッフが再結集するほか、新たなキャストとして、瑞沢かるた部の新入生・花野菫役をNHK連続テレビ小説あまちゃん」の優希美青、筑波秋博役を「ミックス。」の佐野勇人、映画オリジナルキャラクターとなる千早のライバル・我妻伊織役を「3月のライオン」の清原果耶、史上最強の名人・周防久志役を「斉木楠雄のΨ難」の賀来賢人がそれぞれ演じる。
(映画・com より)

今や目にしない日はないという広瀬すずですが、彼女の出世作であり代表作といえるのがこの『ちはやふる』ですね。
2016年の『ちはやふる 上の句』、『ちはやふる 下の句』共に劇場鑑賞したワタクシですが、当時はすっかりこの映画の虜になったものでしてこの続編には並々ならぬ期待を寄せていました。
しかし、その一方ではこの二年の間に数々の映画出演を果たし軒並みヒット作となる程の快進撃を続けるすずちゃんのみならず野村周平、真剣祐、松岡茉優上白石萌音等などすっかり人気俳優/女優となった面々が久しぶりに『ちはやふる』に戻った際、前二作の様な瑞々しさをどの様に表現するのであろうか?という点が非常に興味深かったです!
しかし、そこは皆さん素晴らしい演技。
まるで自分のホームに帰ってきたかの様な生き生きとした演技力でもって見る人を魅了させてくれます。

まず本作は二年振りの新作です。
そして前二作では一年生だった千早ら瑞沢高校カルタ部は三年生となります。
そうです、リアルタイムに年を重ねている所が面白いところです。
そして彼らにも後輩が出来ます(二年生時の部活勧誘では千早が張り切りすぎて引いた新入生は誰も入部しなかったそう)
その新入生というのがなかなか曲者で生意気なヤツなんです。
カルタ経験者故のプライドがあり、先輩達をともすれば見下してしまう鼻持ちならない新入生に千早達も翻弄されてしまいます。
しかし、団体戦から身につけていく彼の人間的成長など見所は十分でして嫌悪感を抱きがちなキャラクターでありながらもどこか共感性を持たせてくれます。
もう一人の新入生はカルタに全く興味がないのに太一(野村周平)に一目惚れし、入部する女の子なのですが、彼女の心理描写も良かったです。
部員中唯一のカルタ末経験者である彼女が初めて大会に出場する際の精神的動揺であったり大江さん(上白石萌音)から恋の詩の説明を聞いた際の繊細な表情などが印象的。
ただ、ストーリー上仕方ないのですが、太一とのシーンがどうにもスウィーツ映画っぽくなったのはややしんどかったですね。

そして何より本作のハイライトとも呼べるのが太一なんですよね。
高校三年生ともなるといよいよ進路を決めなければなりません。
かるたに専念していた瑞沢高校カルタ部の面々も例外ではありません。
ひたすらかるたの事だけを追求し、進路を「クイーン」と書いてしまう千早の一方、太一は学業とかるたの両立に揺れます。
しかし、そんな中賀来賢人演じる天才・周防久志と出会います。
周防の姿を通して太一は何を吸収するのか、また瑞沢高校かるた部にどの様な影響を生むのかは本作の注目ポイントと言えます。

また、かつての盟友・新(真剣祐)が起こす動きも見逃せません!
千早達と離れ福井ではかるたと距離を置いていた新が遂に動き出します。
千早達にとっての強力なライバルとして立ちはだかる新率いる藤岡東高校かるた部との戦いには力が入る事間違いないでしょう!

また、本作では笑い所もかなり押さえてありまして、新と清原果那演じる伊織のやり取りは天丼の手法(お笑い用語で一度使ったギャグを時間を置いた後、みたび繰り返す手法)を用いながら中毒性の高い笑いを生み出してくれます。
映画で挿入するコメディパターンとしては絶妙なので病みつきになるでしょう。

その一方でやはり乗りきれなかった部分はあるので簡単にまとめておきますが、まずひとつに前述のスウィーツ恋愛要素ですかね~、いやわかるんですよ。
イケメンの太一との恋模様を描くには不可欠な場面である事は。
しかし、あのシーンだけ妙に浮いてる感があるんですよね。
どこを取ってもスウィーツ描写になってしまってそれを受け付けない層にはきつかったんじゃないですかね。

それから大会の度に駆け付けるマスコミ陣。
昨今の藤井フィーバーばりの過熱報道がどうも胡散臭いのですよ。
その点で言えばニコ動的な字幕スクロールもそうですね。
あくまで大会の盛り上がりぶりや注目度を表現したいのでしょうけどかえってチープにしてる様で冷めてしまうんですよね~。

ちなみにダメ出しは嫌いでケチをつけたいから言ってるわけではないですよ。
映画全体は良かったのにそこさえなければという愛ゆえの苦言とご理解下さいませ。
この作品に限らずですけどね。

それはさておき『上の句』『下の句』を見た方はもちろん、見てない方は前二作を鑑賞の上、見る事をおすすめします!
青春映画の真骨頂ともいえる良作である事は間違いないと断言しますよ!

北の桜守

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女優・吉永小百合の120作目となる映画出演作で、吉永主演の「北の零年」「北のカナリアたち」に続く「北の三部作」の最終章に位置付けられるヒューマンドラマ。吉永と堺雅人が親子役で共演し、「おくりびと」の名匠・滝田洋二郎監督が、戦中から戦後にかけて極寒の北海道で懸命に生き抜いた母と子の約30年にわたる軌跡を、ケラリーノ・サンドロヴィッチが演出を担当した舞台パートを交えながら描いた。1945年、樺太で家族と暮らしていた日本人女性・江蓮てつは、ソ連軍の侵攻によって土地を追われてしまう。夫が出征し、息子を連れて北海道の網走にたどり着いた彼女は、過酷な環境や貧しさと戦いながら息子を必死に育て上げる。71年、てつの息子・修二郎はビジネスで成功を収め、15年ぶりに網走を訪れる。たったひとりで夫を待ち続け、慎ましい生活を送っていた年老いた母の姿を見た修二郎は、母を引き取り札幌で一緒に暮らすことを決めるが……。
(映画・com より)

すっかりシネコンも春映画公開で賑わってますね。休日のシネコンは学生や家族連れの姿で朝から大盛況でして、2月のあの落ち着いた雰囲気が懐かしくも感じます。
そんな中、春休みとは全く無関係であろう本作。
客層の中心はもちろん人生の大先輩の皆様方でした。
劔岳-点の記-』(2009)や『あなたへ』(2012)、山田洋次監督作の『小さなおうち』(2014)、『母と暮らせば』(2015)等過去にも同様の客層の作品は数々見て参りましたけど好きなんですよね。
これぞ日本映画!という感じで。

実はこれまで「北の三部作」は全く見ていませんでした。
三部作と銘打ってるという事はこの『北の桜守』、過去の「北の~」シリーズを見ないと話しが繋がってこないのかなと思い『北の零年』、『北のカナリアたち』を鑑賞。
しかし、全く別々の作品になるのですね。
勉強不足なワタクシではございますが、いずれも素晴らしい作品でした。
その意味では収穫でした。オススメですよ!

それはさておきこちらの『北の桜守』ですが、序盤から突っ込みドコロが。
1945年の樺太から始まるのですが、吉永小百合さんと阿部寛さんが夫婦役。
しかも小学生くらいの息子が二人居るんですよ。
設定としては30代という事です。
しかしいくら吉永小百合さんが実年齢より若くて美しいとは言えあまりにも違和感が拭えず阿部さんが息子、息子役の二人が孫に見えてしまいまして、まずそこに乗りきれない自分がいました。
余談ですが三部作の『北のカナリアたち』で里見浩太朗さんと吉永小百合さんが父子ですからね、こういうのは小百合映画あるあるで突っ込むのが野暮なのでしょうか(笑)

そして重要な場面を舞台演劇として上演する手法を取り入れております。
そこが評価の別れるところであり、文化的素養を問われる演出だと思うのですが、私的には少々しんどかったです。
ミュージカル映画が割と好きなので本来であれば受け入れる事が可能ではあるのですがいかんせん重厚感のある作風。
そこに舞台演劇場面が挿入される事によっていちいち集中力が削がれてしまうんですよね。
実写場面が良かっただけにそこが勿体ない印象でした。
後、現代パートである1971年のシーンでは篠原涼子さんが堺雅人さんの妻役として登場します。
しかし、これまた実年齢より若めの役どころなのでしょうね、どうしても若作り感が目についてしまうんですよね。
父親が中村雅俊さんというのもミスマッチな感じでした。
また、帰国子女という設定でしたが、英語の発音はあれで良かったのでしょうか?
しかし、他方ではそろばんを知らないというやや天然な姿も見る事が出来、『ごっつええ感じ』の時の篠原涼子を知る身としては思わずニヤリとしちゃいました。

それにしてもこの滝田洋二郎監督の作品は現在(とされる時代)と過去のシーンを振り返る技法が秀逸ですね。
昨年『ラストレシピ ~麒麟の舌の記憶~』を見た時にも感じましたが、フラッシュバックさせる技法が上手いので見ている側もその時代の世界観に投影させる事が容易に出来ます。
件の舞台演劇場面がなければより良かったのですが。

堺雅人さんの演技は非常に見応えがありますね。
とりわけ印象深いシーンが成功者となった自身の元に現れた一人の貧相な男。
この人物からかつて少年時代にいじめを受けていたのです。
社会的成功者となり身なりの整った自身の前にいるこのみすぼらしい元いじめっ子がお金を貸してほしいと懇願します。
土下座をさせくしゃくしゃにした万札を拾わせるのですが『半沢直樹』を思い出す様な堺雅人の真骨頂とも言える名演が見られます。

その堺雅人演じる修二郎の経営するスーパーマーケットの描写は興味深かったですね。
当初はホットドッグをプッシュしていたのですが、
母・てつの作るおにぎりの商品化に乗り出します。
賞味期限が切れたら即廃棄処分する等徹底した品質管理とホットドッグ、おにぎりに見られるマーケティング戦略などコンビニ黎明期を非常にリアリティたっぷりに描いていたのが印象的でした。

北海道の景色も素晴らしく映画としての見応えは確かにあります。
しかし全体的に見れば「良い映画ではあるが、物足りない」という感は否めませんでした。
この感じ、どこかで味わった様な…と思ったら去年見た『追憶』の鑑賞後に同様の心境に至ったものです。
鑑賞から一年近く経過し、『追憶』がどんな映画だったかと言うとどうも思い出せないんですよね。
つまりはっきり言ってしまえば心に残りにくい映画という事になります。
題材、脚本、演出面は悪くなかっただけにそこが惜しいところです。

ドラえもん のび太の宝島

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国民的アニメ「ドラえもん」の長編劇場版シリーズ38作目。ドラえもんひみつ道具「宝探し地図」を使って宝島を探していたのび太は、太平洋上に新しく出現した島を発見。ノビタオーラ号と名付けた船で島に向かうが、その途中で海賊に襲われ、しずかがさらわれてしまう。海賊に逃げられた後、宝島の秘密を知る少年フロックとオウム型ロボットのクイズと出会ったのび太たちは、しずかを助けるために宝島を目指すが……。人気俳優の大泉洋が、のび太たちを襲う海賊船の船長シルバーの声優を務める。監督はテレビ版の演出を手がけてきた今井一暁。脚本を「世界から猫が消えたなら」などで知られる映画プロデューサーで小説家の川村元気が担当。星野源が主題歌と挿入歌の2曲を書き下ろした。
(映画.com より)

さて、毎年春の恒例行事・大人おひとり様のドラえもん映画をして参りました。
思えば『のび太と緑の巨人伝』(08)以来毎年見ております。
ドラえもん映画を見ると春の到来を感じるんですよね~。
最近ではレイトショーでも上映したりと大人のドラ好きの要求にも応えてくれてるので助かってます(笑)

そんなドラえもん映画の最新作『のび太の宝島』ですが、いや~、良かった!
正直去年の『南極カチコチ大冒険』は私個人としてはすっきり出来なかったというか消化不良感が否めなかったんですよね。
しかし、その点今年は私の期待を大きく上回る出来となっておりました。天晴!!

水田わさびドラえもんとなって随分経ちますが大山のぶよ時代のリメイクと純新作が毎年程好く作られていました。
しかし、昨年の『南極カチコチ大冒険』に続いて本作は新作です。
しかも脚本には川村元気が関わっているというあたり東宝の本気を感じさせます。

実際ストーリーは非常にシンプルでありながらも大人へも訴求する様なメッセージ性の強いものでした。
とりわけ印象深かったのが敵キャラですね。
ドラえもんの映画と言えばそのポップな作風に反して屈強で闇を抱える悪役が登場するのが特徴的です。
そんな悪のベールをまとった敵キャラが世界征服、宇宙侵略、人類殲滅等を目論んでのび太達の前に立ちはだかってきました。
しかし、本作の敵キャラはこれまでのドラえもん映画で見られた禍々しい暗黒キャラではなく我々と同じ人間です。
そして自分の子供達を愛する良き父でもあるのです。
本作で起こす暴走もある事実を知る事により子供達を守ろうと取った行動から引き起こすのです。
動機は純粋しかし、そのやり方を間違ってしまうが故に大混乱を招いてしまうのです。

そんな誰の身にも起こりうる事象をこのシルバーという男のフィルターを通して描いているのが印象深いです。

人間の本質的な面を彼の取る選択から写し出し我々に問題を提起させる辺り本作の奥深さそして川村元気の脚本力に感嘆するばかりです。

続いて面白かったのが本作でのドラえもんの位置付けです。
いつも秘密道具を出してくれる頼りになるドラえもんですが、本作ではいじられキャラに転化。
というのものび太達と共に戦うフロックという少年です。
彼は頭脳明晰でコンピューターの操作はお手の物。
実は彼、両親共に優秀な科学者であり、技術者であったりでその偉大な遺伝子を受け継ぐのですね。
作中では彼の天才ぶりが次々に発揮されドラえもんが霞む程なんですよ。
するとドラえもんが一気に愛らしいだけの猫型ロボットになるんです。
フロックの相棒のロボット・クイズからはタヌキなんておちょくられるしのび太ジャイアンスネ夫もいじる側に回っちゃったり(笑)
そしてそれによって気付くんですよ。
ドラえもんってめっちゃ可愛いやん!(笑)って。

また、前述のオウム型ロボット・クイズがいい味出してました!
このクイズ。
自分が言いたい事は全てクイズにしてしまうんですよ。
危機的な状況でもクイズの出題で答えるものだからやきもきしてしまうのですが、それによって映画のストーリーを追う以外の楽しみを生み出してました。
それはクイズに参加するということ。
パンフレット内にもこのロボット・クイズからの出題が盛り込まれていたりでそういう試みはお子様も思わずニンマリではないでしょうか。

続いて遊び心を感じたのはのび太の部屋。
ドラえもんのび太の会話のバックには八頭身でスタイルの良いドラえもんポスター!
更にドラえもんが寝る押し入れには「金曜7時ドラえもん」なんてちゃっかりレギュラー放送の番宣してたり(笑)
でも憎めないんですよね。
余談になりますが昔の『こち亀』で背景にアグネス・ラムや太田裕美へのファンメッセージがあったりスタッフ間のやり取りを背景の黒板にさりげなく書いてたりとか僕好みの演出です(笑)

それから昭和から続くドラえもん映画の時代の変遷とでも言うのでしょうか平成版わさびドラえもんとしての変化も面白かったです。

夏休みのある日いつもの空地で宝島がこの世に実在するというのび太
もし見つからなかったら鼻でカルボナーラを食べると言うのです。
「鼻でスパゲティを食べる」、「目でピーナッツを噛む」などの体を張ったホラを吹くのはのび太の十八番ですが、ここに来てカルボナーラというスパゲティの品目が出ましたよ。
のび太の恐竜』の1980年当時ならスパゲティで良かったのでしょうが、2018年の『のび太の宝島』ではカルボナーラとより具体性を強めてきましたからね。
それによって厚みが出た様な気がします。
それから最近はレギュラー放送を見ないから気付かなかっただけかもしれませんが野比家のテレビってブラウン管から薄型に変わってるんですね。
国民的アニメにも時代の流れが!なんて感動したりしています(笑)

それから本作てのジャイアンスネ夫はカッコいい!
ジャイアンが再三男らしさという言葉を口にしてるので本作ではそんな彼らの男っぷりも見逃せないポイントですよ!


まだまだ見所たっぷりなドラえもん最新作ですが、大人も子供も楽しめるアドベンチャー大作です!
星野源の主題かもキャッチーでお子様にもきっと受けてるのでしょうね。

空海-KU-KAI- 美しき王妃の謎

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弘法大師としても知られる真言宗の開祖で、遣唐使として中国に渡った若き日の空海を主役に描く、日中合作の歴史ファンタジーミステリー。夢枕獏の小説「沙門空海唐の国にて鬼と宴す」を原作に、「さらば、わが愛 覇王別姫」「始皇帝暗殺」の名匠チェン・カイコーがメガホンをとり、主人公の空海を海外作品初挑戦となる染谷将太が演じた。8世紀、遣唐使として日本から唐へやってきた若き僧侶の空海が、詩人・白楽天とともに首都・長安を揺るがす巨大な謎に迫っていく。空海の相棒となる白楽天を中国の人気俳優ホアン・シュアン、物語の鍵を握る楊貴妃を台湾出身のチャン・ロンロンが演じるほか、日本から阿部寛松坂慶子らが参加している
(映画・com より)

現在公開中の『マンハント』もそうですが、日中合作の作品が今年に入って続いてますね。
日本と中国。
政治や思想面では相入れない両国ですが、文化を通し、お互いの良い要素を出し合い作品を作るスタンスは素晴らしいです!
今後もこういった作品が作られ続けるのは良い傾向だと思います。

話題の歴史大作『空海 KU-KAI 美しき王妃の謎』。
題材が題材だけに圧倒的に中・高年以上の客層。
その中で久しぶりに親孝行をと思い、父親と一緒に鑑賞して参りました。

まずは目を見張るのは唐の都・長安を再現したセット。
150億円を投入した東京ドーム8個分という広大な面積を誇る豪華なセットとあって実に美しい!
9世紀の長安は恐らく作中の様なきらびやかな街であったであろうと思わせるその壮大なセットには思わずうっとり。
そして夜な夜な繰り広げられる宴の描写がまた見事でして『グレイテスト・ショーマン』のオープニングにひけを取らない色彩豊かな光景はまさに豪華絢爛です!


また、作中に登場するCGも見応えタップリ!
作年末『DESTINY 鎌倉ものがたり』を評した時、山崎貴監督作品のCG /VFXの技術を大絶賛しました。
いや、もちろん素晴らしいですよ!そこは強調します。
しかし、世界規模で見た時ハリウッドの技術が郡を抜いとるのは言うまでもありませんが、中国にも劣る。
日本はまだまだ映画の映像技術においては追い付いていないなという印象はあります。

と、この様に映像面でのクオリティは抜きん出たものがありますし、それだけでも見る価値があります!
映像は素晴らしいんです、ホント映像は!

しかし、一転すると映像「は」素晴らしいという誉め言葉は映像「しか」取り柄がないという事でもあります。

お察しの皆さん、ここからは僕のガチな評です。
この映画を見てメチャクチャ良かったと大絶賛した皆さん、ごめんなさい。はっきり言って内容は見事に悪い意味で斜め上を行っており、僕の感性には全くそぐわないものでした。いや、厳密に言えば日本公開版の上映方式やタイトル等について私は大変残念に感じていますのでそこを強調してお伝えします。

まず本作は染谷将太が中国語を習得し中国語で演技をしています。
予告編でも中国語を話す染谷空海がフィーチャーされておりました。
しかし現在公開されてるものは日本国内においてはすべて吹替版との事です。

何でやねん!!

字幕版と吹替版で公開して好きな方を見れる様にした方がよかったのではないですか?
とりわけ染谷将太のファンの方とかは中国語を話す染谷さんを見たかったのではないでしょうか?

中国語の上に日本語で吹替をしてしかもそれが演じてる本人なもんだからどうにもちぐはぐな感じがしてそれが見ていて違和感ありあり正直気持ち悪かったです。

それから本作を空海の伝記映画だと期待して見ないで下さい。
その期待を抱いて鑑賞をしたらえらい事になりますよ(笑)
というのもこの作品、黒猫の話しです。

もう一回言います、黒猫の話しです。

空海は白楽天とペアを組んで楊貴妃の死の謎解きに挑み、その中で重要な存在になるのが件の黒猫なのです。
従って私はこの作品をこう呼ぶ事にしました。

『名探偵空海』と。

空海が仮にシャーロック・ホームズとするならば白楽天は助手のワトソン氏です。
そう、これは『相棒』や『探偵はBAR にいる』シリーズにも通じるバディもののサスペンス作です。
なんて視点で途中から見直したらなるほど、見れなくはない。
それなりに楽しむ事は出来るんですよ。

しかし、それならそれと最初からわかりやすいタイトルをつけてもらわないと困ります。
中国語の原題はいいんですよ。
『怪猫傳』ですから。
問題は日本版の方ですよ。
『化け猫物語』とかじゃ入らないと踏んだのでしょう。
空海』ですもん。
そりゃ歴史大作を期待する人にはそそられるかもしれません。
日本史の教科書で最澄とセットで覚えたであろう空海
高野山真言宗を開いた空海
弘法大師と呼ばれるあの空海
唐に渡りどの様な修行をし、どの様に悟りを開いたか客席の7割くらいを埋めてたお爺ちゃん、お婆ちゃんは期待してたハズですよ。
ところがどっこい猫が喋るわ空海が妖術を使うわ奇妙奇天列摩訶不思議変幻自在の妖怪アドベンチャー!!!
っておい!
空海の伝記見せてくれよ~
そんなんいいよ~

と年金でシネコンに足を運んだ全国のお年寄りを裏切らないで下さい。
はっきり言います!
タイトルで釣るのはやめてください。

『化け猫物語』ならそれはそれでいいんですよ、面白ければ。
ただ歴史大作と銘打って『空海』というタイトルをつけてるのであれば空海物語を見せて下さいよ!

は~、疲れた…。
なのでこれからご覧になられる皆さん。
本作はサスペンス、妖怪アドベンチャー、ファンタジーとして見る事を推奨します。
鑑賞上の注意をよく読んで正しくご覧下さい。