きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

すばらしき世界

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「ゆれる」「永い言い訳」の西川美和監督が役所広司と初タッグを組んだ人間ドラマ。これまですべてオリジナル脚本の映画を手がけたきた西川監督にとって初めて小説原案の作品となり、直木賞作家・佐木隆三が実在の人物をモデルにつづった小説「身分帳」を原案に、舞台を原作から約35年後の現代に置き換え、人生の大半を裏社会と刑務所で過ごした男の再出発の日々を描く。殺人を犯し13年の刑期を終えた三上は、目まぐるしく変化する社会からすっかり取り残され、保護司・庄司夫妻の助けを借りながら自立を目指していた。そんなある日、生き別れた母を探す三上に、テレビディレクターの男とプロデューサーの女が近づいてくる。彼らの真の目的は、社会に適応しようとあがく三上の姿を番組で面白おかしく紹介することだった。まっすぐ過ぎる性格であるが故にトラブルの絶えない三上だったが、彼の周囲にはその無垢な心に感化された人々が集まってくる。
(映画.comより)

先日取り上げた『ヤクザと家族 The Family』そして本作。
共通して言えるのは裏社会で生きた男の堅気としての生き方であり、同時に彼らを受け入れる寛容性について問うというものです。
西川美和監督と言えば2016年に手掛けた『永い言い訳』で夫婦のあり方をリアリティーたっぷりに描き映画ファンの間でも大きな話題を呼びました。
僕もこの作品は当時劇場で鑑賞し、そのストーリー展開の秀逸さや登場人物の感情の機微を非常に生々しく伝え、かなりの衝撃をおぼえたものです。
そんな西川監督が裏社会で生きたこの三上という男をどの様に描き、そして我々に何を投げ掛けてくるのか僕も公開前から楽しみにしていた作品です。

結論から言えば前述の『ヤクザと家族』とはまた違う形での社会風刺と寛容性の是非を巡る問いかけは今の時代にこそ見るべき作品であり、僕の心にも大きな余韻を残してくれました。

本作の主人公・三上を演じたのは日本を代表する名優・役所広司さん。
これまでにも数々の役に挑み高い評価を得てきた役所さんのアウトロー役はこれまたハマっており、50代半ばで出所し、生きる道に奔走する不器用な男をその名演技で魅了してくれました。
とりわけ毎ある事に発せられるドスの効いた恫喝シーンはこれまでの役所さんのイメージとは異なる面があり、意外性はあるものの迫力たっぷりです。
そんな不器用な三上が社会復帰をする為に就活をしたり運転免許を取得する為に教習所へ通ったり。
しかし、我々が当たり前の様に送る日常生活が彼にとっては非常に困難であり、トラブル回避の感情コントロールもままならない。
しかし、次第に彼の理解者も現れ社会復帰が実現するかと思いきや、うまくいかないんです。

それは本人の問題ももちろんあるんだけど周囲の目という大きな壁。
更に生活保護等日本の福祉制度においての法的困難もあったり。

だけどそれでも社会に溶け込もうとする三上の姿にいつしか僕も心を打たれ、応援したくなるんですよね。

それにしても社会って何だろう?
税金を納め家族を守り、労働をする。
そこには他者との共同生活で要求されるルールを守るとか迷惑を掛けないとか当たり前だけど社会で生きるにはいざこざなんて起こしちゃいけないんだよね?
だけど町で市井の人が襲われてたらスルーするものなの?
職場内にいじめがあったら黙認するのが大人?
騒音を発し、ゴミの分別もしない共同生活のルールを守れない人を注意しないの?

触らぬ神に祟りなしとか当たらず障らずトラブルを起こさない様、目立たない様に暮らせば自分に火の粉は降りかからなくとも誰かが困っている事だってありますよね。
三上が暴力的になるきっかけって実は社会の中での不条理に対してであって動機自体は間違った方向ではないんですよね?
ただ、感情のコントロールが効かずその結果取り返しのつかない過ちを犯してしまうわけであって。
実はこの映画って出所した人への寛容性を問うと同時に社会とは?とか大人とは?といった普遍的なテーマを大きく扱っているんですよね。
それが見ている人へ強く訴えかけてくるんですよ。
また、社会復帰を目指す男を好奇の目でカメラを回すテレビ局への風刺とも取れる描写は印象的でした。
僕は社会の片隅であえぐ人を写し出すドキュメンタリー番組はよく見ます。
彼らの生活の実態や何故今の生活を余儀なくされているのかを注視し、自分への戒めにしたりするわけですが、でもこれって人によっては好奇の眼差しで見たりするわけじゃないですか?
報道のあり方としてはこういった生活に身を置く人を写し出す事で社会へ強いメッセージを投げ掛けるべくその使命を追って番組を製作している事だとは思いますが、しかしその一方、如何に視聴者に興味深く関心を集める事が出来るかの面白おかしく煽る報道をする傾向だってあるわけですよね?
そんな報道のあり方に一石を投じた様なメッセージ性も感じましたね。

さて、この映画ですが、僕の心を強く捕らえたのはやはり救われないラストシーンでした。
一歩ずつ社会との繋がりを持ち歩き始めた三上にどこまで神様は残酷なんだろう?
でもね、僕はこのラストだからこそ映画全体の深みをより強めたという印象でしたね。
少年時代から不遇な生い立ちを歩み、手のつけられない不良少年から裏社会へ。
服役後、人生の再スタートを不器用なりに歩んだ彼の人生の無情感が溢れていました。
そして彼の生きた世界に広がる空の光景。
これを写し出す事で物語の終結と共に生きるとは何かを我々に強く投げ掛けていた様でもありました。
儚くも美しい一人の男の物語。
強くオススメします!

樹海村

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「犬鳴村」に続き、実在した心霊スポットを題材に描く「実録!恐怖の村シリーズ」第2弾。自殺の名所として世界的にも広く知られる富士の樹海を舞台に、インターネット上の怪談スレッドで「絶対に検索してはいけない」と語り継がれる通称「コトリバコ」と呼ばれる呪いの箱と、樹海がもたらす負の引力によって巻き起こる狂気と混沌を描く。かつて人々を戦慄させた、古くから伝わる禍々しい強力な呪いが、富士の樹海の奥深くに封印された。それから13年後、樹海で行方不明者が続出する事態が起こり……。主演は「ジオラマボーイ・パノラマガール」「名も無き世界のエンドロール」の山田杏奈と、「相棒 劇場版IV」「僕に、会いたかった」の山口まゆ。引きこもりがちで、なぜかコトリバコの秘密を知っているらしい天沢響を山田が演じ、不可解な発言をする妹の響に嫌悪感を抱く活発な姉・天沢鳴を山口が演じる。そのほか安達祐実原日出子工藤遥神尾楓珠らが共演。前作から続いて清水崇監督がメガホンをとった。
(映画.comより)

かつて『リング』シリーズや『呪怨』等日本のホラー映画が一世を風靡した時代がありました。
とりわけ『リング』からは貞子がホラーアイコンとして注目を集め、日本のホラー=貞子という図式が定着したものです。
しかし、その後約二十年間に渡りホラー映画受難の時代が続きました。
かつてのホラーブームよ再びとばかりに数々のホラー作品を制作するもなかなかヒットには恵まれない。
人気シリーズであった『リング』から貞子を一人立ちさせ、貞子を大々的にフィーチャーした映画だってありましたが、なかなかかつての様なヒットには至りませんでした。
しかし、発想の展開で日本の心霊スポットや都市伝説として語られるホラースポットに着目し、ホラー×地域を打ち出し成功させたのが昨年の『犬鳴村』。
都市伝説やオカルト好きからは非常に名が知れた福岡県の心霊スポットを一躍全国区へ広めたのも記憶に新しいところです。
更に昨年夏にヒットさせた『事故物件』はこれまでありそうでなかったいわくつきのアパート・マンションの一室いわゆる事故物件にフォーカスし、大ヒット。
まだまだホラーもいけるという事を世に証明しました。
その上での本作。
『犬鳴村』に続く村シリーズの第二弾は誰もがその名を知ってるが、今尚多くの謎に包まれている富士の樹海を舞台に数々の恐怖体験が登場人物を襲う王道のホラー作品です。

まずお伝えしておきます。
『犬鳴村』を楽しめたかどうかで本作の評価が変わるかな。
というのも映画のつくり・プロットが『犬鳴村』とほぼ同じなんですよね。
冒頭で一人のユーチューバーが興味本意で樹海に来てカメラを回すなんてのもそうだし、その後の展開に関しても良くも悪くも『犬鳴村』。
いわくつきの集落での過去の忌まわしき習慣を扱う辺りなんて既視感ありありで「あれ、これ犬鳴村じゃないよね?」なんて困惑しましたもん。
しかし、おどろおどろしい映像の数々や人間の醜悪でありながらも誰しもが抱える生々しさと気持ち悪さを秘めたオカルトへの関心への訴求はさすがだなと感じました。
これは『呪怨』の時から一貫してぶれてないですよね。
割と前半部ある人物が車に轢かれるシーンなんかは確かに絶句しましたもん。
その他にも数々の目を覆いたくなる様なホラー映像の数々にさながらお化け屋敷体験が出来る惜しむらくは夏に見たかったなと思いました。

この上なくB級ホラーのエッセンスがホラー好きには響く内容かなと思います。
主要キャスト以外でも安達祐実原日出子國村隼塚地武雅等が名を連ねています。
國村隼さんの約どころなんかはかなり謎が多いですね。
樹海の事をよく知ってる地元の人っぽいけど結局よくわからなかったし、塚地さんなんかはある意味お約束なポジションだった。
ただ、ストーリーに関して言えば少々乱雑さが否めませんでしたね。
登場人物が多すぎて整理がしづらい所もありましたし、もう少しコンパクトにまとめてもよかったかなと思います。

さて、そんな本作のテーマ。
それは「人はいつ死ぬかわからない」でしょうか。
これは國村隼さん演じる件の謎の人物から発せられます。 
富士の樹海と言えば我々はやはり自殺という言葉を連想します。
実際、この映画でも自殺者云々なんて言葉はよく飛び交ってますし、実際の樹海だってそういう場所なのかもしれません。
しかし、自殺は自らがその命を絶つという事である一方、不慮の事故による死はいつどこで誰に降りかかるかわかりません。
そしてその可能性は誰にだってあるという事。
この映画ではホラー映画特有の「呪い」という文言を大きく打ち出しつつも交通事故・放火による火災・古井戸に落ちての衰弱死等思わぬ所から遭遇する事故死が多く描かれています。
呪いの箱というわかりやすいアイテムを用いる事でストーリー的に広げやすいという側面ももちろんあるでしょうけど、同時に誰にでも遭遇する可能性のある事故死への示唆という目的もあったのではないかと思います。

そして昭和の初めまであったとされる忌まわしき因習なんかは差別への問題提起ですよね。
差別という問題は古今東西あらゆる面にあり、つい最近も一人の政治家の問題発言が国際的な場面で物議を醸しましたよね。
これから益々グローバルな時代へと突入する中、差別というのが如何に古臭くそして低俗なものであるかホラー映画という媒体を通じて見ている人へ投げ掛けている様でもありました。

さて、そんな社会性も秘めているこの映画。
ラストシーンも非常に気になるつくりでした。
これは次シリーズへの導入か、はたまた?
最後まで目が離せない究極のホラーエンターテイメント!
あなたもこの目で刮目せよ!

劇場版美少女戦士セーラームーン Eternal 後編

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武内直子の人気コミックをテレビアニメ化し大流行となった「美少女戦士セーラームーン」の25年ぶりとなる劇場版で、原作コミックの第4期にあたる「デッド・ムーン編」を映画化した前後編2部作の後編。武内直子を総監修に迎え、「美少女戦士セーラームーン Crystal」の第3期「デス・バスターズ編」に続いて今千秋が監督を担当、「美少女戦士セーラームーン」「美少女戦士セーラームーンR」のキャラクターデザイン・作画監督を務めた只野和子がキャラクターデザインを手掛ける。今世紀最大の皆既日食が迫る中、ゴールデンクリスタルの封印を解く“乙女”を探すペガサス・エリオスに助けを求められたうさぎとちびうさちびうさとエリオスの淡い初恋と、戦士として、1人の人間として悩み、迷いながら成長するセーラー戦士たちの姿を描き出す。人気声優・松岡禎丞がエリオスの声を演じるほか、お笑いタレントの渡辺直美、女優の菜々緒がゲスト声優として参加。
(映画.comより)

25年振りの『セーラームーン』の劇場版後編です。
前編鑑賞後の熱意溢れるレビューは先月お届けしたところでこの後編への期待は並々ならぬものがありました!
ところが映画動員ランキングではトップテン入りを逃すというショッキングな結果に!
しかし例え世間が『セーラームーン』に冷たくとも俺は見捨てないぞとばかりに先日雪降る中、MOVIX日吉津で鑑賞して参りました!

前編のラスト~予告への流れがあまりに引き付けられその熱意を抱き本作を鑑賞!
期待通りの白熱するアクションシーンやストーリー展開・更にキャラクター祭りとばかりに登場する懐かしい顔触れにとにかく感動もひとしおでした!

そしてデッドムーンサーカス団の過去が明るみになるとよりストーリーがドラマチックになり、見る人を作品世界へと引き込んでいきます。

だけどどうだろう?
見る前の期待値があまりに高過ぎたからか或いは正直中弛みとなってしまったシーンがあるからか後半になればなるほど僕の熱量が次第に緩やかになっていくんですよね。
映画が面白くない事はない。
いや、むしろ楽しんでいるのだが何で?

その答えは簡単。
前・後編に分けずに一本で完結出来る内容なんですよね。
前編の方は懐かしい面々が揃い往年のファンへのサービス要素が非常に強かった!
それでいてデッドムーンサーカス団の怪しさがセーラー戦士達を惑わせ陥れていくまでのシナリオは確かに完璧でした。
それでいて後編への橋渡しまでは完璧でしたよ!
そしてそれを受けての後編は確かに前半こそ盛り上がりがあるもののそれが持続出来ていない。
無理に一本の映画の上映時間に合わせるべく尺稼ぎなきらいが否めなかったのが僕の印象ですね。
前・後編の合計上映時間でも170分程度ですよね。
海外映画だと二時間半なんてザラですからね。
20分程度削れば何とか収まったのではないでしょうか?
しかし二時間半の映画なんて子供の集中力という面で不安…となれば更に絞り込んで115~120分程度にまとめるのがベストだったかもしれません。
特に削るべきとしては後編からかな?
つまりはそれくらい後編は不要なシーンが目立っていたんですよ。

前編が良かっただけにそこが勿体ないと感じましたね。
くれぐれも誤解しないで頂きたいのが決して悪かったわけではないですよ。
むしろここ最近見たアニメ映画の中でも良かった方ですよ。

それに今回の劇場版セーラームーンは久しぶりにセーラームーンとの再会が出来た!
俺の人生の中ではすっかり過去のものとなっていたのに記憶を呼び戻してくれました。
この先セーラームーンの映画が制作されるかはわかりませんが、中学生の時の気持ちに還る事が出来ました!
ありがとう、セーラームーン

ヤクザと家族 The Family

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「新聞記者」が日本アカデミー賞最優秀作品賞に輝いた藤井道人監督が、時代の中で排除されていくヤクザたちの姿を3つの時代の価値観で描いていくオリジナル作品。これが初共演となる綾野剛舘ひろしが、父子の契りを結んだヤクザ役を演じた。1999 年、父親を覚せい剤で失った山本賢治は、柴咲組組長・柴崎博の危機を救う。その日暮らしの生活を送り、自暴自棄になっていた山本に柴崎は手を差し伸べ、2人は父子の契りを結ぶ。2005 年、短気ながら一本気な性格の山本は、ヤクザの世界で男を上げ、さまざまな出会いと別れの中で、自分の「家族」「ファミリー」を守るためにある決断をする。2019年、14年の出所を終えた山本が直面したのは、暴対法の影響でかつての隆盛の影もなくなった柴咲組の姿だった。
(映画.comより)

ヤクザ映画。
かつては日本映画の主流…とまでは言わないまでもかなりの作品が量産されておりました。
しかし、昨今はやはりコンプライアンスの問題もあるのでしょう。
ヤクザを描くにしても徹底した悪役として登場させ報われない最後を遂げさせる或いは逆手に取るかの様にとにかくコミカルに描きヤクザ特有の血生臭さを抹消させるか。
そんな印象があります。

ではこの作品はどうであったか?
ヤクザの栄枯盛衰を一人の男そして組という組織を写し出し、我々に問題提起をするかの様な作品でした。
そしてこれは少なくとも2021年の邦画では非常に重要な文脈で語られるであろう大作となっています。

まずは1999年。
一人のヤンキーがヤクザの組へ転がり込んでくる描写。
ヤクザというものにも勢いがあり、飲食店での暴力沙汰も日常茶飯事。
登場してくるヤクザもとにかくギラギラしてるわけですよ。
綾野剛演じる山本もまた血気盛んだし、舘ひろし演じる柴崎組組長もオーラが半端ない!
綾野剛さんは『新宿スワン』等でアウトロー社会の人物を演じておりましたので、バッチリハマる役ですが舘ひろしの貫禄ですよ!
画面越しでもそのオーラは伝わりますし、何ともハードボイルドな出で立ちとダンディズムが魅力的!
で、このギラギラ感が後の時代との対比で非常に活きてくるとはこの時は思いもしませんでした。

2005年。
柴崎組で実績を積んだ山本も立派なヤクザへ。
しかし、ある事件がきっかけで彼は逮捕。
その後刑務所での暮らしを余儀なくされるわけです。
ここで印象的なのは銃撃事件。
山本と柴崎の乗る車が銃撃されるのですが、その後の山本を追った長回しです。
銃撃後、命からがら車から逃げ出す山本。
焦燥しきった山本の表情を写し出し彼の視線の先にあるショッキングな映像を捉えていく。
これにより見ている側へ事件に対する衝撃とやりきれない顛末を伝えていくのです。
そしてこれが山本の人生を大きく狂わせていくのですが、このシーンが挿入される事によって非常に重いメッセージを投げ掛けてくるんですよね。
ここではヤクザの無慈悲な実態を浮かび上がらせると同時に彼らが生きた最後の時代でもある事を象徴する様でもあり…。


そして14年の刑期を終えた後です。
暴対法の施行によりヤクザの生き場所は失われ、往時の様なギラつきも当然なくなります。
柴崎組も縮小され、あれほどオーラを放っていた柴崎組長も病に冒され余命いくばくもない状態。
かつての仲間も更正して家庭を持ち堅気で生きている。
山本もまた堅気となり愛する人と再会後、幸せな家庭を夢見て幸せを手にしようとした矢先に…。

と、極力壮大なネタバレをさせない様にあらすじを伝えたらざっとこんな感じ。
三つの年代に分けてヤクザを取り巻く状況を分かりやすく伝え、そしてヤクザとして生きれなかった男の人生を残酷な現実と共に描き出していきます。

ヤクザに人権なんて物はない。

そんな印象的な台詞も登場するし、事実彼らが社会的に与えた行為は決して許される事ではないでしょう。
しかし、一度ヤクザに手を染めた男達は更正して社会復帰する事は認められないのか?
例え堅気で生きても元ヤクザというレッテルで受け入れない社会でいいのか?

それを深く突き刺してくる様な作品でしたね。
また、直接ヤクザを家族として迎える事で仕事を失い子供にも被害が生じるそんな日本の社会に鋭いメスを入れる社会派作品として世に放たれた意義は大変強いものがあると思います。

ヤクザを決して賛美してはいけない。
どれだけ調子こいた奴であっても最後はむごたらしい死に方をさせると同時にどこかしら笑いも秘めさせる。
北野武監督の『アウトレイジ』シリーズではその手法でヤクザ映画のエンターテイメント性を打ち立てる事に成功させたのですが、本作の場合更正したヤクザとそれに関わった人を徹底的に突き落とす。
そのやりきれなさから我々が今一度ヤクザや半グレのあり方を巡って思考を巡らせる様なそんな作品だと思いました。

ヤクザ映画というものに対して抵抗を示す層も当然いるでしょうが、この作品は是非見て頂きたい!
ヤクザとは?
また、過去の過ちを許容する寛容性についてを問う非常に深い映画だったと思いました。

花束みたいな恋をした

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東京ラブストーリー」「最高の離婚」「カルテット」など数々のヒットドラマを手がけてきた坂元裕二のオリジナル脚本を菅田将暉有村架純の主演で映画化。坂元脚本のドラマ「カルテット」の演出も手がけた、「罪の声」「映画 ビリギャル」の土井裕泰監督のメガホンにより、偶然な出会いからはじまった恋の5年間の行方が描かれる。東京・京王線明大前駅で終電を逃したことから偶然に出会った大学生の山音麦と八谷絹。好きな音楽や映画がほとんど同じだったことから、恋に落ちた麦と絹は、大学卒業後フリーターをしながら同棲をスタートさせる。日常でどんなことが起こっても、日々の現状維持を目標に2人は就職活動を続けるが……。
(映画.comより)

久しぶりの恋愛映画ですね。
数々のヒットドラマを生み出した坂元祐二脚本そして『ビリギャル』や『罪の声』を手掛けた土井裕泰監督がタッグを組みメインキャストには菅田将暉有村架純を配した純愛ストーリーが誕生しました。菅田将暉君と有村架純ちゃんの共演は『何者』以来5年振りとの事です。

ドラマにしろ映画にしろ恋愛を題材にした物は数多あるわけですが、本作はかなりリアルなカップルが主役の作品。
というのもあらゆるサブカルチャーを愛するヲタク寄りな男女の恋愛なのです。
なんて言うと2011年の名作『モテキ』を思い出す方も多いでしょうが、ポップカルチャー全面にフィーチャーしていた『モテキ』と比べるとより濃さが増しているというか都会に住むディープな趣味を有する男女の出会いからの5年間をかなりリアルに描いていたのが印象的です。

終電を乗り過ごした二人がたまたま会話したところ、趣味があまりにも合いすぎ意気投合。
そこからデートを重ねて交際へ発展。
そんな展開出過ぎだろ!
なんて突っ込みたくもなるが俺はこの感じめちゃくちゃわかるのよね。
京都の二条駅前でストリートライブをしていた女の子に話し掛けaikoの話しで盛り上がり、即メルアド交換。
何度かのデートを重ねて交際へ発展してその後7年付き合った末別れたそんな恋愛を過去にしていたもんで、そんな元カノと出会った時を思い出してついつい感情移入しちゃいました(笑)
しかも、しかもよ有村架純ちゃん演じる絹ちゃんはミイラ好きでデートにミイラ展をチョイスするというマニアックぶり。

「何これ、俺めっちゃこういうコ好きやねんけど(笑)」
しかもこの辺も似た経験…ていうか前述の元カノ話しですが、彼女はめちゃくちゃ廃墟マニアでしてね。
日本全国の廃墟が載ってる写真集なんかを見せられましてね、以来私も廃墟を見るのが好きになってしまったわけですよ。

他にもひたすらファミレスのドリンクバーだけでめっちゃマニアックな話しで何時間も過ごしたりとかね。
今まで色んな恋愛映画は見てきたけどここまで自分の経験した恋愛とダブる作品もなかったです!

で、この作品の裏側にあるテーマ。
それは恋愛の始まりは終わりの始まりでもあるという何とも中島みゆきの『わかれうた』的恋愛観なんですよね。
二人が大学を卒業してしばらくフリーター生活をするのですが、この時が一緒に居て最も楽しい時間。
だけど現実的にはお金もないし、次第に現実という言葉が脳裏によぎる日々。
二人は就職をするのですが、そこから次第にすれ違いが起こっていきます。
これは実際の恋愛だってそうだし、こういったテーマを盛り込んだ映画は古今東西よく見かけます。

男は仕事に生き、それを彼女を養う為とか言いつつも彼女の想いに気付かずいや向き合おうともせずデートもしなければセックスもしなくなる。
そして元々はイラストレーターを目指すその夢の事も忘れ好きだったゲームや音楽の話しよりも仕事の話しばかりになる。
一方、彼女は彼女で多少給料が下がっても自分のしたい仕事を優先し前向きに生きるのだが、それすらも否定されてしまう。
どこで心がスレ違うのか渦中にいるとなかなか気づけないんだよね、こういうのって。

そして最終的に出す答えが別れになるんだけど何度も言う様に俺自身がこの作品に近い恋愛を経験してたからこのシーンでは昔を思い出して涙が流れてしまいました。
そして共通の趣味だったからこそ色々感じるわけなのよ。
東京事変の再結成を彼女はどんな想いで受け入れているのかな?」とか。
「別れて以降のM-1の優勝コンビをどう思っているのかな?」とか。
aikoが新譜を出す度にどんな想いで聴いているんだろう?とか。

…ってアカン、俺めっちゃ引きずってるやん!
もう8年経つのに(笑)

なんて公共の電波で俺の未練がましさを惜しげもなく披露してますが、つまりこの映画は俺に過去を蘇らせたわけですよ!

で、恐らくこの映画は過去に一度でも誰かと恋愛を経験した人であれば大なり小なり共感するんじゃないかな?
そんな内容でした。
現実的にありえねぇだろ?みたいなご都合主義モリモリの恋愛映画が多い中、ここまでリアルに恋愛を描写し、そして心を過去の恋愛していた頃に呼び戻す作品もないかなと思いました。

でもね、ラストの展開。
あれはあれでおじさんは羨ましかったぞ!
ま、そこは是非ご鑑賞頂くとして個人的にはオススメ度の高い作品でした!

さんかく窓の外側は夜

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ヤマシタトモコの同名コミックを岡田将生と志尊淳のダブル主演で実写映画化し、「霊が視える男」と「霊を祓える男」の心霊探偵バディの活躍を描いたミステリー。書店で働く三角康介は、幼い頃から幽霊が視える特異体質に悩まされていた。ある日、康介は書店にやって来た除霊師・冷川理人に勧誘され、一緒に除霊の仕事をすることに。刑事・半澤から1年前に起きた連続殺人事件の調査を依頼された2人は、やがて遺体を発見するが、その遺体には呪いがかけられていた。真相を探るうち、彼らは自殺した殺人犯の声を度々聴くようになり……。ストーリーの鍵を握る謎の女子高生・非浦英莉可(ヒウラエリカ)役で、「欅坂46」脱退後初の映画出演となる平手友梨奈が共演。「おじいちゃん、死んじゃったって。」の森ガキ侑大が監督を務め、「重力ピエロ」の相沢友子が脚本を担当。
(映画.comより)

相変わらずの原作末読で鑑賞。
よくあるホラーサスペンスかななんて見てましたが、これがなかなか楽しめましたよ。
霊を祓う者と例が見える者によるバディもの。
ここにおいて面白いのが、どちらも特殊能力なんだけどどちらかが欠けてしまっては成立しないんですよね。
この脆い関係性をBL要素も孕ませながら展開しておりました。
そこを冷静な視点で介入する一人の刑事と鍵を握る謎の女子高生。
四者四様の心理的な交錯が見所と言えるかもしれません。
特徴的なのはホラー映画特有の霊を写し出し、見ている側へ恐怖感を植え付けるというありがちな手法ではなく登場する霊が死に至るまでの過程を描きその霊の人間として生きていた頃の悲劇を伝えていたところ。
霊が怖いなんて言っても元々は我々と同じ人間。
生前に一体何があったかを写す事によって霊の実態をよりリアルに浮かび上がらせていた辺りは印象的でした。
また、冷川と三角の過去の生い立ちやトラウマを描き出し、それぞれの特殊能力に秘めた背景も非常にリアリティたっぷりに描き物語の世界観をより深めていた作品でもありましたね。
凄惨な殺人事件やいじめ等少年は何故心に闇を抱く様になったのか見ている我々に突きつけてきます。
また、謎の女子高生。非浦エリカの存在や彼女の闇を描き、映画全体を覆うやりきれなさの中にも一筋の光を見いだそうとするそんな作品世界でした。

そしてそんな特殊な登場人物が集まる中での刑事・半澤。
彼だけが至ってシンプルなキャラクターですが、彼の目線が入る事によって我々が随所で感じる疑問に踏み込んでくれるわけです。

と、こんな具合にダークながらも見所満載で楽しめる内容でした。
こんな時代だからこそ明るい作品を見たいという意見もあるでしょうが、これはこれでオススメです。

銀魂 THE FINAL

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空知英秋の人気コミックを原作とするアニメ「銀魂」の劇場版第3作。2019年6月に最終回を迎えた原作コミックのラストをベースに、最後にして最大の敵・虚(うつろ)との死闘を描く。地球滅亡までのカウントダウンが迫る中、かつての盟友である銀時、高杉、桂は、それぞれの思いを胸に奔走する。そんな銀時たちの前に立ちはだかったのは、幼少時代の彼らを教え導いた師匠・吉田松陽の別人格である虚(うつろ)だった。銀時たちを援護するべく、新八と神楽、さらには真選組やかぶき町の面々、かつてのライバルたちも立ち上がる。「劇場版銀魂 完結篇 万事屋よ永遠なれ」の藤田陽一監督の監修のもと、テレビシリーズ第3期から監督を務める宮脇千鶴が監督・脚本を担当。
(映画.comより)

12週連続の『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』の1位に待ったをかけた『銀魂』の最終作。
銀魂』と言えば福田雄一監督の手により実写版も成功。
その実写版の成功により原作を知らない人の目にも広く届く様になりました。
しかし、惜しまれながら『週刊少年ジャンプ』での連載は終了。
アニメでの劇場版もいよいよ本作でラストとなりました。

実はワタクシ・この『銀魂』の原作にはほとんど触れた事がなくてそれこそ福田雄一監督の実写版にしか馴染みがないにわかもにわか。
だけど本作に関して言えばそんな私でも特に予備知識なしでも楽しむ事が出来ましたね。

というのがこれまでのあらすじを冒頭で流してくれるんですよ。
しかもね~、これが『銀魂』らしいのですが、あの国民的人気漫画のアレのパロディで、しかも作画までアレの顔であらすじ紹介をしてくれるんですよ。
銀魂』は知らなくてもあの漫画を知らないヤツは居ないだろという配慮なのか腹抱えながらこのパロディあらすじを楽しませて頂きましたね!
ここで掴みはバッチリなんですよね!

そしてその後もお馴染みのゆるいノリの上で展開する突っ込みどころ満載のギャグの応酬がサイコーに楽しいんですよ。
「これだこれ、銀魂だ~!」なんて実写版しか知らなくてもかなり楽しめる。

そして『銀魂』と言えばのバトルシーンなんですが、こちらもしっかりと見せてくれますね!
胸が熱くなる展開なんですよね。
銀さんと高杉のシーンはぐっとくるものがありました。
更に銀さんファミリーをはじめとしたオールスター集結する所なんかは『銀魂』ファンが最も高ぶるシーンだったかもしれませんね!
そしてラストも『銀魂』らしい終わり方でしたよね。
パロディといじりとナンセンスギャグに徹底していて。
それでいてここに登場するキャラクターともお別れになる淋しさも秘めていて…。
ファンならずともグッときてしまいましたよ。

だけどエンドロールが流れても決して席を立たないで下さい!
そこでも更にひと笑い楽しませて頂けますからね。

なんてただひたすらに『銀魂』が『銀魂』である事を示す様な映画でした!
ちなみに入場者特典はまさかのアレのイラスト。
のっかってくるな~!

そんなこんなで思う存分銀魂を楽しんで参りました!