きんこんのシネマ放談

映画をこよなく愛するきんこんが鑑賞した映画をズラズラっと紹介していく映画ブログ

ある閉ざされた雪の山荘で

人気作家・東野圭吾が1992年に発表した同名ベストセラー小説を、「禁じられた遊び」の重岡大毅主演で映画化したサスペンスミステリー。
劇団に所属する7人の役者のもとに、新作舞台の主演の座を争う最終オーディションへの招待状が届く。オーディションは4日間の合宿で行われ、参加者たちは「大雪で閉ざされた山荘」という架空のシチュエーションで起こる連続殺人事件のシナリオを演じることに。しかし出口のない密室で1人また1人と参加者が消えていき、彼らは互いに疑心暗鬼に陥っていく。
オーディション参加者の中で1人だけ別の劇団に所属する久我和幸を重岡が熱演し、中条あやみ岡山天音西野七瀬、堀田真由、戸塚純貴、森川葵間宮祥太朗が同じ劇団に所属する個性豊かな役者たちを演じる。監督は「荒川アンダーザブリッジ THE MOVIE」の飯塚健。(映画・comより)

数々の作品が映像化されてきた東野圭吾の原作。1992年に書かれたベストセラー小説が30年以上の時を経て映画化。今年の1月に全国公開となりました。私は2月に松江東宝5で鑑賞。

投稿が遅れましたが、アマプラで配信が始まったという事なのでこれを機に感想等等お伝え出来ればと。

原作は未読で鑑賞に臨んだのですが、これは結果的に正解だったかなと思っています。

というのが今作のプロットが若手劇団員のオーディションが軸になっているからです。参加する団員達は支持によって連続殺人事件のシナリオを演じる。殺害された人も実際に殺されたのかシナリオに基づいた演技をしているのか見ている側からはわからないんですよね。

それをストーリーを追いながらそして視聴するこちら側が探偵になったかの如く推理していく。ミステリーの醍醐味ここに極まれりとばかりに東野圭吾の作品に没入していく事になります。

第一の被害者の殺害状況から周囲の残留物、団員達のアリバイは?それを各自で整理しながら見続けていく。もちろん登場人物のセリフひとつひとつも重要なヒントになったりします。

果たして物語の顛末は?そしてこのオーディションの目的は?果たしてこの山荘では本当に事件は起きているのか?あなたの目でご確認下さい!

 

…でレビューが終わっちゃうからこれまで扱わなかったんですよね。

でもそれだとあまりにそっけないのでもう少し触れていきましょうか。

路線バスから始まるシークエンスによってこれから起きるミステリーとの対比を生み出していきます。これはこのオーディションに参加する劇団員の人間関係をわかりやすく伝える事も兼ねながら若者らしいコミュニケーションを写す事で後の惨劇とのギャップを効果的に作り出しているんですね。また、それぞれのキャラクター描写や背景等もしっかりと伝わってきます。

そして山荘に着いてからのオーディションにあたっての指令から本格的に物語が動いていきますが、はじめて事件を発端に団員達の疑心暗鬼からの人間関係の崩壊という描写もリアリティがありましたし、若手の実力派俳優陣を配しているだけあって彼らの演技力によって見ているこちらを作品世界へ誘ってくれます。それから女性陣の間で生まれるわだかまりなんかは単に男目線で「女って怖ぇ…」という感想になるのですが、彼女達の場合は同じ劇団に所属するいわばライバルだからこその嫉妬も絡まりそれがより人間関係をドロっとさせていたりこの場面はなかなかリアルですね。

役者陣の演技はさすがは若手の実力派揃い。皆さんホント素晴らしい演技で見せてくれますね。とりわけ岡山天音さんの演技は良かったですね。元から団員の中でもめんどくさ〜い曲者でありその地の部分から他者に疑いの目を向けてからの嫌〜なヤツ感がよく現れていたなと思います。

また、堀田真由さん。彼女もいいですね。最近だと『翔んで埼玉〜琵琶湖より愛をこめて〜』でのくのいちの役が板についてましたが、コメディもいいですが、シリアスな作品だと非常によくハマる。ワガママな女優感たっぷりだし、前述の嫉妬の感情の出し方が光っていたなと思います。

そして一人また一人と退場する内に残ったメンバーで推理を進めていくうちに核心へ迫っていくのですが、この辺りのストーリーの運びもよく描かれていたなと思います。

しかし、しかしですよ!そこからの流れに関しては違和感ばかりで正直ツッコミどころが満載でした!とりわけ事件の真相に辿り着いてからがなかなかのもんでしておいおいとツッコミ待ちなのかと思ってしまったくらいです。それはネタバレになるので詳細には伝えませんが、真犯人の殺害動機の支離滅裂ぶりですね。また、穴だらけなのに誰一人としてその矛盾点を指摘しない辺りですごいもやっとしてしまいましたよ。

それからこれはサスペンスだから仕方のない部分もありますが、会話劇が多すぎるから途中で飽きやすい。更には説明過多になるのはまだ百歩譲るとして回想シーンを設けるなどしてもう少し映像的工夫があってもいいんじゃないかと思いました。

不満点は多々ありますが、役者陣の演技他見所もたくさんありますので、是非劇場で…ではなく配信にてご覧下さい!

オッペンハイマー

ダークナイト」「TENET テネット」などの大作を送り出してきたクリストファー・ノーラン監督が、原子爆弾の開発に成功したことで「原爆の父」と呼ばれたアメリカの物理学者ロバート・オッペンハイマーを題材に描いた歴史映画。2006年ピュリッツァー賞を受賞した、カイ・バードとマーティン・J・シャーウィンによるノンフィクション「『原爆の父』と呼ばれた男の栄光と悲劇」を下敷きに、オッペンハイマーの栄光と挫折、苦悩と葛藤を描く。
第2次世界大戦中、才能にあふれた物理学者のロバート・オッペンハイマーは、核開発を急ぐ米政府のマンハッタン計画において、原爆開発プロジェクトの委員長に任命される。しかし、実験で原爆の威力を目の当たりにし、さらにはそれが実戦で投下され、恐るべき大量破壊兵器を生み出したことに衝撃を受けたオッペンハイマーは、戦後、さらなる威力をもった水素爆弾の開発に反対するようになるが……。
オッペンハイマー役はノーラン作品常連の俳優キリアン・マーフィ。妻キティをエミリー・ブラント原子力委員会議長のルイス・ストロースをロバート・ダウニー・Jr.が演じたほか、マット・デイモン、フローレンス・ピュー、ジョシュ・ハートネットラミ・マレックケネス・ブラナーら豪華キャストが共演。撮影は「インターステラー」以降のノーラン作品を手がけているホイテ・バン・ホイテマ、音楽は「TENET テネット」のルドウィグ・ゴランソン。
第96回アカデミー賞では同年度最多となる13部門にノミネートされ、作品賞、監督賞、主演男優賞(キリアン・マーフィ)、助演男優賞ロバート・ダウニー・Jr.)、編集賞、撮影賞、作曲賞の7部門で受賞を果たした。(映画・comより)

原爆の父・オッペンハイマー。世界で唯一の被爆国である日本ではあまり知られていません。今回の映画で初めてその名を知ったという人も少なくないでしょう。私もあまりよく知らないので今作鑑賞に関しては事前の予習が必須であると考え、色々と調べました。その中でも特に信用出来る…というかテキストとして最適なものがありましてそれはエフエムいずもの番組では紹介しましたが、NHKで2月19日に放送された『映像の世紀 バタフライエフェクト マンハッタン計画 オッペンハイマーの栄光と挫折』というドキュメンタリー番組。実際の原爆の開発の様子やオッペンハイマー本人の様子や肉声等も放送されているのでこれからご覧になる方はNHKオンデマンドで現在配信されているのでこちらの番組を視聴した上での鑑賞をオススメします。

さて、今作はオスカー7部門受賞により注目されていますが、アメリカでは昨年7月に公開されています。日本での公開が遅れたのは諸説ありますが、やはり題材が題材だけに慎重になったというのが大きいでしょう。とりわけ日本人が見た場合、複雑な心境を抱く場面もあります。

さて、これまで「ダークナイト」、「インセプション」、「インターステラー」等数々の作品を世に出してきたノーラン監督。伝記映画は今作が初ですが、果たしてどうなのか?期待を胸に4月1日MOVIX日吉津にて鑑賞しました。話題作ではあるものの、内容が難解と想像するからでしょうか。また三時間という長尺にもハードルの高さを感じてる人が多いのかもしれません。客層は僕を含めた男性率が高い。年齢的にも50代以上と思われる方々が多かったです。

そんな今作。まず率直に思った事。良くも悪くものノーランらしさ全開。伝記映画ではあるもののオッペンハイマーの生い立ちをそのまま時系列を追いながら見せていくというのではなく、戦後の東西冷戦下、彼が共産主義者であるという嫌疑がかけられた聴聞会の場面から始まります。そしてそこから彼が過去を回想しながらその時々の場面を写しそこでの彼の様子を捉えていくのですが、ここだって時系列に沿っていないから事前の予習がないと理解が出来ません。何故彼は原爆の開発に乗り出したのか等の今作を物語る上での主要な場面にもなかなか踏み込んでいかないのでこの辺りで脱落する人が居てもおかしくありません。更には彼は物理学者であり爆弾を作る上での物理用語や元素記号等も出てくるのでそこも含めての理解を望むのであれば理系的知識も試されます。文系の僕はこの辺りは完全に理解する事を放棄しました。

ただ、いよいよ原爆開発のフェーズに入るとここからが一秒たりとも目を離せない緊張感と共に映画を追っていく事になります。ユダヤ人である彼のそもそもの原爆開発のモチベーションがホロコーストを行なったナチスドイツへの報復であった事。しかしドイツの敗戦から潮目が変わり日本を標的とするところから我々日本人が否が応でも目を向けずにはいられない緊迫感を伴う8月6日と8月9日へ向かっての残酷な運命を追っていく事になります。

ただもしかしたら不謹慎なのかもしれませんが、ここに至るまでの流れが映画的な盛り上がりを見せていくのは確かです。とりわけ広島・長崎への原爆投下に先んじて行う原爆投下の実験場面は音楽の使い方から映像的な手法等ノーラン一流のこだわりというのか力の入れ様が伝わってきます。はっきり言って怖いです。

そして遂に運命の日を迎えますが、ここもあらゆる角度からの爆弾投下場面を写していきます。ここは実際に原爆が投下されるその様子を非常に忠実に再現している為、リアリティに溢れています。

しかし実際に投下後の様子は写さない辺りには賛否がある様ですが、僕はここは肯定的に捉えています。原爆の恐ろしさは前述の実験とB29から捉えた投下場面で十分伝わりますし、ここはノーランなりの配慮もあったのではないでしょうか。

そしてその後のアメリカ国内の様子や時のトルーマン大統領の対応等日本人が見ると感情を刺激される描写でしょう。オッペンハイマーは英雄扱いされ民衆からは歓喜の声が溢れる。でもこれは当時は実際の広島・長崎の阿鼻叫喚をこの段階ではまだ誰も知らないんですよ。戦後数十年経って原爆ドーム・平和記念資料館での展示物を見て初めてその惨状を知ったというアメリカ人が大半だったそうですからね。

そして戦後の彼が長らく原爆を開発した事への後悔と自責の念に苦しむ様もしっかりと描かれています。彼と向かい合った人の顔が溶けていくというのは比喩描写ではありますが、実際の被爆者が味わった苦しみや惨状をノーランなりの表現で上手く捉えていたと思います。

とこの様にオッペンハイマーという人物をまた原爆というものをクリストファー・ノーラン流の映像表現で見せていきます。

さて、補足としてこの原子爆弾に関してですが、アメリカが世界に先んじて開発したと思いそうですが、ナチスドイツもそして日本でも戦時中に軍部の指令の下、仁科博士という人物が率いて開発していました。日本は大戦中には間に合いませんでしたが、もしこの時に原子爆弾開発をアメリカより早く成功させていたら後の世界の歴史は変わっていたのでしょうか?

世界の現代史を見る考える上でも興味深いです。

映画に関してですが、被爆者・日本に住むのであればアメリカ側の視点による原爆というものを理解する上でもこの作品を見る事を強く推奨します!

その上ではしっかりと予習をお忘れなく。

変な家

違和感だらけの“変”な間取りの裏に隠された驚きの真実に迫る展開で話題を集めたYouTube動画をもとに、動画制作者・雨穴が自ら物語の続きを加筆して書籍化したベストセラー小説「変な家」を映画化。
オカルト専門の動画クリエイター・雨宮はマネージャーから、購入予定の一軒家の間取りについて不可解な点があると相談される。そこで雨宮は、自身のオカルトネタの提供者であるミステリー愛好家の設計士・栗原に意見を聞いてみることに。間取り図から次々と浮かび上がる奇妙な違和感に、栗原はある恐ろしい仮説を導き出す。そんな中、その家のすぐ近くで死体遺棄事件が発生。事件と家との関連を疑う雨宮が一連の疑惑を動画にして投稿すると、その家に心当たりがあるという人物・宮江柚希から連絡が来る。
間宮祥太朗が雨宮役、佐藤二朗が栗原役で主演を務め、物語の鍵を握るヒロイン・柚希を川栄李奈が演じる。「エイプリルフールズ」の石川淳一監督がメガホンをとり、「七つの会議」の丑尾健太郎が脚本を担当。(映画・comより)

さてまずは原作について触れていきます。ベストセラーとなった雨穴によるミステリー小説『変な家』。1作目のヒットを受け現在まで2巻が刊行されています。更にシリーズとして『変な絵』も刊行されこちらも大ヒットとなっています。私も『変な家』の1巻は読みましたが、家の間取り図から謎が謎を呼んでいくそのストーリー展開に一気に引き込まれていきました。また、文章も良い意味で平易で難しい表現はなく行間を読み取れ的なミステリー小説によくある凡人の理解度をいたずらに試してくる様な事もなく普段小説をあまり読まない僕にも非常に優しく読みやすいそんな良書でした。だから僕はこの原作については推していきたいなと思っています。

だからこそ僕はこの映画化は非常に楽しみにしていました。果たして原作で描かれたあの独特な世界観が映画ではどの様に表現されているのか?期待を胸に公開直後の3月16日の土曜日。MOVIX日吉津にて鑑賞して参りました。

さて、特に小説の場合ですが、事前に原作に触れると自分が読んだイメージというのは各々の脳内で作られていきますよね。登場人物のキャラクターや舞台設定から細やかな背景等等。それが映像化となるとその自分の描いたイメージとのある種の答え合わせの様な作業が生まれます。登場人物の誰々は自分の中ではこんなキャラクターなんだけど映画ではどうなってんのかな?みたいなね。そしてそれが楽しくもあるのですが、間宮祥太朗の演じた雨宮という動画クリエイターは確かに自分がイメージしていたそれに近かったですね。ただ、他の主要キャラ二人、川栄李奈演じる柚希と佐藤二郎演じる設計士の栗原ですね。僕が小説を読んで抱いてキャラクター像よりもダークな雰囲気を醸し出していた印象ですね。

また、舞台となる変な家の数々。この映像化はなるほどこう来たかと思わせてくれた。とりわけこれは原作読んだ人なら分かるんですけど本家ですよね。玄関から真っ直ぐに伸びる廊下。その突き当たりにある仏壇というあの怪しさ極まりない本家ですよね。開かずの襖や謎の通路等等小説を読んで抱いたイメージの上をいく不気味さを禍々しさの描き方。いやいやお見それ致しました。

と、原作を読んだからこそ感じる映像化に際しての発見等等は個人的には面白かった点でしょうか。

ただ、一方では過剰に表現するあまり気になってしまった点がありましてそこについて触れていきますね。

まずおどろおどろしさに比重を置くあまりホラーっぽくし過ぎてやしませんか?という点。原作の改変から大きな問題に発展してしまった中、原作にあるなしの描写に少しナイーブになってやしませんか?と言われそうですが、割と映画の序盤に出てきた窓ガラスのキィ〜っていうあの耳障りな音の場面ですよね。あんなの原作にあったかな?というのもそうなんだけどホラー的な映像演出として加えたというのであればあれ要る?って思っちゃいましたね。

後、横溝正史的な本家の因習に触れていくくだりですよね。いや、あれ自体はいいんですよ。横溝正史オマージュの文脈で言えば『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』という成功例がありましたし、石坂浩二さんが本家の当主である老人を演じていたのは金田一耕助からの流れなんでしょうね。そして本家の禍々しき因習を軸にした明治時代の女中の負った悲劇等は『番長皿屋敷』等の古典的な日本の怪談を思わせる不気味さに潜む悲哀を十分に表していたと思います。また、その因習からの惨劇に巻き込まれる雨宮達の姿も間宮祥太朗、佐藤二郎、川栄李奈という三人による迫真の演技もあって見る人に緊張感を与えてくれます。

更に言えば『事故物件』であったり『樹海村』に始まり村シリーズ等近年のジャパニーズホラーと比肩いや或いは凌駕する様なホラーとしての面白さはありましたよ。ただね〜、今作って原作がこんなホラーに寄った作品だったのかな?なんて気になってしまいまして。いや、むしろ先日取り上げた『マッチング』に近いサスペンス寄りな作品なんですよね。『マッチング』について話した際に僕は不気味さやダークな描写等等には触れましたが、ホラーに寄ってたとは言ってませんからね。

で、『マッチング』の話しが出てきたのでその流れで…。『マッチング』にも出てきたあのベテラン女優さん。今作にも出られてました。しかも『マッチング』同様に今作でも快演を見せています。かつてのアイドルも年齢を重ねて役の幅の広さ更に深みを感じさせてくれましたね。僕の世代より少し上の方々に向けてですが、初代の『スケバン刑事』や『はいすく〜るらくがき』を見ていた僕のお兄さんお姉さん世代の皆さん。今の彼女の女優としての深みを味わう為にも『マッチング』と『変な家』は是非チェックして下さい!

と思わぬ形で前々回取り上げた作品も合わせて推す形になりましたが、『変な家』。小説と合わせてオススメです!

是非劇場でご覧下さい!

FLY! フライ

ミニオンズ」「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」のイルミネーション・スタジオによるオリジナルの長編アニメーション。渡り鳥なのに小さな池から一度も出たことがないカモの一家が、初めての大移動に乗り出す姿を描いたファミリーアドベンチャー
アメリカ北東部、ニューイングランドの小さな池に暮らすカモの家族。父親のマックは、興味本位で池を飛び出したカモの悲惨な末路を子どもたちに語って聞かせるのが日課で、池にいれば一生幸せに暮らすことができると信じていた。ところがある日、彼らの暮らす池に移動途中の渡り鳥が立ち寄り、その自由な姿に妻や子どもたちは大興奮。自分たちも外の世界を見てみたいと言い始めたことから、一家はカリブ海の楽園ジャマイカを目指し、3000キロの大移動に乗り出すことになるが……。
オリジナルキャストはマック役に「ビッグ・シック ぼくたちの大いなる目ざめ」「エターナルズ」のクメイル・ナンジアニ、妻のパム役に「ピッチ・パーフェクト」シリーズのエリザベス・バンクス。日本語吹き替え版はマック役を堺雅人、パム役を麻生久美子、好奇心旺盛な息子ダックス役を「怪物」の黒川想矢、おてんばな娘グウェン役をミュージカル「SPY×FAMILY」アーニャ役の池村碧彩がそれぞれ担当。そのほか羽佐間道夫野沢雅子関智一鈴村健一ら豪華声優陣も吹き替えに参加している。(映画・comより)

イルミネーションスタジオ制作の最新作は鳥の親子の物語。これまでイルミネーションと言えば動物達が暮らす街での音楽劇『シング/SING』であったり人間達が不在の中のペットが巻き起こす騒動を描いた『ペット』等がありました。つまり動物の擬人化は言わばお家芸の様なところがありましてもちろん今作も鳥が喋るし人間の様に感情を持つ。鳥の目線による壮大なアドベンチャーという事でイルミネーション作品大好きな僕はもちろん見て参りました。3月18日の月曜日。MOVIX日吉津にて鑑賞。春休みに入るタイミングなのでキッズや若者が多いかなと思いましたが、いつもの平日の入り。それもあって落ち着いて鑑賞出来ました。

さて、今作冒頭で描かれるのは父・マックの消極的なスタンスです。カモの一家として池で平穏に過ごしている彼ら。身の回りには危険な事なんてないし一生ここに居ればいいというのがマックの考えです。そういった事から池を離れた世界はとにかく危ないという事を常々子供達に伝えている。だけど子供達や妻のパムは好奇心旺盛。外に出たくて出たくて仕方ありません。そして遂にマックは意を決して家族で飛び立つ事を決心するんですね。そしてこの場面こそが後に伏線となって活きていきます。

その後の彼らは大空を飛び陸から陸へと降り立っていきます。その場所その場所で様々な種類の鳥達と出会い交流を果たしていくのです。さながらその流れは鳥目線の旅をテーマにしたロードムービー。そしてこのひとつひとつのグラフィックがとにかく美しい!大空を飛ぶ彼らの目から見たその視点を交えての飛行シーンは見ている我々がさながら空を飛んでいるかの様な描写。非常に工夫が施されていきます。

また、その折々で「立つ鳥跡を濁さず」、「鴨がネギを背負う」、「飛ぶ鳥を落とす勢い」等鳥に関連する諺や慣用句を取り入れてくる。その使うタイミングも絶妙なんですよね。なんて言えば去年夏に見たディズニー作品『マイ・エレメント』なんかもそうだったななんて思い出し。もしかしたら『マイ・エレメント』に触発されていたりして?

そして登場する鳥の種類もキャラクターとしての魅力に溢れていましたね。明らかに怪しくてもしかしてこいつがヴィラン?なんて思わせるサギ(野沢雅子さんの悟空声での怪しさ全開のキャラがくせになりそうでした)、都会に潜むハト達そしてこのハト軍団をまとめるボスキャラにはヒコロヒーというキャスティング。そして一見楽しそうに暮らすアヒルクジャク、ペンギン等等。鳥類達の交流が見ていてとにかく楽しかったですね!

しかし、そんな鳥達の天敵として現れるのが何と人間なんですね。僕の好物は鶏の唐揚げにチキン南蛮にチキンカツにフライドチキンにナゲット…ごめんなさい!そうです僕達人間は日常的に鳥を食べてますね。鳥を食材として調理しようとするシェフが最大のヴィランとして現れるのです!鳥達を捕獲する為にゲージを用意して追いかけ回す彼の姿が非常に憎たらしく描かれます。こいつは何てひどいヤツなんだと見てるくせにでも今日から鶏肉食べるなよと言われたらうん、それは無理です…なんて思いながらストーリーを追うのは僕ちゃんでして(笑)いや〜、これからも僕は鶏肉食べるよごめんね鳥さん達。でもこの描き方はすごいわかりやすかったし、楽しめましたね。

そして登場する鳥達は人間によって調理されかけるというピンチに見舞われますが、イルミネーションらしく残酷な結末を迎える事なく危機は脱します。

とこの様に池を飛び立ったカモの一家ではあるものの、これはひとつのテーマに直結します。

それは当初の父・マックの後ろ向きなスタンスに繋がるのですが、確かに安全な場所に居ると身の危険もないし平穏な暮らしをする事は出来る。だけど視野を広げる事が出来なかったりとか成長を阻む事にもなるんですよね。ここでの池というのはぬるま湯と言い換える事が出来ます。

つまり人間に置き換えると困難を伴う事も苦渋に満ちた経験も確かに人生にはある。しかしそれを恐れて楽な場所に居続けるのは人間的には成長が出来ないというメッセージが描かれているんですね。失敗やリスクを恐れて何もしないのではなくまずはマック達の様に飛び立つという選択肢を持つその重要性を伝えています。そしてマック達がシェフの手によって調理されるというピンチも仲間と助け合えば乗り越える事が出来るという前向きなメッセージ。ここでの仲間とは家族であり彼らの旅の中で出会う他の鳥達であったり。そうです、マックは初めのうちこそ消極的だったのが、旅を通じて家族との結束であったり方々での鳥達との交流を通じて池での平穏での生活の中では得られなかったものを手にするんですよね。

そうして見れば如何でしょう?子供向け映画ではあるものの大人にも刺さる内容だと言えるのではないでしょうか?特に今人生に悩み迷ってる人が居れば見て頂きたい。あなたもその翼で自由に空を羽ばたいて行ってほしいです。

いい映画を見て人生を豊かにする。一石二鳥じゃないですか?鳥だけにね!

オススメです!

 

52ヘルツのくじらたち

2021年本屋大賞を受賞した町田そのこの同名ベストセラー小説を、杉咲花主演で映画化したヒューマンドラマ。
自分の人生を家族に搾取されて生きてきた女性・三島貴瑚。ある痛みを抱えて東京から海辺の街の一軒家へ引っ越してきた彼女は、そこで母親から「ムシ」と呼ばれて虐待される、声を発することのできない少年と出会う。貴瑚は少年との交流を通し、かつて自分の声なきSOSに気づいて救い出してくれたアンさんとの日々を思い起こしていく。
杉咲が演じる貴瑚を救おうとするアンさんこと岡田安吾を志尊淳、貴瑚の初めての恋人となる上司・新名主税を宮沢氷魚、貴瑚の親友・牧岡美晴を小野花梨「ムシ」と呼ばれる少年を映画初出演の桑名桃李が演じる。「八日目の蝉」「銀河鉄道の父」の成島出監督がメガホンをとり、「四月は君の嘘」「ロストケア」の龍居由佳里が脚本を担当。タイトルの「52ヘルツのクジラ」とは、他のクジラが聞き取れないほど高い周波数で鳴く、世界で1頭だけの孤独なクジラのこと。(映画・comより)

小説には疎い僕なんですが、原作は大ベストセラーとなった作品。読んだという方も多いのでしょう。しかし僕は全くの未読なので原作と映画の脚色の違いはわからないのですが、しかしそんな僕が見ても十分楽しめる作品となっていました。また、非常に映画向きな作風だなとも感じた次第です。

そんな今作、元々鑑賞する予定はなかったのですが、かなり評判が良い様なので松江東宝5にて3月20日の祝日に鑑賞しました。祝日で賑わう中でしたが、今作の鑑賞人数は僕を含めて7〜8人とやや少なめ。きっと『ドラえもん』や『ハイキュー‼︎』は大入りなのでしょうね…。

まず今作のタイトルにも使われている52ヘルツのクジラについて。クジラというのは音によってコミュニケーションを図るのですが、しかし52ヘルツの音を出すクジラとは他のクジラには音波をキャッチされない。つまり誰にも気付かれない孤独なクジラという事になります。そしてこれを人間社会に移して見ると確かに52ヘルツのクジラたる人達は存在してそんな彼らが声を押し殺しながら社会の片隅に潜んでいる。その理由は様々ですが、今作の例ではヤングケアラーにネグレクト、LGBTといった具合にわかりやすく示されている。杉咲花が演じる貴湖という女性もその一人であり、彼女は都会を離れ、海の綺麗な小さな町へとやって来る。彼女は東京で性風俗の仕事に就いていたとか何とかという噂が田舎あるあるの如く町の人から流れてくる。というのもかつてこの町には元芸者の女性が流れ着いてきたという歴史があり、都会から単身やって来たという女性には奇異の目が向けられる。この辺りから貴湖の過去を遡りながらそのいきさつを時系列で追っていくというヒューマンドラマの形態を取りながら見ている人を作品世界へ誘っていく。この見せ方はうまいなと思いましたね。

するとどうでしょう?まるでパンドラの箱を開いたかの如く描かれる貴湖の不幸な生い立ち。父親の介護、母親からの虐待、恋人からのDVに大切な人との永遠の別れ等等追っていけばいくほど身が引き裂かれるかの様な悲劇の大放出。しかしそんな彼女にもその折々には人との触れ合いに身を委ねまたそれらの人達も各々に何かを抱えている。皆んなそれぞれが52ヘルツのクジラであるという事なんですね。

そしてその過去から小さな町へ流れ着いた彼女が出会う一人の少年。彼もまた傷を負った小さなクジラなんですよね。

なんて見ると決して明るい映画ではないとわかるでしょう。そうです、全体的に重いんです。とは言ってもいわゆる鬱映画と呼ばれるものとも違っていて暗い中にもどこか希望を見い出そうとする前向きさも含まれています。だから見終わった後にもズシ〜ンとはこないんですよね。

それにしてもキャストの演技はどの人もホントに素晴らしかったですね!言うまでもなく主演の杉咲花ちゃんの演技は光るものがありまして、不幸の只中にいるところでの表情は身につまされるものがあるし、一方ではそれが束の間であっても希望を見出す折々に見せる安堵の表情は実にナチュラルです。

また、志尊淳くんもかなりの難役だったとは思いますが、実に堂々たる演技。特に原作未読だった僕は後半の展開には驚かされました。

それから宮沢氷魚さん。彼の優しさから一変するあの演技は凄いハマっていました。ただ、その一方で素の彼が優しいんでしょうね。豹変する発端となるあの場面。杉咲花ちゃんはもっと強く突き放すくらいの勢いがあってもよかったんじゃないかなと思いましたね。

また、登場場面こそ少なかったですが、余貴美子さんは実際に上京してきたお母さんっぽかった。要は演技に説得力がありましたね。

また、撮影にも強いこだわりを感じまして、ワンシーンワンシーンのカメラの長回しですよね。カットを入れずにひたすらカメラを回し続ける辺りのその撮り方に映画的な魅力が感じられましたし、またそこに上手く応える杉咲花ちゃんもすごいなと感じました。

ただ一方で気になった点もありまして、それは被害を受ける側に寄り添い当該の人物の深掘りは見ている側にもしっかり伝えてくれるのですが、加害をする側の人物描写がどうにも浅く感じてしまいました。うん、もちろんタイトルから孤独に生きる人に焦点を当てるわけですからもちろんそれでも良いのですが、僕個人の要望としては加害者へのフォーカスがあるとよりストーリー的には深みがあったのになとそこがちょっともったいないなと感じました。

でも全体を通して映画としての完成度は高かったので個人的には大満足です!

オススメです!

映画ドラえもん のび太の地球交響曲

国民的アニメ「ドラえもん」の長編映画43作目で、原作者である藤子・F・不二雄の生誕90周年記念作品。「音楽」をテーマに、ドラえもんのび太たちが地球を救うための壮大な冒険を繰り広げる。
学校の音楽会に向けて、苦手なリコーダーの練習をしているのび太の前に、不思議な少女ミッカが現れる。のび太の奏でるのんびりとした音色が気に入ったミッカは、音楽がエネルギーになる惑星でつくられた「音楽(ファーレ)の殿堂」にドラえもんのび太たちを招待する。ミッカはファーレの殿堂を復活させるために必要な音楽を一緒に演奏する、音楽の達人を探していたのだ。ドラえもんたちはひみつ道具「音楽家ライセンス」を使って殿堂の復活のため音楽を奏でるが、そこへ世界から音楽を消してしまう不気味な生命体が迫ってくる。
海外で音楽活動をしている歌姫という設定のゲストキャラクター、ミーナ役で芳根京子が声優出演。主題歌は、アニメ映画主題歌はこれが初めてとなるVaundyが担当。監督は「映画ドラえもん のび太の宝島」「映画ドラえもん のび太の新恐竜」の今井一暁。(映画・comより)

毎年恒例のドラえもん映画の季節がやって参りました!今年のテーマは音楽という事で音楽と映画の親和性が高いなんて事は私なんかが説明する必要はないわけですが、まぁ楽しみにしていたんですよ!

そして3月1日の公開日。前回の『マッチング』と合わせて松江東宝5で鑑賞して参りました。

さて、今作の監督は今井一暁氏。これまでのドラえもん映画だと『映画ドラえもん のび太の宝島』(2018)、『映画ドラえもん のび太の新恐竜』(2020)の監督、また2017年の『映画ドラえもん のび太の南極カチコチ大冒険』以降のドラえもん映画では毎作ドラえもん映画の製作に携わっています。つまりここ近年のドラえもん映画には欠かせないクリエイターである事は間違いありません。果たして新作は?

今作での特徴としては音楽が軸となっていますが、安易にミュージカルにしたり『ONE PIECE FILM RED』に見られた様な神曲モリモリな仕様にしなかった事です。近年の音楽を強調した作品だとこういった作りが顕著ですよね。ここ数年の興行収入100億円を超えた映画の多くは映画としての面白さはもちろんそこに如何に音楽でのせていくかがかなり作品に影響を与えます。もちろんドラえもんでもこの作りは可能だったと思います。しかし主題歌のVaundyがあるくらいでそれ以外の部分ではこれまでのドラえもん映画としての世界を崩さずお馴染みののび太達の冒険譚の中に音楽というテーマを盛り込んだに過ぎません。いや何だったらこの世界から音楽が消えてしまったらという仮想空間まで見せている。音楽をテーマにしながら音楽のない世界を写すんですからね。

でもこの視点って重要で我々の生活の中に如何に音楽が浸透していてそれによって日々の活力に繋がっているかという事をしっかりと伝えてくれる。この手法があったかと音楽映画の新しい形を見せてくれた感がありますよ。

また、ファーレの殿堂であるキャラクターは歴史上の音楽偉人をモデルにしてる辺りも面白かった。バッハにベートーヴェンワーグナーモーツァルト滝廉太郎まで居るというね。

そんな中でしっかりと音楽の楽しさも伝えてくれる。古今東西様々な音楽映画がある中である作品は歌を通してある作品はダンスを通じて音楽の魅力を見せてくれていましたが、この作品ではジャイアンスネ夫・静香ちゃんそれぞれのキャラクターに合った楽器をドラえもんの秘密道具音楽家ライセンスによって魂を持った楽器と心を通わせながら腕前を高めていく。てか静香ちゃんはバイオリンじゃないんだなんて思いつつ…。で、のび太はと言うとこれが縦笛なんですよね。よりによって音楽の授業で苦手としていた縦笛ですよ。でもこれがストーリーの中では活きてくるんですよね。縦笛がなかなか吹けないのび太が練習の末上手くなっていく。その成長過程が見所なんですよね。

私事ですが、年明けから尺八を習っているんですがなかなか良い音が出ないんですよね、のび太君を見習って僕も練習頑張ろって思いましたもん。それからのび太達が皆で楽器を演奏する姿は月並みですけど、やっぱり音楽っていいなって思いましたね。

ただこの様に見所も満載だしメッセージ性もあったのですが、近年のドラえもん映画の中ではややボリュームに欠けてしまったかなというのが正直な印象でして、うん確かに音楽がうまく作品にのってたとは思うのですがどうにもストーリーの運びがやや平坦だった感が否めなくて…。山場はいくつかあるんですがそれによって感情が大きく動かされたかというと疑問なんですよね。それから絶対的な敵キャラが不在だったのもその要因だったかなと思っています。

題材は良かっただけに色々勿体ない印象が残ってしまいましたね。

ただだからと言って悪い作品だとは思っていなくて例えば新海誠作品や『ONE PIECE FILM RED』ばりのここぞという時にギアを入れる様な曲をふんだんに用意した音楽の使い方もありだとは思いますが、そこに頼らずドラえもんの世界に寄り添いながらしっかりと音楽というテーマを描いていった試みは作品で十分感じられたしそこに潔さを感じました。来年以降のドラえもん映画にも期待したいです!

エンドロール後にはその来年の映画を想像させるドラえもんからのメッセージが今年もしっかりと用意されていました。う〜ん、来年はこうくるか〜。

まずは今年の映画ドラえもん。是非劇場でご覧下さい!

マッチング

「ミッドナイトスワン」の内田英治が原作・脚本・監督を務め、マッチングアプリによる出会いから始まる恐怖をオリジナルストーリーで描いたサスペンススリラー。
ウェディングプランナーとして働く輪花は恋愛に奥手で、親友で同僚の尚美に勧められてマッチングアプリに登録することに。マッチングした相手・吐夢と会ってみたものの、現れたのはプロフィールとは別人のように暗い男だった。それ以来、吐夢は輪花のストーカーと化し、恐怖を感じた輪花は取引先であるマッチングアプリ運営会社のプログラマー・影山に助けを求める。同じ頃、“アプリ婚”した夫婦を狙った連続殺人事件が起こる。輪花を取り巻く人々の本当の顔が次々と明らかになっていく中、輪花の身にも事件の魔の手が迫る。
主人公・輪花を土屋太鳳、狂気のストーカー・吐夢をアイドルグループ「Snow Man」の佐久間大介、輪花を助けるプログラマー・影山を金子ノブアキが演じる。(映画・comより)

マッチングアプリ。今や男女の出会いのツールとして定着した感があります。私?利用した事はなくはないです。ただまぁ、あまり良い出会いはなくて…なんて事はどうでもよくそんなマッチングアプリを題材としたサイコサスペンスという事で興味津々。3月1日に松江東宝5にて鑑賞して参りました。

さて、マッチングアプリを使って一体どんなスリリングな展開を見せてくれるのか。そこに関してはとにかく前半部分で怒涛の様に見せられます。マッチングアプリで結ばれたカップル達が次々に殺されてしまう。かなり猟奇的な見せ方なのでグロが苦手な人にはオススメ出来ないかもしれません。それと並行して明らかに怪しい叶夢という人物。ここは佐久間大介くんなかなかの快演を見せてくれます。土屋太鳳演じる輪花がそんな叶夢に追われてしまうストーカーと接する恐怖と猟奇的な連続殺人事件が並行して描かれる為に前半部分のサイコな世界観の構築はバツグンです!

果たしてこの恐怖の展開はどの様に進んでいくのか見ている人を作品に引きずり込んでいくその脚本は見事です!

またプログラマー・影山の存在も大きく金子ノブアキの演技が光ります。また彼の存在感が見ている人に安心感を与えてくれます。

そして中盤に劇的な展開を迎え思わず息を飲み込んでしまいます。まさか…まさか…まさかって感じで。

サスペンスなのでいつも以上にネタバレに注意が必要なのでこれ以上は触れませんが、スリリングな作風が好きな方、見て損はしないと思います。

一方では過去の破滅的な出来事が作品によりボリュームを生んでいるので終始に渡って目が離せないですね。また、この辺りではリストカットの場面がガッツリ出てくるので視聴注意とお伝えしておきます。また、セリフ多めの名のあるキャストだって容赦なく殺されますが、割と死を映す場面はショッキングです。

それにしてもこの内田監督。何とも物語の舞台設定がうまい。とりわけ廃墟のアパート更にそこの残留物だらけの荒んだ一室を使っての惨劇なんてのは見ていて絶望しかありませんからね。また、後半での淀んだ空気感のロッジそしてそこに潜む目の座った女性、彼女が押す車椅子の女性(ここのキャスト名は伏せます。)負のオーラしかありません。

なんてこれまで伝えた内容だとかなりヘビーな作品なのでは?と思うかもしれませんが、はいその通りです。だから佐久間大介くんを目当てに見に来た女性ファン耐性あるのかな?なんて思いました。ところで内田監督といえば『サイレント・ラブ』では山田涼介出演のラブストーリーかと思いきや…実はバイオレンス強めでしたなんてのが記憶に新しいですが、旧ジャニの女性ファンを二作品続けてショック与えるというなかなか攻めた事してやしませんかね(笑)

ところでこの作品を見て気になった事がありまして。確かに前半ではマッチングアプリを題材にした事件を出していますが、中盤から後半にかけてはもはやマッチングアプリ関係なくね?という流れに変わっているんですが、まぁ面白かったからいっか…。

それから今作での土屋太鳳ちゃんは恐怖に怯えながら逃げ続けるはたまた間近で殺人を目撃した際に絶叫するという場面が多いですが、時折お得意のアクションを見せたりあの人物に思いっきりカウンターを食らわせるシーンがあったりとしっかり彼女を活かしてるな〜なんてにんまり顔で見ておりました。

これまでお伝えした様に全体を通して陰惨とした空気に包まれた鬱映画ではあります。しかし、ラストはこの先の一縷の光をしっかりと見せていたのは良かったと思います。

見る人を選ぶ映画だとは思いますが、刺激のあるサスペンスを求める人にはオススメ出来ます。

是非劇場でご覧下さい!